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しおりを挟む焦がれ逸る気持ちで春の服をすぽんと抜き取り、乱れた髪の毛のまま顔を真っ赤にしている春を見ては、満足げに小さく笑う雅。
そんな雅に春はなぜか唇を噛み締めていて。
だがその顔はただただ愛らしいだけであり、ちゅっちゅっと触れるだけのキスを顔中に落とした雅はしかし、容赦なくスウェットにも手をかけた。
そうすれば春はやはり辱しめに耐えるよう顔を手で覆ったが、それでもやはり拒否することなく、脱がしやすいよう腰を軽く上げてくれるだけ。
そんな春の顔を覆う手にまたしてもキスをした雅はスウェットとパンツ両方を引き下げるよう、ぐっと指に力を入れた。
そのまま抵抗なく、ずるり。と下がったそこから見えた春の下の毛は、元々体毛が薄いのか柔らかそうで。
そして何の窮屈さも無くなった陰茎が解放されたとばかりに反り立ったまま、ふるりと震えたのが見えた。
春の初めて見た陰茎はちゃんと男性らしく立派ではあるものの、どこか可愛く。
ツルツルとした亀頭は濃いピンク色で、血管が浮き出た竿は桜色で美しく、そしてその下にさがる陰嚢ももちもちと柔らかそうにふっくらとしている。
そんな春の股間をまじまじと見た雅は興奮に心臓を高鳴らせながら、……本当にどこまでも彫刻のように美しいのか。だなんて春の裸体の美しさに感銘すら受けつつ、そのままスウェットとパンツを綺麗に脱がせてはポイッと乱暴に下に放り投げた。
春のキュッと引き締まった細い足首から伸びる、筋肉の付いた逞しいふくらはぎ。
骨が出っ張った膝小僧は可愛らしいのに大腿四頭筋は発達し強靭で厚く、春がダンサーだという事をありありと証明している。
しかしやはり筋肉以外は付いていない体は細くしなやかで、雅は自分の下で恥ずかしそうに顔を逸らしては唇を噛み締めている春の頬に、ちゅっとキスをした。
「春……めちゃくちゃ綺麗……」
だなんてボソッと呟いた声は自分でも分かるほど欲に濡れていて、それに春がピクンッと身を震わせたのが分かる。
けれども世界中の人間が声を揃えて言うだろうと思うほど、お世辞でも何でもなく春の体は完璧に美しく。
それなのになぜこんなにも恥ずかしがっているのだろうか。ダンサーだし見られるのには慣れてると思ったのに。なんて雅は不思議そうに首を傾げながらも春のうなじに口付けようとしたが、しかしバッと伸びてきた春の手によって、それは阻止されてしまった。
「ま、まってください!」
「……なに」
「いやいやいや、なんで俺だけ全裸なんですか! 雅さんも脱いでくださいよ!」
「……あぁ、まぁ確かにそうか」
顔を真っ赤にしながらも、不公平でしょう! だなんて怒る春。
その言葉に、こんなにも美しい体を持つ春の前で自身の変哲もない体を晒すのは少しだけ恥ずかしいと思いつつも、雅が同意しては着ていたスウェットの裾を武骨な長い指で捲り、脱ごうとする。
だがそれに春はやはりぎょっと目を見開いては、またしても待って待ってと焦り始めていて。
そんな春に雅は今度こそ眉間に皺を寄せ、着たままも駄目で脱ぐのも駄目なら俺はどうすれば良いんだ。と困り顔のまま春を見た。
「……」
「はる?」
「……雅さんだけ、な、慣れててずるい……」
「は?」
「……そ、そりゃあ雅さんは女の子といっぱいそういう事したことあるってのは分かってましたけど、でも、そ、その、実は俺、ど、童貞、で……」
だからもう羞恥でいっぱいいっぱいなのだと腕で顔を隠し、春がぽつりと呟く。
しかしその衝撃的な事実に、雅はぎょっと目を見開き、ぽかんと口を開けただけだった。
「……え、嘘だろ……」
「っ、こ、この年で童貞だなんて恥ずかしいのは分かってますけど、でも俺、中高男子校で、それに、大学に入っても授業とかダンスとかバイトとかで忙しくて、彼女とか、居なくて……、だからその、女性経験もないのに、こんな、こんな……」
だなんて言っては、春が唇を噛み締めている。
そもそもそういう経験すらないのに、きっと自分が後々抱かれる側になるのだろうと分かっている春の、小さな葛藤。
それが愛らしく、その腕の隙間から見える頬も耳の先も真っ赤に染まっていて、ていうか童貞だなんて言わなくて良いのなら言いたくなかったのに。と唇を噛み締めている春に、しかし雅はもう宇宙さえ見えてしまいそうなほどだった。
……うそ、だろ。春が童貞……。こんな綺麗で可愛くて完璧な男が、今まで誰とも付き合った事もなければ、誰にも触れられた事がなかった……?? え、でも春もけっこうグイグイきてたと思うし、キスだって積極的だったのに……、え、じゃあそれ全部経験とかじゃなく、素で小悪魔みたいだって事……??
だなんて思考が宇宙の彼方へ投げ飛ばされそうになった雅がしかしハッとしては、羞恥で真っ赤になっている春を安心させるよう、春の髪の毛を撫でた。
「はる、」
「っ、だ、ダサいって、思いました……?」
「そんな事一ミリも思ってない。むしろ嬉しい」
「……」
「春の初めての恋人になれて、死ぬほど嬉しい」
「……」
「春、可愛い、好きだ。愛してる」
顔を隠す春の腕に、ちゅ、ちゅ。と口付けながら、今まで誰にだって言った事のない、愛してる。という言葉を囁いた雅。
その雅の言葉に春もぴくりと反応し、しかしそれでも未だ悔しそうにするだけだった。
「……うぅ、俺も、好き、です。でもやっぱり余裕そうぅ……。くやしい……くやしいぃ……雅さんのばかぁ」
だなんてぼやいては、自分だけがこんなにも焦っている。と春が不満げに唇を突き出す。
その、雅さんは余裕なのが嫌だ。と言わんばかりの仕草がヒヨコのように可愛らしく、彫刻めいた美しい裸体とは似つかわしくないその幼子のような春の仕草に雅は、……愛しさで死ぬ。と眩暈すら起こしてしまいそうだった。
「……はる」
「……」
「……さっき、俺余裕ないって言ったの、忘れた?」
「っ、」
「……俺だって男とは初めてだし、春が相手だから、最初の時より死ぬほど緊張してる。触ったら分かるよ」
だなんて柔らかな口調で言いながらも、雅が春の手を取る。
そうすれば泣きそうな顔をしている春が、あっ。と声をあげたが、しかし雅が自身の心臓へと手を持っていっては触らせてきたのに、ヒュッと息を飲んだのが分かった。
スウェット越しに、それでもはっきりと速く鼓動している心臓を掌で感じた、春。
それに目を見開いている春に向かって可愛らしく歯を見せて笑った雅は、反対の手で春の頬をするりと一度撫でたあと、それから服を脱ぐのを再開した。
「っ、」
「それに、俺もこれから先は春としかこういう事、しないから」
だなんて宣言しながら、雅が腕をクロスさせ上着を脱ごうとする。
その言葉に春はまたしても息を飲み、しかし途端に嬉しげな表情をしていて。
そんな分かりやすい春に雅も笑い、雅の真っ白な肌が露になっていくのを今度は何も言わず、春はじっと見ていた。
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