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七月初旬
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梅雨も過ぎ去り、本格な夏になり始める7月。
俺は町内放送でとんでもない事を聞いた。
『紅蛇神社周辺に野生の猿が出現しました。見かけた人は決して近づかないように――』
猿!?野生の猿!?嘘だろ!ここでるのか!猿!そして村内放送で放送されるのか!!
慣れたはずの田舎だったが、久しぶりにカルチャーショックを受けた。野生動物が出たら村内放送で放送されるらしい。
といっても今いる場所から神社は結構離れている。俺には関係ない事だろうと思い、たいして気にもせず俺は仕事を続けた。
1日の仕事を終え、俺は自宅に帰った。
俺の家は村の片隅にある、平屋の一軒家だ。この村にマンションやアパートなど存在しない。だから空き家になっていたこの家を借りたのだ。都会にいた時より安い賃料でこの広さ。俺はこの家を結構気に入っていた。
鍵を差し込み、ガラガラと扉を開ける。
「ただいまーっと」
すると目の前には――猿がいた。
猿だ。どうみても猿だ。玄関のど真ん中に猿がいる。俺の靴を噛みしめながらキィィィィとこちらを威嚇していた。俺は静かに扉を閉め、
「まっまま、正人ーっ!!助けてーっ!!」
急いで正人に電話した。
数分後、正人はパトカーで来てくれた。迅速に行動してくれる警察官の頼もしさたるや。だから正人は駐在さんとして頼られているんだなと今更ながら実感した。
「遥、一体どうしたんだ」
「猿が!猿が俺の家にっ!!」
「分かった、下がっていろ。すまないが、土足で入らせてもらうぞ」
「ああ!構わない!」
警棒を持ち、俺の家に入っていった。俺はドキドキしながらその様子を見守る。数分後、正人は玄関から出てきた。
「どこにも猿はいなかったぞ。どうやら、もう出ていったようだ」
「そうか……良かった……」
俺は正人の報告を受けホッとする。これで我が家の危機は去ったのだ。猿の根城になったらどうしようと内心凄く焦っていた。
「テレビがある居間の窓、鍵が開いてたぞ。鍵閉め忘れたんじゃないのか?」
「あーそこ、ね。鍵閉めるのめんどくさくて……今日は別にいいかなーって思って、閉めてなかった」
「泥棒が入ったらどうするんだ!?こんな田舎でも戸締まりはしっかりしろ!」
正人に怒られる。ぐうの音も出ないほどの正論だ。でもこんな田舎じゃ泥棒でさえ出ないと思ったんだ。まさか猿が出るとは思わなかったけれど。俺はしゅんとして正人に謝る。
「ごめん。今度から気をつけるよ」
「……ここにはもう帰らない方がいいだろう。家の中めちゃくちゃに荒さられていて衛生的に危ないし、また猿がやってくるかもしれない」
「えっ!?ここやっと借りれた一軒家だぞ!?他に借りれる場所なんてこの村ないし…!どうしよう!?」
まさか自分の軽はずみな行動がこんなことになってしまうなんて。ホームレスなんて絶対嫌だ。それだけはなんとしても避けたかった。
「…俺の家くるか?駐在所だけれど」
正人は真剣な面持ちで俺に聞いてくる。俺の悲惨な状況に見かねて提案してくれたのだろう。その提案は非常に嬉しかった。俺には渡りに船だけど…警察のルールとか、決まりとかあるのではないのだろうか?
「でも大丈夫なのか?警察的には……」
「野生動物に部屋を荒らされ家なしになった若者を保護したとでも言っておけば大丈夫だろう」
「確かにそうだけど!!言い方!!」
もうちょっと慮ってくれないかな!
あんまりストレートに言われてしまうとちょっと傷つく。
「元々一軒家を改造した駐在所だ。部屋はいくらだってあるし、またこの間みたいに俺が出れない時には対応してくれるとすごく助かる」
「…分かった。じゃあ、お世話になるよ」
俺は住んでいた一軒家を引き上げ正人の元へ居候することにした。
俺は町内放送でとんでもない事を聞いた。
『紅蛇神社周辺に野生の猿が出現しました。見かけた人は決して近づかないように――』
猿!?野生の猿!?嘘だろ!ここでるのか!猿!そして村内放送で放送されるのか!!
慣れたはずの田舎だったが、久しぶりにカルチャーショックを受けた。野生動物が出たら村内放送で放送されるらしい。
といっても今いる場所から神社は結構離れている。俺には関係ない事だろうと思い、たいして気にもせず俺は仕事を続けた。
1日の仕事を終え、俺は自宅に帰った。
俺の家は村の片隅にある、平屋の一軒家だ。この村にマンションやアパートなど存在しない。だから空き家になっていたこの家を借りたのだ。都会にいた時より安い賃料でこの広さ。俺はこの家を結構気に入っていた。
鍵を差し込み、ガラガラと扉を開ける。
「ただいまーっと」
すると目の前には――猿がいた。
猿だ。どうみても猿だ。玄関のど真ん中に猿がいる。俺の靴を噛みしめながらキィィィィとこちらを威嚇していた。俺は静かに扉を閉め、
「まっまま、正人ーっ!!助けてーっ!!」
急いで正人に電話した。
数分後、正人はパトカーで来てくれた。迅速に行動してくれる警察官の頼もしさたるや。だから正人は駐在さんとして頼られているんだなと今更ながら実感した。
「遥、一体どうしたんだ」
「猿が!猿が俺の家にっ!!」
「分かった、下がっていろ。すまないが、土足で入らせてもらうぞ」
「ああ!構わない!」
警棒を持ち、俺の家に入っていった。俺はドキドキしながらその様子を見守る。数分後、正人は玄関から出てきた。
「どこにも猿はいなかったぞ。どうやら、もう出ていったようだ」
「そうか……良かった……」
俺は正人の報告を受けホッとする。これで我が家の危機は去ったのだ。猿の根城になったらどうしようと内心凄く焦っていた。
「テレビがある居間の窓、鍵が開いてたぞ。鍵閉め忘れたんじゃないのか?」
「あーそこ、ね。鍵閉めるのめんどくさくて……今日は別にいいかなーって思って、閉めてなかった」
「泥棒が入ったらどうするんだ!?こんな田舎でも戸締まりはしっかりしろ!」
正人に怒られる。ぐうの音も出ないほどの正論だ。でもこんな田舎じゃ泥棒でさえ出ないと思ったんだ。まさか猿が出るとは思わなかったけれど。俺はしゅんとして正人に謝る。
「ごめん。今度から気をつけるよ」
「……ここにはもう帰らない方がいいだろう。家の中めちゃくちゃに荒さられていて衛生的に危ないし、また猿がやってくるかもしれない」
「えっ!?ここやっと借りれた一軒家だぞ!?他に借りれる場所なんてこの村ないし…!どうしよう!?」
まさか自分の軽はずみな行動がこんなことになってしまうなんて。ホームレスなんて絶対嫌だ。それだけはなんとしても避けたかった。
「…俺の家くるか?駐在所だけれど」
正人は真剣な面持ちで俺に聞いてくる。俺の悲惨な状況に見かねて提案してくれたのだろう。その提案は非常に嬉しかった。俺には渡りに船だけど…警察のルールとか、決まりとかあるのではないのだろうか?
「でも大丈夫なのか?警察的には……」
「野生動物に部屋を荒らされ家なしになった若者を保護したとでも言っておけば大丈夫だろう」
「確かにそうだけど!!言い方!!」
もうちょっと慮ってくれないかな!
あんまりストレートに言われてしまうとちょっと傷つく。
「元々一軒家を改造した駐在所だ。部屋はいくらだってあるし、またこの間みたいに俺が出れない時には対応してくれるとすごく助かる」
「…分かった。じゃあ、お世話になるよ」
俺は住んでいた一軒家を引き上げ正人の元へ居候することにした。
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