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あの最悪の日から二日後。
俺はいつ襲われるかとビクビクしながら日々を過ごしていた。元勇者なのに本当情けないと思う。いや、でも俺今は普通の高校生だし。戦う術なんてないし。
カルマに襲われたあの日。
ちんこを弄り倒され、ケツの穴に指突っ込まれて、思考も体もぐちょぐちょどろどろになって、気付いたら自分の家にいた。自分で帰った記憶がないから、気を失ってしまった俺をカルマが送ったんだろう。そう考えると無性に腹が立った。
ここで疑問に思うのは、最後までカルマとヤってしまったのかということだ。
多分、否。俺達はきっと最後までしていない。
理由は体の不調があまりなかったからだ。
カルマのBL本のおかげで、男同士でどうやってヤるか、突っ込まれる側にどんな負担があるのか、変に知識が身に付いてしまった。最悪な事に俺は突っ込まれる側らしいが、事後の不調や体の軋みっていうのがあまりなかった。そして闇属性のカルマは回復魔法を使えない。だからきっと最後まではしていないだろうという結論に至った。
しかしこのまま何もせず喰われるのを待つだけっていうのは、絶対に嫌だ。
魔法もない、力もない今の俺で何が出来るか……。
最近俺はその事ばかりを考えている。
「ただーいまー」
ガチャッと玄関を開ける。
俺の家はごくフツーの二階建て一軒家だ。ぐちゃぐちゃと散乱している靴はいつもの事。だが、端に綺麗に並べてある一足の靴に違和感を覚えた。こんな上等な靴、我が家に買う余裕などない。
「誰か来てんのか……?」
ダイニングから賑やかな声が聞こえてくる。
家に入れるぐらいだから保険の人とかかな。挨拶とかめんどくさいし、二階に行こう。
そう思い足を踏み出した、その時。
「本当に息子がお世話になりました!」
「いえいえ、お気になさらず」
とてもとても嫌な声が聞こえた。
「カルマ!?」
バッとダイニングに続く扉を開ける。
そこには、憎きカルマと母ちゃんが座って談笑していた。慌てて駆け寄り腕を引っ張る。
「テメェなんで家にいんだよ!!」
早く家から追い出さないと。この家がめちゃくちゃにされる前に!
しかし、それを止めたのは予想外の人物だった。
「先生に何て口の聞き方してんだバカ息子!」
ドガッと能天に鈍い痛みが走る。
母ちゃん渾身の拳骨が炸裂していた。
「いってぇぇぇぇ!」
あまりの痛さにゴロゴロとフローリングの上をのたうち回る。
こンのババア! カルマとはいえ一応人の目があるだろ! 少しは手加減しろや!!
「あんたというバカ息子は! 本当にすみませんねぇ、先生! ホラ、光樹! 謝りなさい!」
「はあ!? 何でだよ!!」
「この間送ってもらったでしょう! あんたったらグースカ寝てて本当に恥ずかしかったんだからね!」
「ちっげぇし! あれは――」
反論しようとしたら、母ちゃんの鋭い視線を受け口をつむぐ。
我が家の権力者は母ちゃんなのだ。次点は姉ちゃん。
我が家の男子に権力はない。
「……すみませんでしたー」
「突然先生のお宅に押し掛けただけでなく、眠りこけるなんてもう、本当申し訳なく! こいつにはよーく言って聞かせますので!」
「いえいえ、本当に大丈夫ですから」
「ホラ別にいいらしいぜ」
母ちゃんが俺の姿を見て更に視線を鋭くするが、これは冤罪なのだ。確かに押し掛けたが、眠りこけたのは俺のせいじゃないし。つーかカルマが原因だし。心込めて謝る気は全くない。
「……息子には改めて指導しておきます。先生、今日は本当にありがとうございました! 忙しいのにお時間作っていただいて……!」
「いえいえ、原稿も一段落していたので大丈夫ですよ。私も光樹くんのお義母様にご挨拶したいと考えておりましたので、こうしてお招きいただけて光栄です」
なんでカルマがここにいるのかと思ったら母ちゃんが呼んでいたのか。余計な事を……!
つーか先生先生って。カルマがBL小説書いてんの、母ちゃん知ってたんだ? え、じゃあ母ちゃんもBL小説読んでんの?
「その、あの、私っ夜月真人先生の大ファンでして! 大変おこがましいのですが……サインいただけますか?」
「よろこんで」
「は?」
その言葉に唖然となる。
母ちゃんがサインをと取り出した本のタイトルは『鈍色の空』。何とか賞だかなんだかを沢山取った、ミステリー小説だ。
ああ、これ知ってる知ってる。だってこの間までドラマやってたもん。犯人がまさかの人で――って、え?
「は……? お前何してる人なの……?」
「小説家だが? 夜月真人は私のペンネームだよ」
驚きすぎて思考停止してしまった。
世界を滅ぼそうとした、魔王が、社会に溶け込み、小説家……?
あまりにも笑えねぇ話だと、顔がひきつってしまった。
せめて見送りに行けと、母ちゃんから放り出され玄関前に佇む。
「もううちに来んなよ。つーか俺、住所教えてねぇよな? 何で俺ん家知ってんだよ……」
「貴様が産まれた時から知っていると言っただろう。忌々しいアミターバの加護のせいで干渉することは出来なかったがな」
今までは光の神の加護のおかげで手も足も出せなかったのか。つまりあの時探しに行かなきゃ俺はこいつと無縁の生活を送れていたということで。迂闊な行動を取ってしまった自分に腹が立つ。
あの本さえ、あのBL本さえなければこんなことには……!
そうだ、忘れていた。俺はこいつをとっちめなきゃならない。
「つかテメェ、何ネカマしてんだよ! BL小説家のSNS、完全に女性だったろが! 騙しやがって!」
「男設定だと、私が作者かもしれないと気付く可能性があっただろう? 薄情者はギリギリまで気づかなかったがな」
いや前世の宿敵が今世で小説家になってるだなんて誰も思わねぇよ! つーかこいつ本当、なんで小説家なんかやってんだ!?
俺の表情で言わん事が分かったらしい。カルマは淡々と言葉を続ける。
「BL小説は完全に趣味と釣り要因だが……ミステリー小説は暇潰して書いたものが当たってな。金も入るし意外と悪くないから続けているだけだ」
「……随分この世界に溶け込んでいるようだな?」
「まあ、この世界はあの世界より過ごしやすいし、別に滅ぼす理由もない。しかし」
スッとカルマの腕が伸びてくる。そのまま頬に手を添えられた。
「貴様が私のモノにならないのであれば、考えるが?」
「っ……脅しかよ」
「貴様は初日で気絶してしまったからな。私も意識がない状態で犯す趣味はない。しかし流石にもういいだろう。私は我慢の限界なんだ」
流石にとか言ってるけどまだ二日しか経ってないからな! あと健全な男子高校生にそんなこと言うんじゃねぇ!
「明日、放課後迎えに行く。覚悟しておけ」
触れるだけのキスをして、カルマは去っていった。
その場にずるずると座り込む。
「~~~~逃げてぇ……」
情けない俺からは弱音しか出なかった。
*
「殺したいほど憎い相手とヤらなきゃならん時ってどうしたらいいと思う? できたら隙をついて殺したいんだけど」
「え、光樹……暗殺者とかにでもなんの?」
嫌だと思っていても時は無情にも進むもので。気づけば次の日の昼休みになっていた。
時は刻々と迫ってきている。それに伴い俺の機嫌も急降下していった。勇介にこんな訳わからん質問をしてしまうのも仕方ないだろう。
「暗殺出来たらいいんだけどなあ……。めちゃくちゃ強いんだよソイツ」
「ふーん?」
前世の俺でも勝てなかった相手だ。そのうえ今世の俺は魔力がない。どんな結果になるのかは火を見るより明らかだった。
モソモソとメンチカツパンを食べながら、勇介は口を開く。
「じゃあ、アレだ。腹上死」
「なんだそれ?」
耳慣れない言葉に首を傾げる。死ってついているぐらいだから死に方の一種……か?
「なんかセックスの最中とかその後に死ぬことらしいぞ?」
「なんだそれ!?」
詳しく聞き出そうとするが、そうやって死ねるなら本望だよな~と気の抜けた事を言う勇介からはこれ以上の情報は聞き出せそうになかった。
ここで活躍するものは、インターネット。本当、恵まれた時代に生まれてきて良かった!
ネット先生で素早く検索をする。調べてみると本当に腹上死という死に方があった。セックスによる興奮? とかでなんか死に至るらしい。
次元を越えるほどの力を持つカルマが、こんな人間じみた死に方をするのかと少し疑問にも思ったが……物理的に攻撃するより断然可能性はある。
一筋の光明が見えた気がした。
そしてとうとう来てしまった放課後。
さっきからため息しか出ない。
「なに落ち込んでいるのか分からんけどさあ……元気出せって!何とかなるって!」
「何とかなるんだったら今すぐ逃げ出してぇよ……」
しかし、そんなことをしたら地球がぶっ飛ぶかもしれない。カルマは実際にアヴァニをぶっ飛ばしかけた魔王だ。昨日あんな事言われた以上、逃げ出すことはできなかった。
まだ少しだけ、勇者としての尊厳は残っているもんでな。
軽口を叩く勇介を小突いてやろうと見上げる。
すると、勇介は尋常じゃない顔つきをして固まっていた。困惑と、怒り、そして絶望の表情。
釘付けになっている目線の先には――カルマと清田さんの姿があった。
「!?」
カルマが清田さんに手を伸ばす。
それを見た瞬間、俺達は駆け出していた。
「真理亜!」
「アーリア!」
なんでカルマとアーリアが! いや違う、今は転生した姿の清田さんだけど! でも、なんで二人が一緒に!?
俺か? 俺のせいなのか? 俺のせいでまた……!
前世の記憶がフラッシュバックする。
最終決戦のあの時。回復役のアーリアは真っ先に狙われた。そしてヴィーラの目の前で……。
指先の温度がなくなる。
早く、早く二人を引き離ささないと!!
奴の指が清田さんの髪の毛に触れようとしたその時。
――カルマの腕を掴み、清田さんとの間に体を滑り込ませた。その隙に勇介が清田さんをしっかりと抱き込む。
ここまで距離を離せば、清田さんに何かすることなどできないだろう。
俺はカルマを睨み付け、カルマは目を細めて俺を見据えた。
「熱烈な歓迎だな。そんなに嫉妬したのか?」
「……ああ、腸が煮えくり返るほどな」
ブワッと沸き上がるカルマの威圧感に、思わず怯みそうになる。けれど、ここで目を反らしたら敗けだ。
絶対怯まないようにしないと……!
お互いに睨み会う。
一触即発。次動いたら終わり。
そんな緊張感が俺達を包む中、呑気な声が響いた。
「あっ佐々木くん! 夜月先生と知り合いらしいね! もう、早く教えてくれれば良かったのに!」
危機感の欠片もないその言葉に気が抜ける。
アーリアは昔からそうだった。あまり場の空気が読めないのだ。
「ま、真理亜?」
「清田さん?」
振り向きどういう事か問いただそうとしたら、後ろからカルマにギュッと抱き締められる。そして耳元で囁かれた。
「私は彼女と話をしていただけだ。彼女が私のファンらしくてね。嫉妬は嬉しいがそう拗ねるな。私は決して手を出してはいないよ」
「……は?」
その言葉を証明するかのように、清田さんは興奮した様子で勇介に自慢している。
「勇介勇介! 夜月先生にサインもらっちゃった! いいでしょう?」
「ああ……そう、だね……?」
勇介も予想とは違う清田さんの様子に戸惑っているようだったが、嬉々として話しかけるその姿に恐怖も警戒も全くない。
カルマとは本当にただ話をしていただけのようだった。
「……良かった」
何もなかったみたいで。
一気に肩の力が抜けた。
「つーか、光樹……真理亜の事、呼び捨てにしてなかったか?」
「えっ!? いっ、いやそんな事言ってないけど!?」
ほっと息をついていると、予想外な事を指摘されて慌てる。
しまった! とっさに前世の呼び方をしていたのか!
アーリアと真理亜って語感めっちゃ似てるんだよな。
「あっ! とは言ったけど名前は呼んでねぇよ」
「えー? あれは絶対……」
勇介はまだ納得していないようだったけれど、これ以上詮索されたらたまらないので無理矢理話題を変える。
「勇介さあ、何でお前走り出したんだよ」
さっきから俺はそれが不思議で仕方なかった。
勇介は前世の記憶覚えていないはずなのに、カルマから清田さんを護った。
どうしても前世の記憶を思い出したのではないかと気になってしまう。
「いや、なんか……すごく嫌な感じがして……。なんでだろう? 初対面なんだけどなあ……」
「……そうか」
覚えていなくても、 本能で感じ取っているんだろうな。
そういえば、前世のヴィーラも野性的な勘で攻撃を避けていた節があった。勇介もそういう勘が鋭い方なんだろう。
俺としては、前世を思い出してなくてちょっと残念と思ってしまったけれど。
……いや、あんな記憶思い出さない方がいいか。あまりにも残酷だから……。
仲良く会話している今の二人を見て、胸が暖かくなる。
「……とにかく安心したよ」
この世界とアヴァニは全く違う世界だ。司法だってしっかりしてる。カルマだっていきなり人を殺すような猟奇的なことはしないだろう。
――そんな甘いことを考えていた俺は馬鹿だった。
頃合いを見計らったように、カルマが耳元で囁く。
「こいつらは貴様の元仲間達だな? 確か聖女と騎士」
「……それがどうした」
「何もしないのならどうもしないさ」
一見脈絡のない返答。でも俺にはしっかりと通じた。
――これは脅しだ。
逃げ出す、反抗する……そんな疑わしい行動をとれば、手を出すかもしれないと。
こンの外道があ……!!
ギリギリと握っていた拳に爪が食い込む。
俺達が一番嫌な行動をこいつはする。それはアヴァニでよく実感していたはずなのに。
沢山の仲間が死んだ。こいつの策略によって。
ヴィーラとアーリアだって……最悪の死に方をした。あの戦いに参加しなかったら二人とも幸せになったはずなのに。
ずっと後悔していたんだ。俺がもっと強ければ、皆を護ることができたんじゃないかって。死なずに済んだんじゃないかって。
光樹は前世の記憶を持っているだけの一般人だ。何の力も加護もない……。
でも、行動しない理由にはならない!
今度こそ二人は絶対に護るんだ!
「……テメェの望み通りにしてやる。だから二人には手を出すな」
「ふふ、仲間思いだな。ならばそろそろ行こうじゃないか」
引っ付いていた体が離れ、カルマと手を繋ぐ。
それはどこに言っても逃げられない鎖のように思えた。
「じゃ、俺帰るわ。またな」
「ああ、光樹また明日」
「また明日、佐々木くん」
(……明日会えるといいな)
二人に別れを告げ、俺はカルマの車に乗り込んだ。
*
静かに車は止まり、エンジンが切られる。
「こっちだ」
カルマに言われた通り着いていく。どうやらここはマンションの駐車場のようだった。少し歩くと、この間来た時と同じ型のエレベーターが見えてくる。それに乗り込み、目的地に着くのを待った。
階数が上がっていくにつれて、ドキドキと心臓が鳴り始めた。それがバレないようになるべくカルマと距離を取る。
緊張したら駄目だ。余裕のある表情をしないと。
なんたって俺は――コイツを襲うんだから。
ポーンと軽やかな音を立ててエレベーターは止まる。さすが最上階。部屋が四部屋ほどしかない。
その一角のドアまで進み、カルマは鍵を開けた。
「入れ」
「……お邪魔、します」
家に入るように促される。
足早に靴を脱いで、カルマが入ってくるのを待った。
鍵を閉め、カルマが靴を脱いで家に入った瞬間。
(今だ!)
「!?」
カルマのシャツを掴み唇を奪ってやった。驚愕の表情を浮かべているカルマにほくそ笑む。
チュ……とリップ音をわざと立てて唇を離した。首に腕を回し、唇を舌でペロッと舐め、妖艶に告げる。
「俺のことが欲しいんだろ……? いいぜ、やるよ」
よく分からんが、コイツは俺に執着しているらしい。それを利用しない手はない。
だからこの体を持って、コイツの精気を搾り取ってやることにしたのだ。
これが力の無い俺に出来る精一杯の攻撃。
本当に狙ってやる……腹上死を!
「ッキラナ……!」
感極まったカルマは俺の頭をガシッと掴み腰に腕を回して舌を……。
あっ、ちょ、待って! 知らん知らんこんなキス……!
「あっ、ふぁ、んんっ」
「はぁっ、キラナ……」
知らない生物が口の中で暴れているようだ。しかもその生物が舌を歯列をなぞる度にゾワゾワと快感が走る。
舐めていた。大人のキスを。
早くも主導権握られつつあるが、ここで怯んではいけない。今まで沢山の人と交わりましたよ、的なこなれ感を出さなければ! ビッチになれ! 俺! でなければコイツの精を極限まで搾り取れない!
「なあ……。移動しようぜ。熱くて熱くて仕方がないんだ……」
「貴様は誘い方が本当に上手いな……。前世が勇者なんて嘘だろう? 娼館で働いていたんじゃないか?」
最低な皮肉どうもありがとう、クソッタレめ。
手を捕まれ向かった先はモノトーンな部屋。その中央にはキングサイズのベッドがある。どうやら寝室らしい。
そこへ俺達は倒れ込む。抵抗する間もなく、ベッドに縫い付けられた。服は乱れ、息は上がり、見上げるとカルマの欲情した顔。
――ああ、やべぇ。俺、本当に魔王とセックスするのか。
それを自覚すると、急に体が震え始めた。
ちっ、情けねぇ。何ビビってんだ、俺! 元勇者だろ!
最悪なことに、カルマにも俺の震えが伝わったらしい。珍しく、その目が陰った。
「ふ、怖いか……? 私が……」
何かに怯えるような、遠慮するような。
こちらを伺うような表情を浮かべたカルマに何故だか無性に腹が立った。
「ちげーよ。武者震いって奴だ。あの憎き魔王を手込めにできると思ったらな」
ぐいっと胸倉を掴み、引き寄せる。
テメェはそんなヤワじゃなかっただろ。どこまでも無慈悲に俺達の命を刈り取った魔王。
そんな奴の情けない表情なんざ反吐が出る。
「俺が欲しいんだろ? ヤるならさっさとヤれよ」
「――ああ、それでこそ勇者だ」
正面から睨み付けてやると、カルマの表情は戻っていった。
奪い、苦しめ、それをひたすら楽しむ愉悦の表情。
そうだ、それでこそ倒しがいがあるってもんだ。
さあ、戦いを始めようか。
「ふっ……くぅ……ん!」
「どうした? もっと声を出してもいいんだぞ?」
しつっこいんだよ! 大体乳首なんか舐めても何も出ないつの!
互いに洋服を脱ぎ捨て、さっきからずっと乳首を弄り倒されている。ぴちゃぴちゃと鳴る卑猥な音でさえ興奮する材料になっていた。
カルマのBL小説の俺はすぐに乳首堕ちしていたが、現実の俺はどうかというと予想通りに乳首は弱かったわけで。
長時間弄くり回された乳首は立派に赤く熟してしまった。
何だかカルマの思い通りになったようで腹が立ち、せめてもの抵抗で声は抑えていたのである。
あ、いや……腹上死させるにはよがってる姿を見せた方がいいのか? いやでもなんか言いなりになったみたいで腹立つじゃん。
本来の目的とプライドがせめぎあっていた。
「全く……強情な奴だな。……それではこれはどうだ?」
カルマがぐっと力を入れ、両乳首を押し潰す。その瞬間、電気が走ったようにビリビリと甘い疼きが体を満たした。
「!?」
「……気持ち良いか? ……やはりな」
ニヤリと笑みを浮かべ、刷り込むように乳首を引っ張りコリコリと擦られる。乳首が押し潰される度に電気が走った。
「やっ、やめ……それ、あっぁん!」
なんだこれは!?
さっきまでと全然違う。乳首を引っ張られる度、快感がじわじわと溢れていくようだった。
「ふふ、もっと声を出せ。もっと乱れろ」
「やっやだ、それっ……ふ、あぁ!」
「キラナ……とても良いぞ。ああ、こっちも触ってやろうか」
思い付いたように、俺のちんこを一撫でされる。
それだけなのに。
「あッ、ああああぁ……!」
俺は勢いよく達してしまった。ビュクビュクと飛び出した精液はカルマの体と俺の腹を汚す。
嘘だろ……!? 俺こんな早漏じゃないのに……!
「何が何だかわからないようだな」
呆然としていると、カルマが囁くように話始めた。
「魔法には属性相性があるだろう。火と水、風と土。――光と闇」
「それがっ……どうした……」
アヴァニでは常識として広まっている理論だ。
それぞれ相反する属性の攻撃が弱点となる。
だから光の神の信託を受けた光属性の俺が、魔王討伐の勇者に選ばれたのだ。闇にとって光が弱点となるから。
「……それはセックスでも同じだと、知らなかったか?」
「は!?」
なんだそれ知らねぇよ!
前世では魔王討伐に必死だったから、そんな如何わしい店に行く余裕などなかった。それに魔王討伐したら王女様と結婚する決まりだったし、遊べなかったとも言うが。いつも右手とオトモダチで、仲間とも猥談をしなかった。だから俺の性知識は前世を含めてあまりない。
そんな俺にとってこの話は寝耳に水すぎることだった。
「反対属性の相手とセックスをするとトぶように気持ちいいらしいぞ?」
「えっ」
「こうやって少し触るだけで――」
魔力を纏った手でチュコチュコと上下に擦られる。本当にただ擦っているだけだ。快感を生み出そうとしている手つきではないのに、どうしてこんな……!
「あっああ、ああぁあああ!!!」
「直ぐにイッてしまうんだよ」
再びカルマの手のひらに精液をぶちまける。
先ほどより勢いを失っているが、それでも大量の液を出してしまった。
はあっはあっと、息を荒くする。強制的に二回も射精されられた体は全力疾走した後のように動悸が止まらなかった。
属性相性、マジでヤバい。
そうか……。だから知り合いの夫婦は反対属性の人達が多かったのか……。
知りたくもなかった前世の深淵を覗いてしまったような気がした。
「さて、私もそろそろ気持ちよくしてもらおうか。トんでしまってはまた我慢することになるからな」
スルリと尻穴を撫でられる。
その感触に驚いて、無意識にぎゅっと力を込めてしまった。
「おや、後ろの穴がパクパクと主張しているな。早く食べたいと言っているようだ」
「ちがっ……」
「しかし、まずは準備からだ。どれだけ体の相性が良かろうと、男同士は傷つきやすいからな」
そういうと、つぷりと穴に指を突っ込まれた。
ああ、これは前回もやった奴だ。俺がトんでしまった行為。今思えばあの時も魔力を練り込まれていたのかもしれない。
「んっ、ふぅ、あ……あ」
魔力が粘液の役割してんのか何なのか。すぐにぐちゃぐちゃとねばついた音を立て始めた。しかもその魔力は超絶効果のある媚薬入り。
すぐに頭がぼうっとしてきた。こんな状態でトんでしまった原因の場所を触られたら――。
「物欲しそうな顔をするな。……ここが欲しいのだろう?」
「ひぅ!」
内側のある場所。そこをぐにぃっと押し潰されただけで、ビクンッと飛び跳ねてしまった。
いやだ、ここは。何も分からなくなるんだ。
目の前にある快楽を貪るだけの獣になってしまう。
「やだ、いやだ、あっ、ああぁあ!」
「全く、上の口は天の邪鬼だな。下の口はこんなに正直なのに」
「やぁああ、んあっ!」
気持ちいい。気持ちいい。
二回達したはずのちんこは再び復活して揺れる度びたびたとお腹に当たる。その感触がさらに興奮する要因になった。
「ほら、気持ちいいだろう?」
「はっあ、あぁっん!」
自分が気持ちよくなってどうするんだと、少しだけ残っていた冷静な自分の声が遠くに聞こえる。
そうだ、俺にはコイツを腹上死させるという目的があったんだ。
けれど執拗に前立腺を押されれば、その目的などすぐに霧散してしまった。
「……もっとよがれ。もっと堕ちろ……余計な事など考えないほどに」
「ふっああ、あん、ああぁ!」
ヴィーラ……アーリア……死んでいった仲間達。
その顔が浮かんでは快楽で白んでいく……。ごめんな。こんな不甲斐ない奴が勇者で……。
信念も、懺悔も吹き飛び、最後に残るのは本能と呼ぶべき獣じみた欲望。
「あっ、ああ……ふっあっ!」
「……だいぶ解れてきたな……」
早く、早く。
もっとついてほしい。もっと奥にもっと硬いモノを。
カルマの体にすがり付き、本来の目的なんて忘れて本当に懇願してしまった。
「はや……く、あっ、入れ……て……?」
「……貴様はっ本当に……!」
ずるっと指を抜かれた。
物欲しげに穴が収縮しているのがわかる。
はやくほしくてたまらない。
「……ああ、待ちに待った日が来た」
その反り立つモノを見てゴクリと唾を飲む。
「あの時から幾千年……」
ゆるゆると穴にちんこが当てられる。
これが俺の中に入るのかと思うとぞくぞくと震えが止まらない。
「やっと貴様を我がモノに出来るのだ……」
「あっ!」
ぐぐっと先端が入ってくる。まるで体が裂かれているようだ。なのに、よりいっそう胸は高鳴る。
「さあ、私のモノになれ……!」
「あっあああぁぁあ!」
勢いよく奥まで入った瞬間、俺は達してしまった。
パタタと少し薄くなった精液が腹に落ちる。
触っていないのになんで、と考える余裕などない。
ドクドクと脈打つその感覚が気持ち良すぎて、まるで天にでも登っているかのようだった。
「これはっ……溶けるようだ……」
「あ……ぁ……」
まるで一つの生命体にでもなってしまったかのような。
心地よすぎてそのまま目を瞑ってしまいたい――。
しかし極悪非道な魔王はそれを許してくれなかった。
「まだ終わらせんぞっ……!」
「ひぎぃっ!」
ずるぅっとちんこを引き抜いたと思ったら、すぐ打ち付けられる。
前立腺を擦りながら動くその動作に、まるでカエルが潰れたような声をだしてしまった。
「あっあああ、は、ぁぁあ!」
「……ああ、キラナッ最高だ……!」
魔力を纏った一物は凶器としか言えなくて。
ゴリゴリと俺から知性を奪っていく。
声が押さえられない。気持ちいいことしか考えられない。
「貴様だけだっ……貴様だけが私を受け入れられる。ああ、キラナ、キラナッ……!」
「あぁっあっ、か、るま……あぁっ!」
じゅぼじゅぼと厭らしい音が部屋に響く。
気付いたらカルマと恋人繋ぎをしていた。
端から見たら愛しい恋人同士の激しいセックス。
誰が宿敵同士だと思うだろうか。
「……出すぞっ!」
「あ、はぁあ、ん!」
打ち付ける音が更に速くなる。
終わりが近い。
「――私に染まれ」
「あ、ああっあああぁぁぁ!!」
引き抜いたかと思うと、勢いよく最奥まで突きつけられ。
体から作り替えられてしまうような……そんな熱い奔流を受けて俺の意識は飛んでしまった。
*
「ん……」
眩しい光を受けて目を覚ます。
いつの間にか朝になっていた。
身を起こそうとして、動けない事に気がつく。どうやら後ろからカルマに抱きしめられているようだった。
けれど違和感はそれだけじゃない。
――入っている。カルマのナニが。
「テメェ何しやがっ……あ、ん!」
「起きたか」
思いっきり怒鳴ってやろうと思ったのに、入っているモノをゆるゆると動かされれば、たちまち嬌声に変わってしまった。
「貴様のナカは気持ち良すぎてな。出ていきがたい」
「だからってぇ、朝っぱらから……ぁあ!」
俺はどうやらカルマのちんこに激弱い。
勇者として情けなさすぎる事実だが、昨日沢山出した筈のちんこが再び勃ち上がってきたのを感じて認めざるを得なかった。
「やめっ、ふっうぅ……!」
「貴様に昨日聞けなかった事があってな。正直に答えれは止めてやらん事もない」
「なっ、ぁ、何を……?」
その言葉に目を輝かせる。起きがけにこんなハードな運動は、いくら高校生といえども辛かった。
「貴様昨日何か企んでいただろう?」
ヒュッと息を飲む。
バレていたのか。俺が企んでいたこと。
「私の事心底嫌っていた貴様が、あんな風に誘うわけがないだろう。まあ、途中からは本気で私を求めていたようだったので不問にするが」
「……そ、それはっ……!」
だからって言えるわけがない。
いわば殺そうとしてましたっていうようなモンなのに。こんな真っ裸で、あらぬものを突っ込まれている状態で言うなんて自殺行為だ。
「言えない事なのか……? まさかアミターバと関係するのか……?」
「ちっ、ちがっああ……」
なぜそこで光の神が出てくる? そしてなんでそんなに苛立ってんだ!?
ちょっ……耳を舐めるな乳首を引っ張るな尻をパンパンするなあぁ!
「腹上死させようとっ……、思ったぁ……!」
「……は?」
耐えきれずバラしてしまった。
ああ、くそ、俺の渾身の作戦が。
もう取り繕えるはずもなく。ポツポツと話始めた。
「……俺、もう魔力ねぇし。到底カルマに敵うわけないし。どうやったら倒せるかと考えて――は? お前なんででかく……」
「貴様が悪い」
ぐるりと横抱きの状態から仰向けに転がされる。
やっと見れたカルマの瞳は欲情で濡れていた。
「いや、待て待て!! 俺正直に答えたじゃん!! 止めるつったじゃん!!」
「止めてやらん事もないと言っただけだが?」
そうして浮かべた笑みは魔王に相応しき悪どさで。
「この魔王があああ!」
結局その日はベッドから降りられなかった。
*
あの最悪の日から数日後。
俺はカルマを徹底的に避け続けていた。
校門で待ち伏せされれば裏門から逃げ。家で待ち伏せされれば勇介の家に逃げた。
カルマと関わる度に最悪が更新される。もう関わりたくない。それが本音だった。
けれどそう問屋は卸さないらしい。
カルマの行動を把握するためSNS(ネカマのやつ)を覗いていると、『宵闇のアヴァニの第二部を開始しました!』と投稿していた。
「第二部……?」
訝しみながら貼られていたURLに飛んでみると、そこには宵闇のアヴァニのWeb小説があった。宵闇のアヴァニはWeb小説発の話だったらしい。
その第二部と書かれたページを読み――。
「なんっじゃこりゃあああ!!」
授業中ながら盛大に声を上げてしまった。
授業中に大声出したことをこってり怒られた後の下校途中。あれだけ避けていたカルマの家に俺は歩を進めていた。
部屋番号は覚えていたからエントランスで部屋番号を押しインターホンを鳴らす。
『おや』
「さっさと入れろ!!」
『ふふ、熱烈だな。私は嬉しいよ』
扉が開いたのでそのまま中に入る。めり込むほどの強さで最上階のボタンを押し、その階に止まるのを待った。
ポーンと音がして扉が開いた瞬間、カルマの部屋へダッシュし玄関を勢いよく開けた。
「テメェ! カルマッ……」
「ああ、やっと会えたな。キラナ」
途端に目の前が真っ暗になる。
いや違うか。抱きつかれているのか。カルマの方が身長が高いから、抱きつかれるとすっぽりと収まってしまう。
「離せぇぇぇっ!!」
「こうして会いに来てくれたこと、嬉しく思うぞ」
俺が嫌がっているの、見えないのか?
一回ヤったら頭がお花畑になんのか?
それほどカルマは俺の話を聞いてくれなかった。
「この間は無理をさせたからな、今日は手加減をしよう」
「だーっ! だから違うっつの!」
キスしようとする顔を避け、スマホを突きつける。
「これ! なんだよ!!」
「小説だが?」
「そうだけど! 第二部の内容だよ!!」
『宵闇のアヴァニ』第二部――
舞台は現代。
寿命を全うしたキラナを追って、カルマはこの日本へと降り立った。しかし、生まれ変わったキラナは前世の記憶を覚えていたものの、愛し合った記憶はすっかりと忘れていた。前世の宿敵と認識されるカルマ。そのカルマを倒そうと躍起になったキラナがとった行動は、腹上死させるというもので――。
「ってなんだよこれぇ!! ふざけるなよ!!」
これはどうみても俺とカルマの出来事の話だった。そろそろ肖像権侵害を訴えた方がいいのではなかろうか? というレベルだった。
「この物語は事実無根なので! 消去しろ!!」
「何を言っている? 事実だろう」
あながち間違ってないから反論できない。
ぐうっと口をつむぐ。それを見たカルマは心底楽しそうにしながら告げた。
「ああ、早く私を殺さないと。この蜜月の日々が全世界に発信されてしまうぞ? 私は構わないが」
きっと俺がずっと逃げていたからこのような手をとったのだろう。
カルマは本当に人が嫌がることばかりをする。
「ぜってぇ殺してやる……! 腹上死させてやるよ!」
「望むところだ」
俺がこの物語を書き換える。
最高のバッドエンドにしてやるよ。
降りてくる唇に目を閉じた。
俺はいつ襲われるかとビクビクしながら日々を過ごしていた。元勇者なのに本当情けないと思う。いや、でも俺今は普通の高校生だし。戦う術なんてないし。
カルマに襲われたあの日。
ちんこを弄り倒され、ケツの穴に指突っ込まれて、思考も体もぐちょぐちょどろどろになって、気付いたら自分の家にいた。自分で帰った記憶がないから、気を失ってしまった俺をカルマが送ったんだろう。そう考えると無性に腹が立った。
ここで疑問に思うのは、最後までカルマとヤってしまったのかということだ。
多分、否。俺達はきっと最後までしていない。
理由は体の不調があまりなかったからだ。
カルマのBL本のおかげで、男同士でどうやってヤるか、突っ込まれる側にどんな負担があるのか、変に知識が身に付いてしまった。最悪な事に俺は突っ込まれる側らしいが、事後の不調や体の軋みっていうのがあまりなかった。そして闇属性のカルマは回復魔法を使えない。だからきっと最後まではしていないだろうという結論に至った。
しかしこのまま何もせず喰われるのを待つだけっていうのは、絶対に嫌だ。
魔法もない、力もない今の俺で何が出来るか……。
最近俺はその事ばかりを考えている。
「ただーいまー」
ガチャッと玄関を開ける。
俺の家はごくフツーの二階建て一軒家だ。ぐちゃぐちゃと散乱している靴はいつもの事。だが、端に綺麗に並べてある一足の靴に違和感を覚えた。こんな上等な靴、我が家に買う余裕などない。
「誰か来てんのか……?」
ダイニングから賑やかな声が聞こえてくる。
家に入れるぐらいだから保険の人とかかな。挨拶とかめんどくさいし、二階に行こう。
そう思い足を踏み出した、その時。
「本当に息子がお世話になりました!」
「いえいえ、お気になさらず」
とてもとても嫌な声が聞こえた。
「カルマ!?」
バッとダイニングに続く扉を開ける。
そこには、憎きカルマと母ちゃんが座って談笑していた。慌てて駆け寄り腕を引っ張る。
「テメェなんで家にいんだよ!!」
早く家から追い出さないと。この家がめちゃくちゃにされる前に!
しかし、それを止めたのは予想外の人物だった。
「先生に何て口の聞き方してんだバカ息子!」
ドガッと能天に鈍い痛みが走る。
母ちゃん渾身の拳骨が炸裂していた。
「いってぇぇぇぇ!」
あまりの痛さにゴロゴロとフローリングの上をのたうち回る。
こンのババア! カルマとはいえ一応人の目があるだろ! 少しは手加減しろや!!
「あんたというバカ息子は! 本当にすみませんねぇ、先生! ホラ、光樹! 謝りなさい!」
「はあ!? 何でだよ!!」
「この間送ってもらったでしょう! あんたったらグースカ寝てて本当に恥ずかしかったんだからね!」
「ちっげぇし! あれは――」
反論しようとしたら、母ちゃんの鋭い視線を受け口をつむぐ。
我が家の権力者は母ちゃんなのだ。次点は姉ちゃん。
我が家の男子に権力はない。
「……すみませんでしたー」
「突然先生のお宅に押し掛けただけでなく、眠りこけるなんてもう、本当申し訳なく! こいつにはよーく言って聞かせますので!」
「いえいえ、本当に大丈夫ですから」
「ホラ別にいいらしいぜ」
母ちゃんが俺の姿を見て更に視線を鋭くするが、これは冤罪なのだ。確かに押し掛けたが、眠りこけたのは俺のせいじゃないし。つーかカルマが原因だし。心込めて謝る気は全くない。
「……息子には改めて指導しておきます。先生、今日は本当にありがとうございました! 忙しいのにお時間作っていただいて……!」
「いえいえ、原稿も一段落していたので大丈夫ですよ。私も光樹くんのお義母様にご挨拶したいと考えておりましたので、こうしてお招きいただけて光栄です」
なんでカルマがここにいるのかと思ったら母ちゃんが呼んでいたのか。余計な事を……!
つーか先生先生って。カルマがBL小説書いてんの、母ちゃん知ってたんだ? え、じゃあ母ちゃんもBL小説読んでんの?
「その、あの、私っ夜月真人先生の大ファンでして! 大変おこがましいのですが……サインいただけますか?」
「よろこんで」
「は?」
その言葉に唖然となる。
母ちゃんがサインをと取り出した本のタイトルは『鈍色の空』。何とか賞だかなんだかを沢山取った、ミステリー小説だ。
ああ、これ知ってる知ってる。だってこの間までドラマやってたもん。犯人がまさかの人で――って、え?
「は……? お前何してる人なの……?」
「小説家だが? 夜月真人は私のペンネームだよ」
驚きすぎて思考停止してしまった。
世界を滅ぼそうとした、魔王が、社会に溶け込み、小説家……?
あまりにも笑えねぇ話だと、顔がひきつってしまった。
せめて見送りに行けと、母ちゃんから放り出され玄関前に佇む。
「もううちに来んなよ。つーか俺、住所教えてねぇよな? 何で俺ん家知ってんだよ……」
「貴様が産まれた時から知っていると言っただろう。忌々しいアミターバの加護のせいで干渉することは出来なかったがな」
今までは光の神の加護のおかげで手も足も出せなかったのか。つまりあの時探しに行かなきゃ俺はこいつと無縁の生活を送れていたということで。迂闊な行動を取ってしまった自分に腹が立つ。
あの本さえ、あのBL本さえなければこんなことには……!
そうだ、忘れていた。俺はこいつをとっちめなきゃならない。
「つかテメェ、何ネカマしてんだよ! BL小説家のSNS、完全に女性だったろが! 騙しやがって!」
「男設定だと、私が作者かもしれないと気付く可能性があっただろう? 薄情者はギリギリまで気づかなかったがな」
いや前世の宿敵が今世で小説家になってるだなんて誰も思わねぇよ! つーかこいつ本当、なんで小説家なんかやってんだ!?
俺の表情で言わん事が分かったらしい。カルマは淡々と言葉を続ける。
「BL小説は完全に趣味と釣り要因だが……ミステリー小説は暇潰して書いたものが当たってな。金も入るし意外と悪くないから続けているだけだ」
「……随分この世界に溶け込んでいるようだな?」
「まあ、この世界はあの世界より過ごしやすいし、別に滅ぼす理由もない。しかし」
スッとカルマの腕が伸びてくる。そのまま頬に手を添えられた。
「貴様が私のモノにならないのであれば、考えるが?」
「っ……脅しかよ」
「貴様は初日で気絶してしまったからな。私も意識がない状態で犯す趣味はない。しかし流石にもういいだろう。私は我慢の限界なんだ」
流石にとか言ってるけどまだ二日しか経ってないからな! あと健全な男子高校生にそんなこと言うんじゃねぇ!
「明日、放課後迎えに行く。覚悟しておけ」
触れるだけのキスをして、カルマは去っていった。
その場にずるずると座り込む。
「~~~~逃げてぇ……」
情けない俺からは弱音しか出なかった。
*
「殺したいほど憎い相手とヤらなきゃならん時ってどうしたらいいと思う? できたら隙をついて殺したいんだけど」
「え、光樹……暗殺者とかにでもなんの?」
嫌だと思っていても時は無情にも進むもので。気づけば次の日の昼休みになっていた。
時は刻々と迫ってきている。それに伴い俺の機嫌も急降下していった。勇介にこんな訳わからん質問をしてしまうのも仕方ないだろう。
「暗殺出来たらいいんだけどなあ……。めちゃくちゃ強いんだよソイツ」
「ふーん?」
前世の俺でも勝てなかった相手だ。そのうえ今世の俺は魔力がない。どんな結果になるのかは火を見るより明らかだった。
モソモソとメンチカツパンを食べながら、勇介は口を開く。
「じゃあ、アレだ。腹上死」
「なんだそれ?」
耳慣れない言葉に首を傾げる。死ってついているぐらいだから死に方の一種……か?
「なんかセックスの最中とかその後に死ぬことらしいぞ?」
「なんだそれ!?」
詳しく聞き出そうとするが、そうやって死ねるなら本望だよな~と気の抜けた事を言う勇介からはこれ以上の情報は聞き出せそうになかった。
ここで活躍するものは、インターネット。本当、恵まれた時代に生まれてきて良かった!
ネット先生で素早く検索をする。調べてみると本当に腹上死という死に方があった。セックスによる興奮? とかでなんか死に至るらしい。
次元を越えるほどの力を持つカルマが、こんな人間じみた死に方をするのかと少し疑問にも思ったが……物理的に攻撃するより断然可能性はある。
一筋の光明が見えた気がした。
そしてとうとう来てしまった放課後。
さっきからため息しか出ない。
「なに落ち込んでいるのか分からんけどさあ……元気出せって!何とかなるって!」
「何とかなるんだったら今すぐ逃げ出してぇよ……」
しかし、そんなことをしたら地球がぶっ飛ぶかもしれない。カルマは実際にアヴァニをぶっ飛ばしかけた魔王だ。昨日あんな事言われた以上、逃げ出すことはできなかった。
まだ少しだけ、勇者としての尊厳は残っているもんでな。
軽口を叩く勇介を小突いてやろうと見上げる。
すると、勇介は尋常じゃない顔つきをして固まっていた。困惑と、怒り、そして絶望の表情。
釘付けになっている目線の先には――カルマと清田さんの姿があった。
「!?」
カルマが清田さんに手を伸ばす。
それを見た瞬間、俺達は駆け出していた。
「真理亜!」
「アーリア!」
なんでカルマとアーリアが! いや違う、今は転生した姿の清田さんだけど! でも、なんで二人が一緒に!?
俺か? 俺のせいなのか? 俺のせいでまた……!
前世の記憶がフラッシュバックする。
最終決戦のあの時。回復役のアーリアは真っ先に狙われた。そしてヴィーラの目の前で……。
指先の温度がなくなる。
早く、早く二人を引き離ささないと!!
奴の指が清田さんの髪の毛に触れようとしたその時。
――カルマの腕を掴み、清田さんとの間に体を滑り込ませた。その隙に勇介が清田さんをしっかりと抱き込む。
ここまで距離を離せば、清田さんに何かすることなどできないだろう。
俺はカルマを睨み付け、カルマは目を細めて俺を見据えた。
「熱烈な歓迎だな。そんなに嫉妬したのか?」
「……ああ、腸が煮えくり返るほどな」
ブワッと沸き上がるカルマの威圧感に、思わず怯みそうになる。けれど、ここで目を反らしたら敗けだ。
絶対怯まないようにしないと……!
お互いに睨み会う。
一触即発。次動いたら終わり。
そんな緊張感が俺達を包む中、呑気な声が響いた。
「あっ佐々木くん! 夜月先生と知り合いらしいね! もう、早く教えてくれれば良かったのに!」
危機感の欠片もないその言葉に気が抜ける。
アーリアは昔からそうだった。あまり場の空気が読めないのだ。
「ま、真理亜?」
「清田さん?」
振り向きどういう事か問いただそうとしたら、後ろからカルマにギュッと抱き締められる。そして耳元で囁かれた。
「私は彼女と話をしていただけだ。彼女が私のファンらしくてね。嫉妬は嬉しいがそう拗ねるな。私は決して手を出してはいないよ」
「……は?」
その言葉を証明するかのように、清田さんは興奮した様子で勇介に自慢している。
「勇介勇介! 夜月先生にサインもらっちゃった! いいでしょう?」
「ああ……そう、だね……?」
勇介も予想とは違う清田さんの様子に戸惑っているようだったが、嬉々として話しかけるその姿に恐怖も警戒も全くない。
カルマとは本当にただ話をしていただけのようだった。
「……良かった」
何もなかったみたいで。
一気に肩の力が抜けた。
「つーか、光樹……真理亜の事、呼び捨てにしてなかったか?」
「えっ!? いっ、いやそんな事言ってないけど!?」
ほっと息をついていると、予想外な事を指摘されて慌てる。
しまった! とっさに前世の呼び方をしていたのか!
アーリアと真理亜って語感めっちゃ似てるんだよな。
「あっ! とは言ったけど名前は呼んでねぇよ」
「えー? あれは絶対……」
勇介はまだ納得していないようだったけれど、これ以上詮索されたらたまらないので無理矢理話題を変える。
「勇介さあ、何でお前走り出したんだよ」
さっきから俺はそれが不思議で仕方なかった。
勇介は前世の記憶覚えていないはずなのに、カルマから清田さんを護った。
どうしても前世の記憶を思い出したのではないかと気になってしまう。
「いや、なんか……すごく嫌な感じがして……。なんでだろう? 初対面なんだけどなあ……」
「……そうか」
覚えていなくても、 本能で感じ取っているんだろうな。
そういえば、前世のヴィーラも野性的な勘で攻撃を避けていた節があった。勇介もそういう勘が鋭い方なんだろう。
俺としては、前世を思い出してなくてちょっと残念と思ってしまったけれど。
……いや、あんな記憶思い出さない方がいいか。あまりにも残酷だから……。
仲良く会話している今の二人を見て、胸が暖かくなる。
「……とにかく安心したよ」
この世界とアヴァニは全く違う世界だ。司法だってしっかりしてる。カルマだっていきなり人を殺すような猟奇的なことはしないだろう。
――そんな甘いことを考えていた俺は馬鹿だった。
頃合いを見計らったように、カルマが耳元で囁く。
「こいつらは貴様の元仲間達だな? 確か聖女と騎士」
「……それがどうした」
「何もしないのならどうもしないさ」
一見脈絡のない返答。でも俺にはしっかりと通じた。
――これは脅しだ。
逃げ出す、反抗する……そんな疑わしい行動をとれば、手を出すかもしれないと。
こンの外道があ……!!
ギリギリと握っていた拳に爪が食い込む。
俺達が一番嫌な行動をこいつはする。それはアヴァニでよく実感していたはずなのに。
沢山の仲間が死んだ。こいつの策略によって。
ヴィーラとアーリアだって……最悪の死に方をした。あの戦いに参加しなかったら二人とも幸せになったはずなのに。
ずっと後悔していたんだ。俺がもっと強ければ、皆を護ることができたんじゃないかって。死なずに済んだんじゃないかって。
光樹は前世の記憶を持っているだけの一般人だ。何の力も加護もない……。
でも、行動しない理由にはならない!
今度こそ二人は絶対に護るんだ!
「……テメェの望み通りにしてやる。だから二人には手を出すな」
「ふふ、仲間思いだな。ならばそろそろ行こうじゃないか」
引っ付いていた体が離れ、カルマと手を繋ぐ。
それはどこに言っても逃げられない鎖のように思えた。
「じゃ、俺帰るわ。またな」
「ああ、光樹また明日」
「また明日、佐々木くん」
(……明日会えるといいな)
二人に別れを告げ、俺はカルマの車に乗り込んだ。
*
静かに車は止まり、エンジンが切られる。
「こっちだ」
カルマに言われた通り着いていく。どうやらここはマンションの駐車場のようだった。少し歩くと、この間来た時と同じ型のエレベーターが見えてくる。それに乗り込み、目的地に着くのを待った。
階数が上がっていくにつれて、ドキドキと心臓が鳴り始めた。それがバレないようになるべくカルマと距離を取る。
緊張したら駄目だ。余裕のある表情をしないと。
なんたって俺は――コイツを襲うんだから。
ポーンと軽やかな音を立ててエレベーターは止まる。さすが最上階。部屋が四部屋ほどしかない。
その一角のドアまで進み、カルマは鍵を開けた。
「入れ」
「……お邪魔、します」
家に入るように促される。
足早に靴を脱いで、カルマが入ってくるのを待った。
鍵を閉め、カルマが靴を脱いで家に入った瞬間。
(今だ!)
「!?」
カルマのシャツを掴み唇を奪ってやった。驚愕の表情を浮かべているカルマにほくそ笑む。
チュ……とリップ音をわざと立てて唇を離した。首に腕を回し、唇を舌でペロッと舐め、妖艶に告げる。
「俺のことが欲しいんだろ……? いいぜ、やるよ」
よく分からんが、コイツは俺に執着しているらしい。それを利用しない手はない。
だからこの体を持って、コイツの精気を搾り取ってやることにしたのだ。
これが力の無い俺に出来る精一杯の攻撃。
本当に狙ってやる……腹上死を!
「ッキラナ……!」
感極まったカルマは俺の頭をガシッと掴み腰に腕を回して舌を……。
あっ、ちょ、待って! 知らん知らんこんなキス……!
「あっ、ふぁ、んんっ」
「はぁっ、キラナ……」
知らない生物が口の中で暴れているようだ。しかもその生物が舌を歯列をなぞる度にゾワゾワと快感が走る。
舐めていた。大人のキスを。
早くも主導権握られつつあるが、ここで怯んではいけない。今まで沢山の人と交わりましたよ、的なこなれ感を出さなければ! ビッチになれ! 俺! でなければコイツの精を極限まで搾り取れない!
「なあ……。移動しようぜ。熱くて熱くて仕方がないんだ……」
「貴様は誘い方が本当に上手いな……。前世が勇者なんて嘘だろう? 娼館で働いていたんじゃないか?」
最低な皮肉どうもありがとう、クソッタレめ。
手を捕まれ向かった先はモノトーンな部屋。その中央にはキングサイズのベッドがある。どうやら寝室らしい。
そこへ俺達は倒れ込む。抵抗する間もなく、ベッドに縫い付けられた。服は乱れ、息は上がり、見上げるとカルマの欲情した顔。
――ああ、やべぇ。俺、本当に魔王とセックスするのか。
それを自覚すると、急に体が震え始めた。
ちっ、情けねぇ。何ビビってんだ、俺! 元勇者だろ!
最悪なことに、カルマにも俺の震えが伝わったらしい。珍しく、その目が陰った。
「ふ、怖いか……? 私が……」
何かに怯えるような、遠慮するような。
こちらを伺うような表情を浮かべたカルマに何故だか無性に腹が立った。
「ちげーよ。武者震いって奴だ。あの憎き魔王を手込めにできると思ったらな」
ぐいっと胸倉を掴み、引き寄せる。
テメェはそんなヤワじゃなかっただろ。どこまでも無慈悲に俺達の命を刈り取った魔王。
そんな奴の情けない表情なんざ反吐が出る。
「俺が欲しいんだろ? ヤるならさっさとヤれよ」
「――ああ、それでこそ勇者だ」
正面から睨み付けてやると、カルマの表情は戻っていった。
奪い、苦しめ、それをひたすら楽しむ愉悦の表情。
そうだ、それでこそ倒しがいがあるってもんだ。
さあ、戦いを始めようか。
「ふっ……くぅ……ん!」
「どうした? もっと声を出してもいいんだぞ?」
しつっこいんだよ! 大体乳首なんか舐めても何も出ないつの!
互いに洋服を脱ぎ捨て、さっきからずっと乳首を弄り倒されている。ぴちゃぴちゃと鳴る卑猥な音でさえ興奮する材料になっていた。
カルマのBL小説の俺はすぐに乳首堕ちしていたが、現実の俺はどうかというと予想通りに乳首は弱かったわけで。
長時間弄くり回された乳首は立派に赤く熟してしまった。
何だかカルマの思い通りになったようで腹が立ち、せめてもの抵抗で声は抑えていたのである。
あ、いや……腹上死させるにはよがってる姿を見せた方がいいのか? いやでもなんか言いなりになったみたいで腹立つじゃん。
本来の目的とプライドがせめぎあっていた。
「全く……強情な奴だな。……それではこれはどうだ?」
カルマがぐっと力を入れ、両乳首を押し潰す。その瞬間、電気が走ったようにビリビリと甘い疼きが体を満たした。
「!?」
「……気持ち良いか? ……やはりな」
ニヤリと笑みを浮かべ、刷り込むように乳首を引っ張りコリコリと擦られる。乳首が押し潰される度に電気が走った。
「やっ、やめ……それ、あっぁん!」
なんだこれは!?
さっきまでと全然違う。乳首を引っ張られる度、快感がじわじわと溢れていくようだった。
「ふふ、もっと声を出せ。もっと乱れろ」
「やっやだ、それっ……ふ、あぁ!」
「キラナ……とても良いぞ。ああ、こっちも触ってやろうか」
思い付いたように、俺のちんこを一撫でされる。
それだけなのに。
「あッ、ああああぁ……!」
俺は勢いよく達してしまった。ビュクビュクと飛び出した精液はカルマの体と俺の腹を汚す。
嘘だろ……!? 俺こんな早漏じゃないのに……!
「何が何だかわからないようだな」
呆然としていると、カルマが囁くように話始めた。
「魔法には属性相性があるだろう。火と水、風と土。――光と闇」
「それがっ……どうした……」
アヴァニでは常識として広まっている理論だ。
それぞれ相反する属性の攻撃が弱点となる。
だから光の神の信託を受けた光属性の俺が、魔王討伐の勇者に選ばれたのだ。闇にとって光が弱点となるから。
「……それはセックスでも同じだと、知らなかったか?」
「は!?」
なんだそれ知らねぇよ!
前世では魔王討伐に必死だったから、そんな如何わしい店に行く余裕などなかった。それに魔王討伐したら王女様と結婚する決まりだったし、遊べなかったとも言うが。いつも右手とオトモダチで、仲間とも猥談をしなかった。だから俺の性知識は前世を含めてあまりない。
そんな俺にとってこの話は寝耳に水すぎることだった。
「反対属性の相手とセックスをするとトぶように気持ちいいらしいぞ?」
「えっ」
「こうやって少し触るだけで――」
魔力を纏った手でチュコチュコと上下に擦られる。本当にただ擦っているだけだ。快感を生み出そうとしている手つきではないのに、どうしてこんな……!
「あっああ、ああぁあああ!!!」
「直ぐにイッてしまうんだよ」
再びカルマの手のひらに精液をぶちまける。
先ほどより勢いを失っているが、それでも大量の液を出してしまった。
はあっはあっと、息を荒くする。強制的に二回も射精されられた体は全力疾走した後のように動悸が止まらなかった。
属性相性、マジでヤバい。
そうか……。だから知り合いの夫婦は反対属性の人達が多かったのか……。
知りたくもなかった前世の深淵を覗いてしまったような気がした。
「さて、私もそろそろ気持ちよくしてもらおうか。トんでしまってはまた我慢することになるからな」
スルリと尻穴を撫でられる。
その感触に驚いて、無意識にぎゅっと力を込めてしまった。
「おや、後ろの穴がパクパクと主張しているな。早く食べたいと言っているようだ」
「ちがっ……」
「しかし、まずは準備からだ。どれだけ体の相性が良かろうと、男同士は傷つきやすいからな」
そういうと、つぷりと穴に指を突っ込まれた。
ああ、これは前回もやった奴だ。俺がトんでしまった行為。今思えばあの時も魔力を練り込まれていたのかもしれない。
「んっ、ふぅ、あ……あ」
魔力が粘液の役割してんのか何なのか。すぐにぐちゃぐちゃとねばついた音を立て始めた。しかもその魔力は超絶効果のある媚薬入り。
すぐに頭がぼうっとしてきた。こんな状態でトんでしまった原因の場所を触られたら――。
「物欲しそうな顔をするな。……ここが欲しいのだろう?」
「ひぅ!」
内側のある場所。そこをぐにぃっと押し潰されただけで、ビクンッと飛び跳ねてしまった。
いやだ、ここは。何も分からなくなるんだ。
目の前にある快楽を貪るだけの獣になってしまう。
「やだ、いやだ、あっ、ああぁあ!」
「全く、上の口は天の邪鬼だな。下の口はこんなに正直なのに」
「やぁああ、んあっ!」
気持ちいい。気持ちいい。
二回達したはずのちんこは再び復活して揺れる度びたびたとお腹に当たる。その感触がさらに興奮する要因になった。
「ほら、気持ちいいだろう?」
「はっあ、あぁっん!」
自分が気持ちよくなってどうするんだと、少しだけ残っていた冷静な自分の声が遠くに聞こえる。
そうだ、俺にはコイツを腹上死させるという目的があったんだ。
けれど執拗に前立腺を押されれば、その目的などすぐに霧散してしまった。
「……もっとよがれ。もっと堕ちろ……余計な事など考えないほどに」
「ふっああ、あん、ああぁ!」
ヴィーラ……アーリア……死んでいった仲間達。
その顔が浮かんでは快楽で白んでいく……。ごめんな。こんな不甲斐ない奴が勇者で……。
信念も、懺悔も吹き飛び、最後に残るのは本能と呼ぶべき獣じみた欲望。
「あっ、ああ……ふっあっ!」
「……だいぶ解れてきたな……」
早く、早く。
もっとついてほしい。もっと奥にもっと硬いモノを。
カルマの体にすがり付き、本来の目的なんて忘れて本当に懇願してしまった。
「はや……く、あっ、入れ……て……?」
「……貴様はっ本当に……!」
ずるっと指を抜かれた。
物欲しげに穴が収縮しているのがわかる。
はやくほしくてたまらない。
「……ああ、待ちに待った日が来た」
その反り立つモノを見てゴクリと唾を飲む。
「あの時から幾千年……」
ゆるゆると穴にちんこが当てられる。
これが俺の中に入るのかと思うとぞくぞくと震えが止まらない。
「やっと貴様を我がモノに出来るのだ……」
「あっ!」
ぐぐっと先端が入ってくる。まるで体が裂かれているようだ。なのに、よりいっそう胸は高鳴る。
「さあ、私のモノになれ……!」
「あっあああぁぁあ!」
勢いよく奥まで入った瞬間、俺は達してしまった。
パタタと少し薄くなった精液が腹に落ちる。
触っていないのになんで、と考える余裕などない。
ドクドクと脈打つその感覚が気持ち良すぎて、まるで天にでも登っているかのようだった。
「これはっ……溶けるようだ……」
「あ……ぁ……」
まるで一つの生命体にでもなってしまったかのような。
心地よすぎてそのまま目を瞑ってしまいたい――。
しかし極悪非道な魔王はそれを許してくれなかった。
「まだ終わらせんぞっ……!」
「ひぎぃっ!」
ずるぅっとちんこを引き抜いたと思ったら、すぐ打ち付けられる。
前立腺を擦りながら動くその動作に、まるでカエルが潰れたような声をだしてしまった。
「あっあああ、は、ぁぁあ!」
「……ああ、キラナッ最高だ……!」
魔力を纏った一物は凶器としか言えなくて。
ゴリゴリと俺から知性を奪っていく。
声が押さえられない。気持ちいいことしか考えられない。
「貴様だけだっ……貴様だけが私を受け入れられる。ああ、キラナ、キラナッ……!」
「あぁっあっ、か、るま……あぁっ!」
じゅぼじゅぼと厭らしい音が部屋に響く。
気付いたらカルマと恋人繋ぎをしていた。
端から見たら愛しい恋人同士の激しいセックス。
誰が宿敵同士だと思うだろうか。
「……出すぞっ!」
「あ、はぁあ、ん!」
打ち付ける音が更に速くなる。
終わりが近い。
「――私に染まれ」
「あ、ああっあああぁぁぁ!!」
引き抜いたかと思うと、勢いよく最奥まで突きつけられ。
体から作り替えられてしまうような……そんな熱い奔流を受けて俺の意識は飛んでしまった。
*
「ん……」
眩しい光を受けて目を覚ます。
いつの間にか朝になっていた。
身を起こそうとして、動けない事に気がつく。どうやら後ろからカルマに抱きしめられているようだった。
けれど違和感はそれだけじゃない。
――入っている。カルマのナニが。
「テメェ何しやがっ……あ、ん!」
「起きたか」
思いっきり怒鳴ってやろうと思ったのに、入っているモノをゆるゆると動かされれば、たちまち嬌声に変わってしまった。
「貴様のナカは気持ち良すぎてな。出ていきがたい」
「だからってぇ、朝っぱらから……ぁあ!」
俺はどうやらカルマのちんこに激弱い。
勇者として情けなさすぎる事実だが、昨日沢山出した筈のちんこが再び勃ち上がってきたのを感じて認めざるを得なかった。
「やめっ、ふっうぅ……!」
「貴様に昨日聞けなかった事があってな。正直に答えれは止めてやらん事もない」
「なっ、ぁ、何を……?」
その言葉に目を輝かせる。起きがけにこんなハードな運動は、いくら高校生といえども辛かった。
「貴様昨日何か企んでいただろう?」
ヒュッと息を飲む。
バレていたのか。俺が企んでいたこと。
「私の事心底嫌っていた貴様が、あんな風に誘うわけがないだろう。まあ、途中からは本気で私を求めていたようだったので不問にするが」
「……そ、それはっ……!」
だからって言えるわけがない。
いわば殺そうとしてましたっていうようなモンなのに。こんな真っ裸で、あらぬものを突っ込まれている状態で言うなんて自殺行為だ。
「言えない事なのか……? まさかアミターバと関係するのか……?」
「ちっ、ちがっああ……」
なぜそこで光の神が出てくる? そしてなんでそんなに苛立ってんだ!?
ちょっ……耳を舐めるな乳首を引っ張るな尻をパンパンするなあぁ!
「腹上死させようとっ……、思ったぁ……!」
「……は?」
耐えきれずバラしてしまった。
ああ、くそ、俺の渾身の作戦が。
もう取り繕えるはずもなく。ポツポツと話始めた。
「……俺、もう魔力ねぇし。到底カルマに敵うわけないし。どうやったら倒せるかと考えて――は? お前なんででかく……」
「貴様が悪い」
ぐるりと横抱きの状態から仰向けに転がされる。
やっと見れたカルマの瞳は欲情で濡れていた。
「いや、待て待て!! 俺正直に答えたじゃん!! 止めるつったじゃん!!」
「止めてやらん事もないと言っただけだが?」
そうして浮かべた笑みは魔王に相応しき悪どさで。
「この魔王があああ!」
結局その日はベッドから降りられなかった。
*
あの最悪の日から数日後。
俺はカルマを徹底的に避け続けていた。
校門で待ち伏せされれば裏門から逃げ。家で待ち伏せされれば勇介の家に逃げた。
カルマと関わる度に最悪が更新される。もう関わりたくない。それが本音だった。
けれどそう問屋は卸さないらしい。
カルマの行動を把握するためSNS(ネカマのやつ)を覗いていると、『宵闇のアヴァニの第二部を開始しました!』と投稿していた。
「第二部……?」
訝しみながら貼られていたURLに飛んでみると、そこには宵闇のアヴァニのWeb小説があった。宵闇のアヴァニはWeb小説発の話だったらしい。
その第二部と書かれたページを読み――。
「なんっじゃこりゃあああ!!」
授業中ながら盛大に声を上げてしまった。
授業中に大声出したことをこってり怒られた後の下校途中。あれだけ避けていたカルマの家に俺は歩を進めていた。
部屋番号は覚えていたからエントランスで部屋番号を押しインターホンを鳴らす。
『おや』
「さっさと入れろ!!」
『ふふ、熱烈だな。私は嬉しいよ』
扉が開いたのでそのまま中に入る。めり込むほどの強さで最上階のボタンを押し、その階に止まるのを待った。
ポーンと音がして扉が開いた瞬間、カルマの部屋へダッシュし玄関を勢いよく開けた。
「テメェ! カルマッ……」
「ああ、やっと会えたな。キラナ」
途端に目の前が真っ暗になる。
いや違うか。抱きつかれているのか。カルマの方が身長が高いから、抱きつかれるとすっぽりと収まってしまう。
「離せぇぇぇっ!!」
「こうして会いに来てくれたこと、嬉しく思うぞ」
俺が嫌がっているの、見えないのか?
一回ヤったら頭がお花畑になんのか?
それほどカルマは俺の話を聞いてくれなかった。
「この間は無理をさせたからな、今日は手加減をしよう」
「だーっ! だから違うっつの!」
キスしようとする顔を避け、スマホを突きつける。
「これ! なんだよ!!」
「小説だが?」
「そうだけど! 第二部の内容だよ!!」
『宵闇のアヴァニ』第二部――
舞台は現代。
寿命を全うしたキラナを追って、カルマはこの日本へと降り立った。しかし、生まれ変わったキラナは前世の記憶を覚えていたものの、愛し合った記憶はすっかりと忘れていた。前世の宿敵と認識されるカルマ。そのカルマを倒そうと躍起になったキラナがとった行動は、腹上死させるというもので――。
「ってなんだよこれぇ!! ふざけるなよ!!」
これはどうみても俺とカルマの出来事の話だった。そろそろ肖像権侵害を訴えた方がいいのではなかろうか? というレベルだった。
「この物語は事実無根なので! 消去しろ!!」
「何を言っている? 事実だろう」
あながち間違ってないから反論できない。
ぐうっと口をつむぐ。それを見たカルマは心底楽しそうにしながら告げた。
「ああ、早く私を殺さないと。この蜜月の日々が全世界に発信されてしまうぞ? 私は構わないが」
きっと俺がずっと逃げていたからこのような手をとったのだろう。
カルマは本当に人が嫌がることばかりをする。
「ぜってぇ殺してやる……! 腹上死させてやるよ!」
「望むところだ」
俺がこの物語を書き換える。
最高のバッドエンドにしてやるよ。
降りてくる唇に目を閉じた。
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