桃太郎

そーた

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桃太郎の鬼退治

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桃太郎一行は鬼ヶ島へ入ると、そこには鬼達が待ち受けていました。
身体の大きさ自体は普通の人間と変わりませんが、頭にはツノが生えており、この世のものとは思えない恐ろしい顔をしています。

「出たな鬼ども…。
おじいさんを苦しめたやつらめ…。
容赦はしない!行くぞ!みんな!」

刀を抜き、力強くそう叫ぶと、桃太郎は一人で鬼の群れに駆け出しました。

「おい!一人で来たぞ!」
「向こうの奴が攻めてきやがった!」
「恐らく財宝目当てだろう!迎え撃て!」

鬼達も激昂して、桃太郎一行を迎え撃たんと身構えました。

一人の鬼が向かってきました。

棍棒を大きく振りかぶりました。

ガラ空きになった胴。

桃太郎の刀がスラと煌めきーーー

二人はすれ違い、

鬼は走ったまま勢いよく、
前のめりに滑り込みました。

斬った音すらありません。

ただ鬼達の目に桃太郎の刀が再び見えた時には、その白刃は赤く染まっていました。

桃太郎は尚も疾走を止めず、
鬼の群れを駆け抜けて行きます。

風が吹き抜けていくようにーーー

武器を構える鬼達の側を、まるで素通りするかのようにすり抜ける際に、

キラッ…キラッ…キラッ…

と何かが光に反射すると、

遅れて鬼の体から血飛沫が上がり、鬼達はモノも言わずに斃れていきます。

「クソッ!なんてガキだこいつは!」
「バケモノみてえに強えぞ!」

あっという間に半分もの鬼が討たれました。

「鬼ってのも大した事は無いな。こんなに弱いくせに人間達を苦しめてたのか。」

桃太郎は息を切らすどころか、汗一つかいていません。

「小僧!訳のわからん事をほざくな!
鬼はてめえらの方だろう!この侵略者め!」

棍棒を構えた鬼が上ずった声を上げますが、棍棒を持つその手は小刻みに震えています。

「そっちこそ訳の分からない事を言うな。
正真正銘の鬼に鬼呼ばわりされるとは思わなかったよ。
犬!猿!キジ!そっちはどうだ!?」

桃太郎は仲間達が無事かどうかを確かめるために後ろを振り返ってみると…

…無事でした。

……というより

最初の位置から一歩も動いていませんでした…。

「…おいィッ!?お前らッ!!
全く戦ってないではないかッ!?」

「ワン…だって、桃太郎さん強すぎて…」
「ウキ…私ら別に要らなくないですか…?」

「いや、でもさ!僕、『行くぞ!みんな!』って言ったよな!?
何?あの後僕一人で突っ走ってたの!?
すごく恥ずかしいのだが…!!」

そういえば僕しか戦ってなかったな…
と一人ごちる桃太郎でした。

「ケーン…でも桃太郎さん一人で大丈夫でしょ…」

キジが呆れた様に言うものの、その言葉には桃太郎への信頼が伺えます。

その言葉を受けて刀を肩に担ぐと、まだ十人以上もいる鬼達に向き直り、

「まあ…でも、確かにそうかな。
こいつらがいくら束になって掛かってきても、僕一人で十分だ。」

鬼達はたじろぎながらも桃太郎に向けて怒鳴りました。

「何を一人で訳の分からない事をブツブツ言っている!!」

「訳の分からない事かどうか…
…今証明してやるよ。」

桃太郎は刀を構えると、その顔から再び表情が消え…


一方その頃ーーー
鬼の親玉のもとに、謎の少年が一人で鬼ヶ島に攻めてきたという報告が入りました。

「やはり、その少年というのは……」

「…恐らく。しかし、どうしてこんな…
こんな、事をッ!?」

「……つまりは復讐。俺を殺しにきたんだろう。」

「しかし…これ以上同胞が殺されるのは…」

「分かっている。これは全て俺の責任。俺が全ての罪を贖うべきだ。」

親玉はそう残すと、その少年の元へと急ぎました。
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