チート狩り

京谷 榊

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第四章 集団の裏には

三十話 抗争

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 ユウは楽しい時間を過ごした、エーリュシオンのメンバーたちと一緒にいろんな話をした。
 いろんな笑い話をしているうちユウの後ろに隠れていたアリサも適当に座っては楽しそうに話をしている。そんな中、ユウはアイコに個人で呼び出される。
「どうしたんだ、さえない顔して」
 ユウはアイコについていき、階段を上がって全体を見渡せる場所で下にいるエーリュシオンのメンバーを眺めながらアイコは喋り始める。
「あいつ、アリサっているだろ」
「ああ、あの子がどうかしたのか」
「あいつ、名家の出身でこの都市にある大企業の一人娘なんだ。だからウチらとは偉い違いがあって…あーゆーすごい奴ってウチらみたいにはなってほしくないんだよな」
 ユウはアイコの些細な悩み事に付き合わされ、自分でもどうアドバイスすれば良いのかわからなくなる。
「心配のしすぎだよ」
「だよな」
 そう言うと二人は下へ降りてまた仲間達と和気藹々とした話し合いを再開する。
 その後ユウは数時間エーリュシオンのメンバーと一緒に過ごした。勧誘もされたりしたが言うまでもなく断った。帰りはメンバーの一人にバイクで知っている道まで送ってもらい、その日一日ユウには何の問題もなかった。
 次の日ユウはまた、エーリュシオンのメンバーのいる廃工場に向かった。
 廃工場に入るとメンバーがたむろしておりその真ん中にはユウが目を疑うものがあった。
 それは集団リンチを喰らいボロボロの姿になったアイコだった。ユウは驚き他のメンバーにわけを聞くと、昨日アカリはアリサを家に送る際に待ち伏せしていたコーリュキオンのメンバーに襲われ喧嘩になった。泣きっ面に蜂とはこのことか、アリサはコーリュキオンのメンバーに拉致され、アイコは一人で五人の男の相手をすることになってしまい近くにあるこの廃工場に戻ってきたのだ。
 だが、ヤンキーや不良グループで恒例の仇討ちやお礼参りなどに行く者は名乗り出なかった。
「どうしたんだよ仲間がやられてんだぞ」
 メンバーのほとんどは悲しい目をしており目を逸らしてうつむいている者もいた。
「無理だな、残念だけどこいつらにはそんなことする根性ねーよ」
 ユウは顔を上げて総長の目を見る。
「だって、ここにいる本当の不良は俺たち幹部だけでその他みんなカタギだから」
 その場にいるみんなは下を向いて目を逸らす。
「そいつらは全員俺たちが守ってやっている人たちで本当はみんな真面目な学生なんだ」
 言われてみれば、人数も昨日より少ない上に服を着崩したり髪を染めるなどをしているのは幹部だけだった。
「それに、コーリュキオンの奴らと喧嘩するにしても俺たち幹部だけじゃ話にならねんだよ」
「俺たちヤンキーの戦力はせいぜい六人、それに対してコーリュキオンは暴走族、戦力になる人数はおおよそで三千人。ケタが違いすぎる」
「その上奴らの天辺にいるアスイってやつは特にヤベェ奴であいつは業力が使えるって噂もある」
「だからオメーのためにも、仇討ちなんて考えはよせ」
 ユウはしばらくうつむいてから後ろを振り返り、
「すまない、用事を思い出したから今日はもう帰るよ」
 そう言うとユウは廃工場を後にした。
「アイツ、ぜってー仕返しに行ったな」
「やめとけと言ったのに」
「しょうがねえよ、俺らってそんなもんだろ」
「それじゃあ、俺はそろそろ行きますか…オイお前らちょっとだけこいつの面倒みてくれ」
 エーリュシオンの総長はアイコを指差して言った。その後廃工場を出ていった。他の幹部たちもその後を続く。
「そういえば、あのドレークって奴コーリュキオンがどこにいるのか知ってるの?」
「……早めに追いつこう」
 だが、ユウにはユウの得策があった。ユウの扱える業力でルガに教えてもらった技の一つであり、探し物をする際に役立つこんな時にちょうどいい技である。
 ユウは早速トラウキングという技を使った。これは追跡する対象のオーラまたは匂いなど対象から発せられるものがあれば途中で分断されていない限りどこまでも追跡が可能である。
 彼女はアリサのオーラと匂い両方とも覚えていたため、追跡することはたあいもなかった。
 ユウはまずアリサが誘拐されたという住宅街まで引き返し、そこからアリサのオーラをたどって町外れにある公民館に着いた。
 アリサが拉致されたコーリュキオンのアジトにはおよそ3分ほどで着いた。敵軍のたまり場に着くなり門の前だけでも伝わってくる相手の人数の多さに言葉をのんだ。ここにアリサが…ユウはこうしてはいられないとユウは扉を開けようとする。がしかし、誰かに腕を掴まれた。自分の腕を掴んでいたのはエーリュシオンの総長アースだった。
「どうしてここに」
「シッ!きたのは俺だけじゃない、みろ」
とアースが後ろを指さすとエーリュシオンのメンバー全員がそこにいた。
「すごい…、でも何で」
「やっぱり仲間は大事にしないと」
「それにこのまま何もしていなかったらエーリュシオンの名に泥を塗るのと同じことだからな」
「警察ならもう読んだよ」
「大事な仲間が傷つけられたことに比べれば大学推薦取り消しなんてどうってことないよ」
「っつーわけでアイツらに落とし前をつけさせるってわけ」
「そんなわけで俺たちも戦う権利はある」
「それじゃあ一丁やりますか」
 エーリュシオン総長はそう言って全体を鼓舞する。
「俺たちはここにアイコの敵討ちとアリサの救出に来た、最後にもう一度聞くこれから俺たちがするのは喧嘩だ、推薦取り消しや暴力が怖いってんなら今すぐ帰れ!」
「それでも仲間を守りたいってやつはついてこい‼︎」
オーーーー!
 そしてアースは扉を開けて仲間を引き連れて走った。約三十名の不良集団だが負ける気などさらさら無さそうにエーリュシオンは突っ込んでいった。
 先頭にエーリュシオンの幹部その後からユウや下っ端たちが続いてアスイのいる正面の襖で閉ざされた部屋を目指す。
道中の廊下には複数人の敵の下っ端たちがいたがエーリュシオンの幹部はそれらをばったばったとなぎ倒し、味方の下っ端たちもここに来る途中で拾ったのか木の棒などでコーリュキオンの下っ端を攻撃する。
 コーリュキオンのボス、アスイのいる広間はすぐそこまで近づいており真正面に突っ込んでいったユウは、襖を突き破り中の様子を確認する。
 ユウは確認する以前から、襖を突き破った瞬間からこの部屋に大人数の不良がいることがわかった。
 幹部や下っ端たちはユウと同時もしくは少し遅れてこの部屋に突っ込んできた。周囲を見渡すと四方八方が不良に取り囲まれておりこのとき全員が、敵の中心にいると改めて理解した瞬間だった。
 エーリュシオンの幹部ダマンはいち早く敵のボスを見つけた。コーリュキオンのボスアスイはダマンの目を合わせるなりコーリュキオンの幹部が話しかけて来る。
「オイ、お前ら何してくれてんだよウチのナワバリ荒らしやがって」
「なら逆に聞くが、お前なんで昨日あんなこと仕掛けたんだ」
「大手の企業の御令嬢をさらって何が楽しんだよ、身代金目的か?」
「失礼だなぁ。俺はただあのお嬢様を小汚い不良の手から助けてやっただけだぜ?」
 幹部のうちの一人ミーノが喋り出す。
「ふざけんじゃねーぞ!俺たちの幹部一人をボコボコにして女の子をさらって、不良の手から助けてやったぁ⁉︎バカもほどほどにしろ」
「お前たちの目的は何だ」
ここでユウが初めて口を挟む。
「目的?…それはもちろん目障りな奴らに消えてもらうためさ」
「いいか?俺たちがあの女を警察に突き出せば俺たちは不良共の手からご令嬢を救った善人な集団、それに比べてお前たちに対する評価は地に落ちて世間様から不当な扱いを受ける」
 すると味方幹部のラテュスは
「そんなにうまく行くはずがない、普段からずっと悪行を繰り返しているアンタらの評価が一気に覆されるはずがない」
「それはどうだか、やってみてからのお楽しみだ」
 すると周りにいるコーリュキオンの下っ端たちは一斉にかかってくる。もちろんエーリュシオンのメンバーたちも武器を構えてはいるが、ほとんどが怯んでしまい金縛りに遭っている。エーリュシオンの幹部はそれに気付き攻撃が行き届く前に防ぐ。
「さて、エーリュシオンが潰れるのも時間の問題だな」
 そう言って敵の幹部が目を逸らしタバコを吸い始めると奥の方で図太い悲鳴が上がった。
「誰だよ、こんな情けない悲鳴をあげているやつは」
 と嘲笑するように振り返って目を向けると目の前に人が飛んでくる。それでタバコを吸おうとしていた男は潰される。
オイ、なんだ今のと慌てふためくものも出てくる。
 そう、ユウが本気を出したのだ。
「ドレーク、お前」
「話は後だ全部片付けていいんだよな」
「もちろん!」
 するとユウは大人数の中拘束で移動しながら敵を倒しながら進んでいった。
30秒後…。
 人口およそ三千人を占める暴走族コーリュキオンの三千人の方が全て倒され残されたのは幹部数人とコーリュキオンのボス、アスイだけだった。その他の下っ端たちはみんな地面に転がっている。
 あまりの光景にその場にいる人は喜びよりも驚く気持ちが大きく凌駕しており言葉も出なかった。
「すげぇ、ドレークお前…」
「説明は後だ」
 ユウはそう言い訳してまた後回しにする。
「おもしれぇ」
 そう言ってアスイは立ち上がる。ゆっくりフラフラとよろめきながら歩いてくる。
 ユウには絶対に勝てるという確証があった。なぜなら今相手をしているのは一般人であり戦闘員のように訓練を積んだわけでもなければ特異能力を使ってくるという可能性も極めて低い。相手はかなり余裕そうにしてはいるが相手が本気を出したところで自分に敵うとは到底思えない。
 して、アスイはタックルを繰り出すように低い体勢で走ってくる。それに対しユウはタイミングを合わせてアスイの頬にナックルを打ちかます。見事にナックルがクリティカルヒットしたアスイは吹っ飛ばされ地面を転がっていき伸びる。
 一発だった。この出来事にはその場にいる全員が言葉を呑みただろいでいる。
 そして、ちょうど良いタイミングで警察が到着して一連の事件は呆気なく終わりを迎えた。それと同時にアイコもこの場所に到着した。アイコはこの光景を見るなり驚愕して近くにいたエーリュシオンの幹部のラテュスに聞く。ラテュスはドレークに聞いた方が早いと言いドレークの方を指さす。
 ユウは現場検証に立ち合い警察や戦闘員の職員たちと話し合っている。
「なぜあなたのような方がこんなところで暴力事件を起こしたのですか」
「これはなんというか、仕方なくやったことで」
「暴力にしかたないなんてありません!これは立派な犯罪ですよ」
「すいません、」
はい、と警察が声のする方を向くとエーリュシオンの下っ端の子達がいる。
「この人は私たちを暴力団から守ってくれたんです、」
「どちらかと言うと悪いのはこの人たちです」
「それをこの人は見事に返り討ちにしたんです」
「わ、わかりました…。とにかくあとで全員詳しく事情聴取するので。まずは、ここに倒れている人たちを運ぶのでこの場から動かないでください」
 そして、コーリュキオンのボス、アスイは窃盗及び未成年による賭博の容疑があり拘置所に送られることとなった。
 アイコが足を引きずりながらユウの元へ寄って行く。
「ドレーク!お前…」そこからは言葉が出なかった。
「ああ、このことか…これはアリサを探すために」
アイコはハッとしてユウに問い出す。
「そういえばアリサは⁉︎」
「わからない、今までコーリュキオンの相手をすることで手が詰まってたから」
 とにかく手当たり次第に探そうと考え室内を隈なく探そうとしたその時、奥の襖がゆっくりと開いた。その中から恐る恐るとアリサが出てきた。
「「アリサ!」」
 ユウとアイコはアリサの元へ駆け寄る。
「大丈夫ですか……って本当に大丈夫ですか⁉︎アイコさん」
「ああ、これか。気にすんな大したことじゃねーよ」
「そんなわけねぇだろ、今だってめちゃくちゃ痛いくせに」
「言うんじゃねえ」
 アリサは意外にも元気な様子でユウとアイコは拍子抜けだったがとにかく安心した。
 その後ユウやエーリュシオンの幹部は事情聴取のため警察に同行することとなった。
これが最後になるかもしれないと思ったユウはなるべくちゃんとした挨拶をしてアイコとアリサに別れを告げた。
 ユウはこの場を離れる際、アリサが出てきた部屋の近くを通るとほんの少しだけだが魔力の跡を感じ取ったが気のせいだろうと思い気に留めず警察について行った。

 その日の午後、エターナルシティに戻ってきたルガは数時間前に戻ってきたヤスケや、前日と同様に街中に出かけていたユウとジョセフを連れてあるところに出かけた。
「ロスとリアは連れて行かなくてよかったんですか?」
ヤスケはロスとリアの行方を心配しているがルガは時間までに帰ってくるなら、どこにいようと心配しなかった。
「探したけれど見つからなかったんだよ」
「そんなことよりこれからどこに向かうんだよ」
 ジョセフは歩きながらルガに聞く。
「今にわかるさ、あともうちょっとで着く」
 なんでそんな毎回毎回行き先やら目的やらを教ねーんだよ。そのまましばらく歩いているうちに目的地が見えてきた。
「見えた、ここだよ」
 建物が連なっているなか、ひときわ大きく白っぽい塔が見えた。一見するとただのショッピングモールに見えるが、ルガの目的はこのまたさらに上にあった。
 一行は建物内に入りワープホールを使ってまた別の場所へと移動する。
 ついた先はオークション会場になっていた。
 「ようこそメテオラへ。」
 男性かも女性かもわからない声でアナウンスが流れる。
 「ここメテオラでは様々な美術品、芸術品を出品しております。今日も良い品に出会えることをお楽しみにしてください。」
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