異世界に降り立った超人──アーヴィンの章

チリノ

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第二章

銀細工の夜その五

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白濁した眼球を侵入者に向け、生者の血肉を求めたゾンビ共が、アルバに襲いかかる。

アルバはシックスガンの引き金を引いた。手前にいたゾンビの頭が吹き飛ぶ。
そしてショートソードを薙ぎ払い、右側のゾンビの顔面を切り裂くと、後方へ飛び退いてアンデッドとの距離を保った。

身体が不思議なくらい軽く感じる。思うように動いてくれる。あの男から貰った薬のおかげだろうか。

アルバは残ったゾンビの膝頭を撃ち抜いて動きを封じると、次はスケルトンに斬りかかった。

だが、身体を引いたスケルトンが、紙一重でアルバの斬撃を避ける。

ゾンビは力は強いが動きが鈍く、スケルトンは力は弱いが素早い動きをする。
空を切ったショートソードを構え直し、アルバはスケルトンと向かい合った。

スケルトンが手刀でアルバの胸を貫いてくる

スケルトンの指先は鋭く尖っており、まともに受ければ易々と生身の人体を突き破る。
アルバは半身を切りながらスケルトンの貫手(ぬきて)を回避すると、その腕を切り飛ばした。

そして間髪入れずにスケルトンの額目掛けて銃弾をお見舞いする。
スケルトンがバラバラになって地面に散らばると、アルバは最後に残ったゾンビを始末した。



ランタンの明かりで墓地の闇を追い払っていると、アルバはようやくリーザの墓を見つけることができた。
アルバは女房の墓石の前に近づき、静かに手を合わせた。

そして純銀の板を彫って作り上げたレリーフを外套の内側から取り出すと、リーザの墓石に置いた。

リーザの魂を安らかに鎮めるためのレリーフだ。
(どうか、安らかに眠ってくれ……)

アルバが祈りを捧げる。どうか、リーザに安らかな眠りが訪れますようにと。
だが、祈りを捧げている内にアルバは、墓石の周囲に言いようのない違和感を覚えた。

そうだ、アルバはリーザの墓から更に濃い闇が漂っているかのような錯覚を感じ取ったのだ。
すると墓の下から女のものと思える白い腕が生えてきて、地面を掘り起こし始めた。

墓の下から這いずり出てきた女の亡骸が、顔を上げてアルバを睨んだ。
リーザっ、リーザっ、この世を彷徨い続けている俺の女房っ、アルバは心の内で叫んだ。

「アルバ、アルバ……オマエノセイデワタシハシンダンダ……」
ギラギラと底光りするリーザの両眼からは、アルバに対する憎悪がありありと浮かんでいた。

「ああ……リーザ、すまないとは思ってる……お前の気が済むようにしてくれ……」
そういうとアルバは、手向かいも逃げる素振りも見せず、リーザの前に両腕を広げて身を投げ出した。

「……オマエノクビヲヒキチギッテクッテヤルゾッ、アルバッ」
歯を剥いたリーザがアルバに飛び掛ろうとしたその瞬間、激しい閃光が走った。

ギャっと悲鳴を上げたリーザが、手の甲で顔を隠しながら墓石の後ろに隠れる。
「どうやら間に合ったようだな」
墓地の暗がりから出てきた人影が呟きを漏らす。

人影の正体はアーヴィンだった。

「亭主を逆恨みせず、いい加減に成仏したらどうだ、あんた。そんな土気色の顔じゃ、男は近寄っちゃこないぜ」
墓石の上に飛び乗ったリーザが、アーヴィンを無言で睨みつけた。
だが、アーヴィンのほうは気にした様子もなく、どんどんリーザに近づいていく。

リーザとアーヴィンとの距離が、一ラドル(一メートル)にまで縮んだ。
アルバはふたりを交互に見やる。
「あんた、どうしてここに……」

「子供に頼まれたんだ。アルバ、あんたを助けてやってくれってさ」
そう言いながら、アーヴィンはアルバにスマイルを浮かべた。
そしてリーザの方へと視線を戻す。

「ジャマヲスルナ……」
リーザが爛々とギラつくような視線をアーヴィンに浴びせながら、低い声で言う。
だが、アーヴィンはリーザに怯むこともなく飄々としていた。

「女房の墓参りに来た善良な男が、性悪女のアンデッドにこんな寂しい真夜中の墓地で食い殺されそうになってるんだ。
放っておけないのが人情ってもんだろう。違うかい?」

アーヴィンは気軽な口調でリーザに声を掛けながら、無造作に手を伸ばした。
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