異世界でクズ転生者を導けって言われてもな、そんな俺物語

チリノ

文字の大きさ
31 / 34

第二話っ、引きこもりの田代と俺っ!ヒャッハー! その11

しおりを挟む
鈴木の言葉に田代が他人事のように笑っていた。
おいおい、これまで好き勝手してきたお前が笑える話かよ?

57

熟しすぎて妙に甘たるくなったメロンの種を吐きながら、一つ首を回す。
俺は店の留守番をしていた。
暇だから俺は店に持ち込んだ本を読んでいた。
俺がどんな本を読んでるのか、気になるか?
別に小難しい内容の本じゃないぜ。

俺が今読んでるのはグリム童話さ。
結構面白いぞ。
子供向きの本だって?でも、中々含蓄がある話も多いぜ。

さて、そろそろ爺さんも戻ってくる頃だな、そんな事を考えていると店に客が飛び込んできた。
客は黒いローブを羽織った少女で年齢は十代半ばほどに見える。
幼さを残してはいるが、綺麗な顔立ちをしていた。

「あの、ここにビッグヒキガエルの油が置いてあると聞いたんだけど」
と、少女が俺に訪ねてきた。

「それなら今、ちょっと在庫が切れてしまっています、申し訳ありません……」
俺は申し訳なさそうな顔を作って頭を下げた。
「そう……」
俺の言葉に少女はとても残念そうな表情を浮かべた。

ちなみにビッグヒキガエルの油というのはセンソのことだ。
センソには様々な使い道がある。
局所麻酔や止血に使ったり、あとは強心効果もある。
それとトリップ用の幻覚剤にもな。

ビッグヒキガエルのセンソはかなり強くて、地球上にあるセンソの何百倍も高い作用を示すぜ。
錬金術師や魔術師達にも人気の高い商品で、爺さんと俺の店でも取り扱っているよ。
というよりも今朝も常連の錬金術師が在庫を一つ残らず買っていったからな。

多分、媚薬の原料に使うつもりなんだろうな。
モルヒネと混ざたり、他の薬と組み合わせたり、レシピは色々あるけど、
あの錬金術師の作る媚薬は評判が良いんだ。

「あと、十日ほどお待ち頂けるなら、新しく入荷して来ると思いますので、予約していかれますか?」
俺は少女に尋ねた。
そんな少女が瞳を潤ませながら「それじゃあ、間に合わないのよ……」と涙声で訴えてくる。
俺は口に手を当てながら、言った。

「それだとビッグヒキガエルを自分で狩ってくるしか、方法はありませんね。
この街からなら、徒歩で半日ほど掛かりますけど、ビッグヒキガエルの生息する沼地がありますよ。
ただ、途中で盗賊やモンスターに遭遇したりもしますから、護衛を連れて行かないと危険だと思いますが。
それか、冒険者ギルドに依頼をするとか。まあ、それだと割高になっちゃうかもしれませんが」

大量にビッグヒキガエルの油が必要ならともかく、個人で使う程度なら普通に買った方が安くて済む。
一匹分を集めようが、百匹分を集めようが、道中にかかる最低限の護衛料やギルドでの依頼料は同じだからだ。
つまり、最低限のコストはかかる。

「うーん……」
「それにこの店以外にもビッグヒキガエルの油を取り扱っている店はありますよ。
他の店にはもう行かれましたか?」
俺の言葉に少女が頷いた。

「他のお店もどこも在庫切れって言われたわ……」
誰かがセンソを大量に買い占めてるってことか?
そこで、店のドアについた鐘が鳴り響き、マッコイ爺さんがひょこっと顔を出す。
「おや、新しいお客さんかな?」

俺は爺さんに事の次第を話した。
「それだったら、知り合いの錬金術師がまだ持ってるかもしれんし、
訳を話せば分けてくれるかもしれんぞ」

少女が爺さんの言葉に目を輝かせる。
それから俺は心当たりのある錬金術師の家に行き、少しでいいから油を分けてくれと頼んだ。
だが、錬金術師──ボブの奴は既に材料をすべて錬金釜に放り込んだあとで、
奴は申し訳なさそうな顔をして俺に謝った。
いや、こっちこそ無理を言って悪かったよ、ボブ。

58

そんな事があって、俺たちは今、沼地へと向かっている。
黒いローブの少女──ルイーザが水筒の水を飲みながら切り株に座って一息ついている。
ルイーザは見習い魔術師で、魔法実験の試薬にどうしてもすぐにセンソが必要だとのことだった。

それだったら、もっと早く買っておくべきだと他人は言うかもしれないが、
どうやらルイーザは材料のことを失念していたようだった。
まあ、人間なんだからこういうミスくらいは起こすだろうさ。

コイツが少し間抜けなのかもしれないけどな。
それから再び、山麓から沼へと続く道を歩いていく。
なんで俺も一緒にいるんだって?

もしかしたら、新しい客になってくれるかもしれないからさ。
それにここで貸しを作っておけば、生成したアイテムを安く卸してくれるようになるかもしれないしな。
見習い魔術師のルイーザには金がないんだ。
金欠ルイーザには、まともに護衛を雇う銭がないってわけさ。

そういうわけだから、俺、ルイーザ、
それと元孤児の駆け出し戦士をやってるゴインズの三人で沼地に向かうことになった。

ちなみに駆け出しとはいっても、ゴインズはサモスから武器の使い方を仕込まれているし、
チャールズから習った治癒魔法と神聖魔法を少しだが扱える。
だから舐めてかかると痛い目を見ることになるだろうよ。

ルイーザが泥濘を踏まないように避けて通る。
さっきの通り雨で出来た泥濘だ。山の天気は変わりやすいからな。
それから少しして、ようやく沼地が見えてきた。
ここまでモンスターとも遭遇していない。

ルイーザが喜びながら沼の方へと駆け出していった。
俺とゴインズの沼地に不用意に近づくなと、制止する声もルイーザには聞こえてはいないようだ。
何かが沼地からガバッと飛び出してきた。
それはビッグヒキガエルを餌にしている巨大な毒蛇だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

処理中です...