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第二話っ、引きこもりの田代と俺っ!ヒャッハー! その13
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雨足がどんどん強まっていく。それこそ天空の水桶をひっくり返したような土砂降りだ。
小屋に備え付けられた暖炉で湯を沸かす。
この小屋は狩人や冒険者、あるいは木こりが骨休めをするために建てられたものだ。
ゴインズがコーンパイプを口から離すと、茶色くなった唾を暖炉の火の中に吐いた。
「にわか雨だといいんだけどな」
小屋の窓から雨を眺めながら、ゴインズがパイプを咥えなおす。
「本降りの雨じゃないかしら」
ルイーザがそう、ゴインズに返す。
「そうなると、今夜はこの小屋で一晩明かすことになるな」
「うん、今夜はもう休んで、明日、又捕まえるしかないわね」
俺は革袋に詰めた葡萄酒を取り出すと、二人に進めた。
三人で酒を回し飲みしながら、明日の予定を話し合う。
「ビッグヒキガエルは夜行性だから、朝だと捕まえにくいだろうな」
「それだったら、もう一度沼地に引き返して、捕まえてこない?
油袋は小屋で取ればいいし」
ルイーザの意見にゴインズが言葉を返す。
「いや、雨の降ってる沼地は水嵩が増えるし、滑りやすくなってるから危ないぞ」
そこで俺がゴインズに続けて
「それにビッグヒキガエルの肉に他のモンスターが小屋に寄ってきたりするかもしれないし、
ここまで運んでくるのも大変だと思うわよ」と答えた。
「言われると確かにそうかもね……しょうがないか……」
ルイーザが残念そうに俯く。だが、狩りに無理は禁物だ。
自分の力量を見誤れば、大抵は命を落とす羽目になるからだ。
それから俺達は床に寝転がると、朝が訪れるまで休憩を取った。
60
休んでいる途中でルイーザが俺の肩を揺すり、声をかけてきた。
「ちょっと、トイレに行きたいんだけど、付き合ってくれない?」
「ええ、いいわよ」
外はまだ雨が降り続けていた。
大粒の雨が革のマントに弾ける。
小屋から少し離れた森の茂みにルイーザが急いで入っていくのを見届けると、俺は木の陰で雨宿りをした。
すると、木々の間にいくつもの人影が動くのが見えた。
どうやら囲まれたらしい。
俺はルイーザに声をかけた。
だが、返事はなかった。
盗賊らしき男が遠目からこちらの様子を伺っていた。
「へへ、上玉が二人、それもとびきり上等な奴だ。今夜はついてるぜ」
人間に転生する時にほとんどの能力を封印したからな。
こういう時、盗賊の気配すらまともに察知できないのが難点だ。
雨に打たれたまま、俺は黙って手を挙げた。
61
俺達は猿轡を噛まされ、後ろ手に縛れた状態で片隅に追いやられていた。
周りには八人ほどの盗賊達が酒盛りをしている。
装備品からして、どこかのゴロツキ傭兵の類のようだ。
仕事に溢れたせいで盗賊へと鞍替えしたのだろう。よくあることだ。
ゴインズが盗賊達の顔を一人ずつ、黙って見ていた。
向こう側では、盗賊共に押さえつけられたルイーザが、二人がかりで襲われていた。
噛まされた猿轡の間からくぐもった悲鳴をあげている。
俺もさっき、盗賊どものボスと思しき男にのしかかられた。
全く、酷い気分だ。
酒臭い息を吐きながら、盗賊の一人が俺の傍らににじり寄って来る。
「こんだけの上玉、見たことがねえや。金持ちに売り飛ばせば当分は遊んで暮らせそうだぜェ」
そういうと、その盗賊が泥と垢で薄汚れた指先で俺の頬を撫でた。
俺は黙って相手の好きにさせていた。
「それにしてもボスだけ楽しむなんてずるいぜ。俺達だって、お前みたいなハクイのを抱きてえよ。
あっちの娘もベッピンだが、あんたはそれよりもそそるぜェェ」
酒で赤く濁った両目を向け、盗賊が俺の胸や尻を無遠慮に掴んでくる。
「それにしても本当に良い女だなァ。むしゃぶりつきたくなるぜ。
所でよ、お前、尻は大丈夫だったか?
なんせ俺達のボスは女の菊のほうも好きだからな、へへ、痔の薬が欲しいなら塗ってやるぜ」
そう言うと下卑た笑みを浮かべ、盗賊が再び仲間の方へと戻っていく。
憤怒の形相を浮かべたゴインズが猿轡を噛み締め、盗賊どもを睨みつける。
俺は暴行された時にこっそりと相手から抜き取ったナイフで、手首を縛っている縄を切っていた。
自分の縄を切ると、ゴインズの横に近づく。
俺はゴインズを横目で見やり、合図を送るとすぐに縄を切りにかかった。
とにかく、この連中からどうやって逃げ出すか考えないといけない。
奴らの隙を伺って、逃げるチャンスを見つけなければ。
62
酔っ払った盗賊の何人かが、地面に敷いたマントの上に寝ている。
ボスはテントの中に引っ込み、こっちもでかいイビキを立てていた。
見張り役はふたりだけだ。
俺達、三人の手は既に自由だった。
ただ、縛られているフリをしているだけだ。
とはいえ、あの二人の見張りをどうにかしないと、逃げ出すことは難しいだろう。
奴らが知らせれば、残りの連中も起き出してくるからだ。
そこで俺は女の武器を使うことにした。
見張りの前で突然、身悶えて苦しむフリをしてみせる。
太股や胸を見せびらかすようにしながらな。
俺の様子に気付いた二人の見張りが、なんの警戒心もなく近づいてきた。
そこをルイーザがスリープミストを唱えて眠らせてしまう。
いくら実戦経験のない見習い魔術師でもここらへんは流石だ。
ゴインズが眠った見張りから剣を奪うと、それで二人の喉笛を掻き切った。
そしてもう一本の剣を俺に手渡すと、山麓のほうへと顎をしゃくる。
俺は少し考えると、奴らが目を覚ます前に森の中に隠れることにした。
小屋に備え付けられた暖炉で湯を沸かす。
この小屋は狩人や冒険者、あるいは木こりが骨休めをするために建てられたものだ。
ゴインズがコーンパイプを口から離すと、茶色くなった唾を暖炉の火の中に吐いた。
「にわか雨だといいんだけどな」
小屋の窓から雨を眺めながら、ゴインズがパイプを咥えなおす。
「本降りの雨じゃないかしら」
ルイーザがそう、ゴインズに返す。
「そうなると、今夜はこの小屋で一晩明かすことになるな」
「うん、今夜はもう休んで、明日、又捕まえるしかないわね」
俺は革袋に詰めた葡萄酒を取り出すと、二人に進めた。
三人で酒を回し飲みしながら、明日の予定を話し合う。
「ビッグヒキガエルは夜行性だから、朝だと捕まえにくいだろうな」
「それだったら、もう一度沼地に引き返して、捕まえてこない?
油袋は小屋で取ればいいし」
ルイーザの意見にゴインズが言葉を返す。
「いや、雨の降ってる沼地は水嵩が増えるし、滑りやすくなってるから危ないぞ」
そこで俺がゴインズに続けて
「それにビッグヒキガエルの肉に他のモンスターが小屋に寄ってきたりするかもしれないし、
ここまで運んでくるのも大変だと思うわよ」と答えた。
「言われると確かにそうかもね……しょうがないか……」
ルイーザが残念そうに俯く。だが、狩りに無理は禁物だ。
自分の力量を見誤れば、大抵は命を落とす羽目になるからだ。
それから俺達は床に寝転がると、朝が訪れるまで休憩を取った。
60
休んでいる途中でルイーザが俺の肩を揺すり、声をかけてきた。
「ちょっと、トイレに行きたいんだけど、付き合ってくれない?」
「ええ、いいわよ」
外はまだ雨が降り続けていた。
大粒の雨が革のマントに弾ける。
小屋から少し離れた森の茂みにルイーザが急いで入っていくのを見届けると、俺は木の陰で雨宿りをした。
すると、木々の間にいくつもの人影が動くのが見えた。
どうやら囲まれたらしい。
俺はルイーザに声をかけた。
だが、返事はなかった。
盗賊らしき男が遠目からこちらの様子を伺っていた。
「へへ、上玉が二人、それもとびきり上等な奴だ。今夜はついてるぜ」
人間に転生する時にほとんどの能力を封印したからな。
こういう時、盗賊の気配すらまともに察知できないのが難点だ。
雨に打たれたまま、俺は黙って手を挙げた。
61
俺達は猿轡を噛まされ、後ろ手に縛れた状態で片隅に追いやられていた。
周りには八人ほどの盗賊達が酒盛りをしている。
装備品からして、どこかのゴロツキ傭兵の類のようだ。
仕事に溢れたせいで盗賊へと鞍替えしたのだろう。よくあることだ。
ゴインズが盗賊達の顔を一人ずつ、黙って見ていた。
向こう側では、盗賊共に押さえつけられたルイーザが、二人がかりで襲われていた。
噛まされた猿轡の間からくぐもった悲鳴をあげている。
俺もさっき、盗賊どものボスと思しき男にのしかかられた。
全く、酷い気分だ。
酒臭い息を吐きながら、盗賊の一人が俺の傍らににじり寄って来る。
「こんだけの上玉、見たことがねえや。金持ちに売り飛ばせば当分は遊んで暮らせそうだぜェ」
そういうと、その盗賊が泥と垢で薄汚れた指先で俺の頬を撫でた。
俺は黙って相手の好きにさせていた。
「それにしてもボスだけ楽しむなんてずるいぜ。俺達だって、お前みたいなハクイのを抱きてえよ。
あっちの娘もベッピンだが、あんたはそれよりもそそるぜェェ」
酒で赤く濁った両目を向け、盗賊が俺の胸や尻を無遠慮に掴んでくる。
「それにしても本当に良い女だなァ。むしゃぶりつきたくなるぜ。
所でよ、お前、尻は大丈夫だったか?
なんせ俺達のボスは女の菊のほうも好きだからな、へへ、痔の薬が欲しいなら塗ってやるぜ」
そう言うと下卑た笑みを浮かべ、盗賊が再び仲間の方へと戻っていく。
憤怒の形相を浮かべたゴインズが猿轡を噛み締め、盗賊どもを睨みつける。
俺は暴行された時にこっそりと相手から抜き取ったナイフで、手首を縛っている縄を切っていた。
自分の縄を切ると、ゴインズの横に近づく。
俺はゴインズを横目で見やり、合図を送るとすぐに縄を切りにかかった。
とにかく、この連中からどうやって逃げ出すか考えないといけない。
奴らの隙を伺って、逃げるチャンスを見つけなければ。
62
酔っ払った盗賊の何人かが、地面に敷いたマントの上に寝ている。
ボスはテントの中に引っ込み、こっちもでかいイビキを立てていた。
見張り役はふたりだけだ。
俺達、三人の手は既に自由だった。
ただ、縛られているフリをしているだけだ。
とはいえ、あの二人の見張りをどうにかしないと、逃げ出すことは難しいだろう。
奴らが知らせれば、残りの連中も起き出してくるからだ。
そこで俺は女の武器を使うことにした。
見張りの前で突然、身悶えて苦しむフリをしてみせる。
太股や胸を見せびらかすようにしながらな。
俺の様子に気付いた二人の見張りが、なんの警戒心もなく近づいてきた。
そこをルイーザがスリープミストを唱えて眠らせてしまう。
いくら実戦経験のない見習い魔術師でもここらへんは流石だ。
ゴインズが眠った見張りから剣を奪うと、それで二人の喉笛を掻き切った。
そしてもう一本の剣を俺に手渡すと、山麓のほうへと顎をしゃくる。
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