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R15(前半)
5.セバス、ヤンデレ化して・・・ない?
「あれ、セバスは?」
「え、えっと……忙しそうに消えていったけど……多分?」
「ええ!?多分?どういう事?もう少し話たかったのにな~。どうだった二人きりで話してみて。イケメンでしょう?私の最推しなのっ!杏里も好きになっても良いけど、セバスは誰にも心を開かないってネットでも有名なんだって~。ファンクラブもあるのに」
杏里は紅茶をじっと見つめた。
「そう……」
自分の好きな紅茶も未だに覚えていてくれているなんて。
でも、絶対に駄目。彼が何故ここにいるかは分からないけど、彼への想いは断ち切ったんだから、だから……。
「お嬢様方、そろそろ出発のお時間です」
ドアマンだった男がやってきて、朋美は訝し気な表情をした。
「前島?セバスは?」
「セバス執事長は……体調不良と仰ってまして」
「あら、それは大変ね……大丈夫かしら?」
朋美は心配そうな顔をする。
その横で杏里は首を傾げた。
そんな体調不良そうな印象はなかったし、あの人、もし本当にセバスチャンなら、そんなヤワな男ではないと思うけど……。
「いってらっしゃいませお嬢様方。ご帰邸をお待ちしております」
朋美と執事喫茶を出て、杏里はホッと胸を撫でおろす。
「はあ~、楽しかった!この現実離れの体験を味わえるってのが最高よね」
「まあ……そうなんでしょうね」
「あれ?杏里まだ口調がお嬢様だけどハマったかしら?オホホホホ~」と能天気に階段を駆け上っていった朋美を見て、杏里は溜め息をついた。
「で、どう?イケオジとなら処女を捧げる気になったんじゃない?」
「っ、ちょっと!朋美、こんな人通りの多い所で言わないでって!」
ごめんごめん、と悪気もないように言った朋美と駅まで歩いて、手を振って別れる。
「っじゃ、明日ね、杏里。誕生日プレゼントはまた彼氏ができてからにするわぁ~」
ヒラヒラと手を振って、嵐の様に去っていった朋美を見送って、杏里は帰路につく。
お金もないから、大学の隣に建てられたアパートに一人暮らしなのだ。
なんとなく家に帰る気にならなくて、アパートの傍の公園のブランコに腰を下ろした瞬間。
「アンリエッタお嬢様」
後ろから声が聞こえて、杏里は驚いて立ち上がった。
「ひぃ!!セ、セバス!?ちょっと、なんで此処に!!びっくりさせないで」
心臓が飛び出るかと思った……。と杏里はバクバクと鳴る胸を抑える。
「申し訳ございません、ですが、尾行させて頂きました」
「ちょ、ちょっと待って、セバス。そんな自信たっぷりに言わないで?此処でそれは犯罪よ?わかる?この世界で私が警察に言ったら貴方は捕まるの」
身体を若干のけ反らせながら、多少の冗談を含めそうセバスに突っ込みをいれた瞬間。
彼の顔に闇が見えて、杏里はその感情の抜け落ちたような表情に息を呑む。
「……そんな事、もう良いのです。貴女は私がどんな気持ちでいたか知らないでしょう。一人、あんな風に気持ちを告白されて残された者の気持ちが……」
「……セバス……ごめんなさい」
杏里は顔を俯けた。確かに死ぬ間際に「好き」なんて言われたら、自分だったらその先ずっと思い出してしまうだろう。
それに好きでもなかった人からそんな事を言われたら迷惑だっただろう。と思って。
「私は謝って欲しいわけじゃない!私は……私は、禁じられた魔術に手を出し、命を犠牲にして此処まで来たのですから」
だから、この世界の警察に捕まるなんて、痛くも痒くもない。とセバスは自嘲気味に笑った。
そしてその言葉に杏里は顔をあげる。
「なん……ですって……?禁忌の魔術……に」
世を渡る類の禁忌の魔術に手を出したなんて前の世界で知れたら、極刑は免れないだろう。
だって、それはあまりに強力で、世界の運命を変える可能性すらあるのだから。
「私は、貴方を失った哀しみに耐えきれず。貴女の亡きがらを抱えて魔女と面会した。そこで私の命と引き換えに、貴女が生き返れば良いと思ったのです。ですが、貴女の魂はもう他の場所に行ってしまっていた。
だから、魔女と契約を交わし、私の命と引き換えに貴女を追って転生したのです」
「そ、そんな……何故……」
「そんなのッ!好きな女性が目の前からいなくなったから、に決まっているでしょう!私はお嬢様である貴女に恋してはいけないと分かっていながら、貴女に恋をしていた……。そんな女性を目の前で失い、自分の気持ちを告げる事も出来ず、相手に告白までされて、追いかけない男だと思われては困る!」
セバスが大声を出し、杏里の身体が跳ねる。
それを見たセバスは拳を握りしめた。そして大きく深呼吸をすると、腰を折る。
「申し訳ありません……貴女を見ているとどうにかなりそうだ……。私もこんな中途半端な状態で貴女に近づいた事自体が間違っていたのかもしれません。しっかりと準備を整える必要があるようだ。
今日は一旦、失礼致します」
「セ……」
杏里は彼を引き止めようとして、そしてそれをやめた。
宙に浮いた手を握りしめて、想いを押し殺すように帰宅する。
そしてベッドの上に横になって枕に顔を押し付けた。
「ッ、なんで……なんで、こんな所まで追ってくるの?彼、あんなに変わっちゃって……それも私の所為、よね?もう……諦められたと思っていたのに……でも、まだこんなに彼が好きなんて……」
でも、もう会わない方がいい。だってきっと、お互いにとってよくないもの。
なのに……どうして、もう一度会いたいなんて……思うの……。
そんな思いと共に、杏里は濡れた枕を抱きしめながら瞳をとじた。
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