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第一章 王国、離縁篇
6.離縁してもらえないなら、策をねります
アレクセイの言っていることは正しい、と肯定したリリアーナにアレクセイは暗に諦めたと思ったのだろう。『では、』と話を纏めにかかった彼をリリアーナが遮った。そして二度目の爆弾を投下したのだ。
『では、「では、私をレベロン王国の貴族籍から除籍し平民としたのち、国外追放ではいかがでしょうか?」
「は?」
「はい?」
一瞬の間があいて、クリストファーとアレクセイの二人の声が重なり、口をあけたまま固まる。
こんなシリアスな場面でなければ、吹き出していただろう。美男子、それもレベロン王国の次代の代表とも言える二人が、呆然と口をあけてこちらを見ているのだから。
吹き出さず耐えられただけでも褒めてもらいたいくらいだ。
「この国の公爵令嬢として生まれ、政略結婚で王太子妃となった事は事実ですし、それは義務として変えられない事は分かっております。 ただ、私は現在記憶がない身。 公爵令嬢としてのリリアーナも、自分の、公爵家の親類ですらも覚えていないのです。
まっさらな新しいリリアーナとなった今、夫に愛されず側室を娶られる前提で結婚生活を送るなど到底耐えられることではありません。これは私の正直な気持ちです。
不敬であることも分かっております。私を罰として貴族籍から外し国外追放でもなさって離縁として下さいませ。記憶喪失のため公務が困難でさらに貴族としての義務も果たせないとすれば、罰には十分でしょう。
晴れて王太子殿下は新しい王太子妃としてルリナ嬢と結ばれる、ということで皆が幸せではないですか」
「おまえ、本気で平民となるのか? それほどにこの僕と離縁したいと、」
「はい」
「貴女は最初から全てを失うつもりでいたというのですか···。 なるほど、リリアーナ様は流石ですね。一筋縄ではいかないようです。この件は一旦、わたくし、アレクセイに任せて頂けますでしょうか?
追って処遇等をお知らせ致しますので」
アレクセイは一見諦めたようだったが、リリアーナには時間を稼ぎ、解決策をうまく見つけてくるに違いない、と思えた。一筋縄ではいかないと言っている訳だし、彼はやはり頭のキレる側近ということなのだろう。
この王太子で今後のレベロン王国は大丈夫か凄く心配だったのだけれど、この側近が居れば大丈夫なのかもしれない。
「えぇ、構いません。ですが、早急にご決断頂けたらと思います。私の侍女に聞きましたの。あと半月ほどで公式に私が王太子妃として出席する初めての舞踏会が開かれるのですね。王家主催なのでこの国の貴族はほぼ全員集まると聞きました」
「まさか、貴女はその日に公にされると?!」
「はい。仰るとおりです。この機会を逃すわけには参りませんので。ご返答と処遇の件、お待ちしておりますね」
リリアーナは席を立って、ラナーに付焼刃で習ったカーテシーをして執務室を退出した。
パタンッ━━━━
執務室の扉が閉まったことを確認し、ラナーを連れて少し歩き出す。周りに護衛もいなくなった事を再度確認してから溜息をついた。
「はぁ、」
疲れた···。精神的にとても疲れた。
特にアレクセイには、心の内を見透かされていそうでそれを隠すのに必死になる。
けれど、彼はリリアーナが退出する直前まで完璧な紳士的対応を取ってくれた。
『王太子妃なのだから次からは護衛を付けてください』と注意された後『部屋まで護衛に送らせます』と言われたのだけど、色々とこれからの離縁に向けた戦略も考えたかったため侍女と庭園を散歩したいと言ってご遠慮した。
「リリアーナ様、大丈夫でしたか? アレクセイ様までいらっしゃるとは···お疲れ様でございます」
「ラナー大丈夫よ、でもそうね、少し疲れたけれど。庭園を散策していきましょう。ずっと部屋にいて息が詰まりそうだもの、気分転換にもなるでしょうし」
執務室の外でずっと待機をしていたラナーは、アレクセイも加わった話し合いを気にしていたようだ。
散策したいというリリアーナの後ろに着いてきたので、それを確認したあとリリアーナは熟考しはじめる。
やはり少し足りない······これではまだアレクセイに王太子妃に連れ戻されてしまうだろう。離縁がしっかりと出来るように次なる策を練らなくてはいけない······。
どれ程深く考え込んでいたのか。
リリアーナはラナーの声で現実に引き戻された。
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