【第一章/王国離縁編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

文字の大きさ
25 / 58
第一章 王国、離縁篇

22.舞踏会(離縁)まで4日 - ルドアニア皇国は、優秀である -




「セドリックと繋ぐ。二人も同席せよ」

「「はっ、お心のままに」」


 ヴィクトールがリリアーナの護衛を終え、レベロン王国で拠点としている宿に帰宿した後、直ぐにそう言い放った。
 そして今、ルーカスとリチャードは宿のヴィクトールの個室にいる。


 彼の個室は綺麗に整えられてはいるが、所詮はレベロン王国の中流階級向けの宿だ。
 ルドアニア皇国では最新の魔導具や魔石を使う事により魔力が全くなくとも簡単に生活の基盤は成り立つのだが、王国にそれはまだない。そのため、灯りを点したければ、自分で火魔法を使用し火をつけなくてはならないわけだ。


 皇国の皇帝であるヴィクトールが過ごしていいような場所ではないと断言できる。
 これについて、ルーカスは再三リチャードに進言したのだが、色々と素性が漏れると困るという理由で却下されたのだ。

「リチャード、干渉阻害と探知、感知は忘れずに。それから防御魔法も同時展開せよ」
「はいっ、りょーかいでぇす♪」

 リチャードはピンク色のふわふわした髪を片手でくるくると弄りながら多重に魔法を発動させる。

 普通、何重にも異なる魔法を展開する事は高度な技である。神経をかなり集中させて行うものであり、リチャードだからこそ為せる技といったところだ。


 その間にヴィクトールはセドリックと念話を繋ぎ、リチャードやルーカスにも聞こえるように魔法で拡げていく。いつも簡単に行っている、この念話も魔法としては難しく、使える人間は限られている。
 何時何処でも使用できるのはヴィクトールやセドリック、リチャードのような、無属性持ちの術者アルカナ同士くらいだろう。

 だが、これに関しても皇国には距離の離れた者同士が話すことのできる魔導具があり、ルーカスのように魔力量が少なくても簡単に使用できる。
 ただし、これに関しては貴重な魔導具なので使用できるのは現時点で、騎士団の団長、副団長など国にとって重要な者達だけだ。


「セドリック」
「はい、こちら聞こえております」

「リチャード、外からの干渉はないか?」
「はいっ!ありませ~んっ♪」

「では、今後の動きを決めるぞ」

「はい。ですが、ヴィクトール陛下。先ずは、密輸組織の件、謝罪させていただきたく。貴重な魔導具が流出している事、対処が遅れ申し訳ございませんでした。魔石は必ず、死守致します」


 セドリックがすかさず先の件について謝罪をいれ、一瞬ヴィクトールの声のトーンが下がる。
 しかし、今回の念話の主題はシャルロン公爵家に探りを入れる件である。
 ヴィクトールは直ぐに話の軸をそちらに戻した。


「────── 魔石、自体は別に良いが。何を言いたいかは、分かるな?」
「はっ。皇剣に誓って」

「なら良い。本題に戻れ」

「はい。では、リチャードよろしくお願いします」


 セドリックがリチャードに話を振ったことでヴィクトールは彼に視線を移す。今回の主題であるシャルロン公爵家を探る件は、リチャードが担当したのだろうと推測したからだ。

 王国訪問の第一の目的でもあるリリアーナを妻にするという事に避けては通れないのが、彼女の父親、シャルロン公爵である。
 “娘を貰う”という意味でも、“シャルロン公爵家ごと取り込む”という意味でも、だ。

 故に、舞踏会(リリアーナを手にいれる)より先に、手強いであろうシャルロン公爵を陥落させておく必要があった。


「はいっ。昨夜、影の一人をシャルロン公爵家に送ったんです。そしたら、北の領土から既にレイアードが帰ってきているって。けど、あの二人が一緒に揃う機会はあまりないようでした。ただ······」

「ただ、?」

「明後日が亡き公爵夫人の命日だそうです。その日は、レイアードと公爵のどちらも、夕方には在宅の予定でいるようですっ」

「なるほど。では、明後日に公爵家を訪問した方が良さそうですね。リチャード、報告ありがとうございます」 

「そうだな。この訪問、同行者はリチャードと影一人を考えている」


「······えっ、」

 ヴィクトールの思わぬ発言にルーカスは堪らず声をあげた。


「ルーカス、お前の気持ちは分かる。だが、今回はあまり目立ちたくはない。それに、お前には今後リリアーナの護衛を頼みたいと思っている」


「リリアーナ様の、護衛、ですか?」

「あぁ。王城に潜入し、彼女リリアーナの護衛を頼みたい。今後も継続してもらおうとも考えている。なにより、この間まで潜入していたんだ、お前が適任だろう」


「······承知致しました。護衛の任、謹んで引受けさせて頂きます。 しかし陛下·····今後も継続、とはどういう意味でしょうか?」

「そりゃあ、そのままの意味じゃんっ? リリアーナ様が皇后となったら、その専属護衛になるってことでしょ」

 痺れを切らしたリチャードが横から口を挟む。彼はルーカスを見ることもなく適当にあしらって、ポケットから魔導具を取り出し、弄り始めた。そんな彼を視界に捉え、ルーカスは昨夜の会話を思い出した。


 昨夜、リチャードから聞いた重大な ─────
  “陛下がリリアーナ様に真名マナを名乗った”
 ───── という事実。


 そしてルーカスはヴィクトールをまっすぐ見据え、深く頷いて肯定の意を示した。


 ルドアニア皇国で自分の本名より尊く他人に呼ぶことを許さない真名マナは皇族しか持たない、所謂ミドルネームである。
 国として公式な場では、“ヴィクトール・レイ・ルドアニア”と名乗りはするが、他では滅多にその長い名前を出すことはない。

 ヴィクトールの真名は"レイ"。そしてそれを呼ぶことができるのは現在親類のいないヴィクトールにとっては実質、皇后になる者のみだ。

 ヴィクトールが本気で、リリアーナがもし皇后になれば、その彼女の専属護衛となる事は願ってもない出世である。



「さて、ではリチャード。そろそろ魔導具を配って頂けますか?」

「はあーい。とりあえず、今はヴィクトール様だけ魔力量を隠す魔導具つけてもらってます。で、今から渡すのは転位の指輪。なんかあった時には、これを発動させれば皇国の皇城内の闘技場に飛びますからっ」


 この日のために用意した魔導具をリチャードが手渡していく間に、『ちなみに、』とセドリックは情報を付け足した。


「その指輪はリチャードが魔力を入れて、きちんと位置を固定し魔法が発動する用に作製してくれましたので、失敗することは先ずありません。
 しかし、少しでも魔力を持っている者が使用する際、自分の魔力も少し持っていかれます。転移は元々膨大な魔力量をつかう魔法ですから、特にルーカスは気を付けてくださいね。
 陛下とリチャードは本来必要ないかと思いますが、魔法が使用できなくなった等、緊急時にはそちらをご使用ください」

「ああ」
「りょーかいですっ♪」

「では、皆さん、ご武運をお祈りしています。」


 セドリックとの念話が切れた後、リチャードから受け取った指輪をゆっくりと眺めていたヴィクトールは、それを指に付けてからリチャードに目を向ける。
 そして一言だけ、言葉を発した。


「よくやった、上手く出来ている」
「────────!」

 この時、リチャードは昇天する寸前であった。
 ヴィクトールが、ほんの少し表情を緩め、微笑んでいたからだ。 

『あぁ、なんという僥倖······!僕の、魔力の入った指輪を、陛下が······身に付けて······ッ!』

 指輪が羨ましい。今すぐに指輪に転生してヴィクトール様に身につけてもらいたい······。
 内から湧き上がる感情それを胸の奥にしまい込み、リチャードは笑顔を作る。

「ありがとうございますっ!!」

 そしていつものように、明るい声で返事をするのだ。蓋をしなくていけないから。この劣情に。
感想 0

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中