【第一章/王国離縁編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

文字の大きさ
34 / 58
第一章 王国、離縁篇

29. 舞踏会(離縁)まで2日 - 皇帝陛下は、公爵を尋ねる -


「陛下、完璧キマってますねー」
「・・・」

 変幻魔法の効力はもう無い。今いるのは漆黒の髪に黄金の瞳を持ったヴィクトールと、ピンク色のふわふわした髪に同じ色の瞳のリチャードだ。

 軽口をたたくリチャードに完全無視を決めこんで、ヴィクトールは念話のために片耳をおさえた。

「一応誓約書関連の作成は終わっておりますので、話が纏まり次第申し付けください」
「助かったぞ、セドリック。ではまた後程」
「はっ。ご武運をお祈りしております。」

 セドリックとの念話を切るヴィクトールの目の前には公爵家の頑丈な門が佇んでいた。
 隣にはリチャードが花束を片手に鼻歌を歌いながら駆け寄ってくる。

「リチャード、」
「はーい!防御、感知、探知の無効化ってとこかなぁ?うん、レイアード君のとこの魔力は見慣れてるから大丈夫ですっ♪」

 リチャードは手を前に翳しながら進み、それを追う形でヴィクトールが続く。


「······だが、こうも誰も気付かないものか?
 一応、王国きってのシャルロン公爵家だぞ」

「気配消しすぎてるんですかね?魔道具と違って完全には消えていない筈なんですけど·······気配遮断ちょっと甘くしますねっ。あとは、よっと♪ はーい、これで全部無効化完了しましたっ、行きましょっ」


 ヴィクトールはリチャードをちらっと見る。
 全く疲れている気配はないが、屋敷全体に覆われていた魔力結界を無効化しているのだから、かなりの集中力と魔力を使った筈だ。
 流石白騎士団の団長、というべきか。

「だ、誰だ!!」
「不審者侵入っ!」

 公爵家を覆っていた結界が無効化した途端、公爵家の護衛達が数人血相を変えて走ってくる。そして、ヴィクトールとリチャードの前で足を止めて叫んだ。

「「「制圧しますっ!」」」

 その時、護衛達の後ろからゆっくりとした足取りで出てきた銀髪の青年が、声をはりあげる。

「その必要はない! というかもとよりお前らでは叶う相手ではないよ」

「レ、レイアード様! お下がりください。我々で対処できます! 手前にいる、なよなよした男は魔力量が多そうですが、後ろの細見の男は弱そうです。
 問題ありません!」

「······いや、むしろ。後ろのが本物なんだけどね」

「 ────······おやおや、これはこれは。本日、来客の予定はなかったのですが。思わぬ方が来られたの、ルドアニア皇国皇帝、ヴィクトール陛下」

 レイアードの後ろから同じ銀髪の初老の男性がゆっくりと現れ、そう口にした瞬間、臨戦態勢に入っていた護衛達は息をのんだ。

「まあまあ、こんな外で立ち話もなんです。陛下のことだ、きっと周りには見えない様にうまく配慮して下さっているのかもしれないが。ひとまず邸の中にお入りください。」

 こうしてヴィクトールとリチャードはシャルロン公爵家の中にある客間へと通された。
 侍女や侍従が急な来客にあたふたする事なくしっかり動いているのは、流石は由緒正しき公爵家だ。

 目の前に紅茶が用意され、ヴィクトール、リチャード、レイアード、公爵の四人のみになったところで、公爵が口を開く。

「······して、ヴィクトール陛下。こんな夜分に何用でしょうか。急に来訪されたので驚きました」

「あぁ、すまない。一先ず、リチャード、」

「はっ。こちら、本日公爵夫人の命日とお伺いしましたので」

 リチャードが礼儀正しい完璧な所作で、用意してあった花束を差し出す。
 するとシャルロン公爵はそれを自ら受け取った。


「お心遣い有り難う存じます。妻も喜びましょう」

「それは良かった。それで、本題だが。今日、急遽来訪したのは公爵、貴殿に頼みがあったからだ」

「······なるほど。頼み、ですか。しかし私はレベロン王国の身、ルドアニア皇国皇帝陛下の頼みを叶えられるかは、お約束できませんが」

「あぁ、問題なかろう。約束はせずとも良い。
 ────貴殿の娘、リリアーナ嬢を娶りたいのだ」


「はあァッ?! 「んん"っ。陛下、畏れながら。陛下もご存じではありましょうが、リリアーナはもう既に、我が公爵家の長女ではなく、レベロン王国王太子妃であります」

 リリアーナの名前がでた途端殺気立つレイアードを公爵は目で粛し、遮るようにそう続けた。

「知っている。いや、むしろ、レベロン王国の王太子妃。というべきではないのか?」
「··········ほう、」

「2日後に行われる王家主催の舞踏会。我々も参加する予定なのだが、彼女がいま立たされている境遇を知らないわけではあるまい?」

 ギロッと鋭く光った黄金の瞳を真っすぐに見つめ、公爵は少し間をおいて首を縦に振る。

「ふむ。たしかに知ってはおります。」
「っ、父上!!」

「レーボック子爵の娘が王太子妃の座を狙っていて、もう既に王太子と既成事実を作ったことも。その王太子が離縁を望んでいることも。それに、最近リリアーナ嬢は、在らぬ罪を着せられていると聞く。このタイミングでの舞踏会となると彼女の断罪以外あり得ないだろう?」

 レイアードは苦虫を噛み潰したような顔をして下を向いている。その横に座る公爵は、まだ余裕そうに静かに紅茶を啜った。
 そしてヴィクトールは優雅に脚を組み替えた後、さらに言葉を続ける。

「 ────······まあ、リリアーナ嬢自身が奪爵を望んでいるらしいがな。はたしてそれだけでこの国の王家は納得するのだろうか?」

「公爵家ごと潰す、ですかな······」

「まあ、シャルロン公爵家は騎士団と魔法師団こうしゃくぐんの管理を一任されているのだろう。
 頭の良い奴らならば、国から排除するような愚策はしないだろうが、な。今回は関わっている者が問題のようだ。あり得ないとは言い切れん、」

「で、貴方様は離縁された後のリリアーナを娶りたい、と? 傷物ですが、ご理解は頂けるのですか?」

「あぁ、彼女は優秀だ。それに彼女に傷はない」

「だが、娘は記憶を無くしています。陛下へのメリットは何もないはずですが」

 それでも渋る公爵にヴィクトールは畳み掛けるように皇国への利点を提示した。

「では、これはどうだろうか。我が国への利点メリットは、シャルロン公爵の軍を束ねる統率力だ。今回の国王の采配で公爵がレベロン王国の公爵のままでいるのなら、私とリリアーナの婚姻後、北の公爵領での我が国の騎士団との合同軍事演習を望む」

「ふむ。北の過酷な環境での訓練を取り入れたい、という事ですな?」

 公爵は紅茶の入った陶器をじっと見つめ考え込んでいる。そんな公爵にあと一押だと感じたヴィクトールは王手をかけた。

「そして、もし公爵家が王国から廃されるのであれば、ルドアニア皇国に来い。侯爵位に加えてルドアニア皇国の持つ騎士団全ての指揮権もやろう。」
「ッ!! な、なんだって·······?!」

 レイアードはあまりに衝撃的な言葉に固まる。
 要するに、ルドアニア皇国の最強の軍を統括し指揮する権利が与えられるという事なのだから。

 公爵は顔を上げると大きく頷く。そして立ち上がってヴィクトールの前まで歩いてくると頭を下げた。


「承知致しました。リリアーナを、私の娘を、よろしくお願い致します。あれでも一応、私と亡き妻の可愛い娘でして」

「あぁ、生涯かけて大事にすると誓おう」


 彼は、公爵である前に一人の父親。娘も息子も、路頭に迷わせたくはなかったのが本音だったのである。

 このあと、ヴィクトールはセドリックが作成した誓約書を魔法陣を通して受け取ると、それを以て公爵と誓約を交わした。
 斯うしてヴィクトールのシャルロン公爵を陥落するという重要な任務は成功したのであった。

 そして公爵邸を出る直前、ヴィクトールは自身の抱える重大な問題に気付いた。

 “婚約指輪を用意していない、という大問題に”
感想 0

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中