【第一章/王国離縁編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

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第一章 王国、離縁篇

31. 離縁のための断罪式を、今、始めよう



 舞踏会当日を迎えたリリアーナは、朝から準備を施され一人鏡の前に座っていた。
 遂に離縁という目標が達成されるかもしれないのだ。彼女の表情には不安と期待が入り混じっている。

 今日のドレスは黒と紫を基調に夜の蝶を連想させるような美しいデザイン。胸元、肩、腕と大きく開いたものだが、露出の多い服をあまり好まないレベロン王国のため、開いた部分は全て総レースで施した物であり、露出感はそこまで感じない。

 此処レベロン王国では、黒は“闇”を意味し忌み嫌われる。
 そして“闇”といえばルドアニア皇国である。

 今回はルドアニア皇国の皇帝が舞踏会に参加するため、友好の証としてドレスに黒を取り入れた。
 名目上は王太子妃のお披露目に、リリアーナがそれを着ることで《ルドアニア皇国との友好を国内外に見せつける》ためなのだが·····
 どうせ断罪され、離縁する身だ。

 この際、リリアーナにはどうでも良かった。
 その稚拙なリリアーナの案に、時期宰相アレクセイが乗り気になってくれた。ただそれだけ。

 最近リリアーナの専属護衛としてマルコの代わりに入った“ルカ”という新人護衛もそのドレスを絶賛していたとか。まあ、黒という色が好きな人もいるのだろう。とリリアーナは軽く考えて立ち上がった。

「とりあえず、ラナーもルカも入って」


 鏡の前で最終確認を終えたリリアーナが入室の許可を出せば、二人が部屋に入室してきて、感嘆の声を上げた。


「まあ! 本当にお綺麗です! 二色の混じりあったドレスがリリアーナ様の白銀の御髪と紫色の瞳そしてその美しいお顔を一段と引き立てておりますっ!」
「·······私が最初に見てしまっては、怒られてしまいそうですね」
「ありがとう、ラナー。ふふふっ、ルカ、それは誰にかしら?」

 苦笑いしながらルカに顔を向けると、彼は困ったように笑って首を横に振った。

「いえ、ありとあらゆる男性方に怒られてしまうな、と思いまして。とてもお似合いです」
「そんな事ないわ、怒る方なんていないもの。(シスコンの兄なら怒るかもしれないけれど、)」

そんな会話の中でラナーはリリアーナの黒曜石の埋められた金色の耳飾りを見て微笑んだ。

「あっ、リリアーナ様、その耳飾りはルドルフ様からの贈り物ですねっ! やはり、似合いますね!」

「“新しい門出に”と頂いたものだもの。そうね、でも本当にこのドレスにピッタリだわ。それこそ、ドレスを事前に知っているような位よね」


 そのリリアーナの言葉にルカは一瞬ドキリとする。だが、リリアーナはそんな彼の様子には気が付かずにラナーに向かって話を続けた。


「そういえばラナー? ルドアニア皇国御一行は到着されたのかしら?」

「いえ。二日程前には到着されるご予定だったのですが·····未だ到着されていないようです」

 リリアーナの脳裏にはあたふたするアレクセイの姿が浮かんだ。

「ふふっ·····そう、だから挨拶に呼ばれなかったのね。そういえば、皇国とはどんな国なの?」

「この世界では最強の軍事国家として知られております。闇魔法の使い手である皇帝があまりにも強い事で有名です。単騎で一国を滅ぼせるといわれていますから」

「とてもお強いのね。皇帝陛下は?どんな方なのかしら?」

「歳若くして父帝を自ら葬り皇帝の座を奪った強欲な方、漆黒の髪を持ち"悪魔の落とし子"と呼ばれています。でも、真相はわかりません。現皇帝が即位されてから、皇国はとても豊かになったようですから」

 ラナーのその言葉に、隣で立っていたルカは首を大きく縦に振って肯定の意を示した。

「とても優秀な方なのでしょうね。このドレスを気に入ってくださると良いのだけれど」

「とても美しいですから、大丈夫ですよ」

 不安気な表情を浮かべるリリアーナを和ませるように、ルカは穏やかな声でそう言った。

「まあ王国の貴族達は嫌がるでしょうね········」


 三人が皇国について話をしていると、部屋の扉が叩かれ、入場時間の知らせが届く。リリアーナは気を引き締めて扉へと足を踏み出した。
 勿論、本来有るべきの王太子からのエスコートはない。予定では兄レイアードのエスコートがある筈だったのだが、急用でそれもなくなったのだ。

 その代わり、といってはなんだが、護衛のルカが会場も一緒に付き添ってくれる事になった。エスコートはなくとも、一人で入場するよりは断然心強い。

「リリアーナ様、行きましょうか?」
「ルカ、護衛になったばかりなのに、申し訳無いわね。私のせいで嫌な思いをするかもしれないわ·····」
「いえ、私は大丈夫ですよ」

 新人なのに、王太子妃という身分の人間といても全く緊張している様子のない彼にリリアーナは内心驚いた。だが、それがとても安心感を与えてくれて、リリアーナは会場へと続く扉の前で気を引き締める。

 『大丈夫、何度も想像して、準備はできているわ』
 
 そして会場の中から大きな声が聞こえる。

「─────レベロン王国、王太子妃、リリアーナ・レベロン様ご入場っ!!!」

 リリアーナはそれが自分の名前であることを確認しルカと共に会場へ足を踏み入れた。

 そう、ここからが、本番。
 リリアーナが心底待ち侘びていたこの舞踏会ときが、漸く始まるのだ。


 さあ、離縁のための断罪式を、今、始めよう。
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