【第三章/獣人の国・邪竜と女神編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

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3. ロンファの、おもてなし



「リリアーナ様も、お越し下さりありがとうございます。さあ、お疲れでしょう? お部屋までご案内いたしますね」

 にっこりと微笑んだロンファは、ヴィクトールとリリアーナを誘導するように片手を大きく開いた。

「さあ、こちらへ」

 白と臙脂色の羽織を美しく翻しながら歩き始めたロンファを、リリアーナはじっと見つめる。

「どうした、リリィ?」

「いえ、本当に美しいな、と思いまして」
「え? 僕が、ですか?」

 『照れるな~』とはにかんだロンファを、ヴィクトールがギロリと睨みつける。

 ロンファという人が、とても真面目で思いやりのある次期竜王であることは、既に皇国で会った時から知っていた。だが、その一方で、子供っぽくお茶目で、冗談さえも言う男性だったのか。と、リリアーナは第一印象との違いから少し笑ってしまう。

「ふふっ。ロンファ様はご冗談も仰るのですね?
 失礼致しました。そちらは王族服なのですか?とても美しいなと思いまして」


 リリアーナの屈託のない笑顔に目を奪われていたロンファは、ヴィクトールの鋭い視線を感じ、直ぐに意識を戻した。


「······っああ、これですか?」

「はい。でも、ルイネ様も着られているので、それがドラファルトの?」

「わあ、驚いた。リリアーナ様は本当に記憶力が良いんですね?影の薄いルイネを、皇国で一度会っただけで覚えてしまうなんて!良かったね、ルイネ?」

 ルイネが心底嫌そうにロンファから顔を背けたのを見て、ロンファは笑いながら言葉を続けた。

「リリアーナ様のご推察通り、これらは着物、呉服、とも呼ばれるのです。我が国にたまに生まれる異世界人が昔作ったとされるのですよ。とかの文化が混ざったようなものらしく、大抵の異世界人は皆が口を揃えて”どっちつかず”と言うそうなのです」

 ふふふっと笑いながら、ロンファは竜王宮の内部を進んでいく。

「庭園の様式も、石に囲まれた池があったり、草木や花も全く違ってとても情緒がありますね」

「そう言って頂けると光栄です。あ、ルイネ、護衛の方々はこっちではなかったっけ?」

 ロンファの言葉にルイネは頷いた。

「申し遅れました。私、ロンファ様のをしております、ルイネです。皇国の護衛の方々は、こちらの部屋を用意させて頂きました。
 皇帝陛下の部屋はこの先ですので、護衛もしやすいかと思います」

 ルイネの言葉に、ジョシュア、シャルロッテ、ロキの三人は頷いてヴィクトールの指示を待つ。

「では三人には後で念話をする。それまで待て」

「「「はっ、お心のままに」」」


「大丈夫そうかな?じゃあ、行きましょうか。お二人の部屋はあそこです」


 宮の一角、一際大きな扉の前で立ち止まり、ルイネが扉を押し開ければ、美しい内装が広がりリリアーナは息を呑む。
 一面が大きく開く様になっている窓からは、大きな池が見えて、その池に浮かぶ色とりどりの草花に目が釘付けになった。


「っわぁ、素晴らしい、ですね······」

「気に入って頂けて、安心しました」

 室内の内装、扉、浴室、寝台、全てが皇国のものとは違い、リリアーナは瞳を輝かせる。

「本当に、独自の文化なのですね!仰っていた異世界からの方々は多くおられるのですか?」

「いや、同時期に複数は来ないのです。だから、今いるのは一人だけ。まあ、けれど、彼はただ遊んでいるだけの男なので全く役には立ちませんけどね」

「まぁ、その方にもお話伺ってみたいくらいです。本当にこんなに素敵な部屋を御用意下さりありがとうございます」

 楽しそうな様子で微笑んだ彼女を見て、ロンファは異世界人の弟で第二王子の竜二を思い出した。
 あんな性に奔放でだらしのないヤツを、リリアーナに合わせる事が出来るわけがない。
 彼は一瞬歪めた表情を直ぐにいつもの柔らかい笑顔に戻すと、ルイネを振り返った。


「さあ、ルイネ、説明を」


「はい。ルドアニア皇国、皇帝陛下、並びに皇后陛下。改めまして、遠い道のりを御足労頂きまして有難うございました。
 式典は予定通り、二日後です。事前にお伝えしたように、王族の来賓はお二方だけになります。それと、式典での御召し物ですが。ヴィクトール陛下用のドラファルト式の王族服は明日、この竜王宮内で準備ができております。
 ただ······女性用は”呉服店”に行かなくてはならず、明日、仕立てをして頂きたく思います」

「仕立て?今からで間に合うのか?」

「今回は、感謝の気持ちといたしまして、既に何着かこちらでご用意させて頂きましたので、ほんの手直し程度になるかと思います」

「ほう?」

「明日、呉服店を貸し切りにしておきましたので、リリアーナ様にお店へ行って頂く事は可能でしょうか?城下町の散策も兼ねる事ができるかと思いまして」

 少し考え込んだヴィクトールは顔を上げると首を縦に振った。

「そうだな、では、リリアーナ。明日はロキと共に呉服店に行くといい。ロキがいれば、散策もしやすいだろう。ロンファ、獣人化できるような香か何かはあるか?媚薬ではないもので頼む」

「ありますよ。用意しますね。確かに城下町散策であれば、人間として行くよりも獣人としての方が良いかもしれないですね。何人分用意しますか?」

「リリアーナの分だけで大丈夫だ」


 今回護衛としては、ロキ、シャルロッテ、ジョシュアの三人しか連れてきていない。影はいつも通り数人つけているが、それでもかなり少ないと言えるだろう。
 今回のドラファルト訪問には、第三王子バロンに売られた喧嘩を買いに来た、という裏の目的もあるのだ。ロキを殺しかけたバロンの事だ、きっとどこかのタイミングで仕掛けてくると予想出来る。


「では、また後ほど晩餐の際にお渡ししますね!」

 
 ロンファとルイネが部屋から退出していった後、ヴィクトールは魔法を発動し部屋に防御魔法や防音魔法をかけていく。そして、天井を見渡し、影の位置を確認した。

 幸運な事に、もうすぐ竜王となるロンファはとても友好的である。だが、本当の敵はどこに潜んでいるか分からないのだ。 
 敵国にいる事には何ら変わりない、とヴィクトールは気を引き締めた。

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