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18. 欲情と嫉妬の渦、四阿※
翌日、ヴィクトールとリリアーナは本殿へ向かうため、竜王宮の廊下を歩いていた。
「リリィ、貴女は庭園かどこかで待って居られるか?ロキを供に置いておく。何かあれば守ってくれるだろう」
「はい······」
今日は、新竜王となったロンファからヴィクトールに今後の国との繋がりに関する会合を打診されていたのだ。
リリアーナとは離れたくはないが、国同士の汚い交渉の場に彼女を連れて行くわけにはいかない。とヴィクトールは彼女を見て、その少しの変化に首を傾げた。
「······どうした?」
「······え、いえ?なんでもっ」
リリアーナはヴィクトールに見つめられ、びくりと肩を震わせる。
『昨日ずっとヴィクトールに抱かれ続けており、身体が朝から疼いて』などとは言える筈もない。
魔力の放出も大分制御できるようになり、あまりに感情が昂っている時を除き、治癒魔法の強弱も上手くなってきた。
要するに、リリアーナも自身に治癒魔法を同時に施せるようになったため、全く疲れていないのだ。
「リリィ、もしや、発情してるのか?」
「っ!その言い方は、おやめくださいとっ!」
リリアーナは白いふさふさの尻尾をぶんぶんと振った。竜王宮には純粋な人族は皇国の者以外いない。
あまり目立つのも良くないと、ヴィクトールは獣化の香で常にリリアーナを白狼にしていた。もとい、彼のお気に入りの姿なのだろうが······。
「なるほど······、だが」
ヴィクトールは辺りを見渡した。
ロンファに聞く限り、ドラファルトでは雄の言う事は絶対であり、抱きたいときにいつでもどこでも抱けると言っていた。
そう心の中で考えたヴィクトールは、彼女の腕を掴むとロキを振り返る。
「ロキ、ここで見張りを頼む。誰が来ても絶対に通すな」
「······はっ、おこころのままに······」
ロキにはなんとなく兄ヴィクトールの考えている事が分かった。
渋々了承し、ロキは目の前、池の真ん中にまで延びている開放的な外廊下を見つめる。そしてヴィクトールは廊下の先、池の真ん中に佇む四阿へと彼女を連れて行った。
「ヴィ、ヴィクトールさま?!ロンファ様との会合に、遅れてしまいますよ」
「ああ、あんなのは待たせておけば良い」
新竜王を ”あんなの” と言い放って、ヴィクトールは彼女を前に抱きかかえて腰を下ろした。
「それで、そんなに発情して、欲求不満なのか?」
「ッ!そういうわけではっ······」
“ない”、と言おうとして、ヴィクトールの手が急に蜜口に触れ、彼女は腰を浮かす。
「ひゃんっ!!」
そう、すでに蜜が滴っている、だから蜜口なのだ。
「ほう?こんなに、蜜があふれているのに?」
「いっふぁ、んんんっうむぅ」
リリアーナの顔が羞恥に赤く染まり、何かを言いかける前にヴィクトールはその口を唇で塞いだ。
ねっとりと濃厚な口づけに、頭が酸欠になりぼうっとする。同時にくちゅくちゅと蜜壺に指を抜き挿しされてリリアーナは脱力した。
もう、挿れて欲しいなんて······。
「どうした?もう欲しいのか?貪欲だ、なあ?」
「ヴィクトールさま、いじわる······ですね」
リリアーナは彼の着物の上から手を這わせると、そっと熱塊を握りしめた。あまりに唐突なその行為に、ヴィクトールは目を見開く。
「ヴィクトール様の、熱いですね······。硬くて、熱い」
彼女は、着物の合わせの中に手を滑り込ませると、彼の既にそそり勃った男根を優しく取り出した。
ヴィクトールの上に跨ったままのリリアーナは膝をついて腰を浮かし、その先端を自分の蜜口に触れさせると愛液を塗りつけるかのように煽情的に擦り付ける。
「······っ、」
彼女の濡れそぼった蜜壺に入る事はないそのじれったい行為と光景に、ヴィクトールは息を呑んだ。
そんな彼を見つめ、リリアーナは熱塊を手で握ると、見せつけるように上下に扱き始める。
「っ、なにを······、」
彼女の愛液に濡れた自分のモノがその快感を拾いながら今か今かと挿入の時を待っている。
それは狂暴なその見た目からは考えられない程、美しい露を先端から出していた。
「ヴィクトール様、口でお慰めしても良いですか······?」
その質問にヴィクトールの思考が停止し、言葉を絞り出そうとした瞬間、宮の方でバタバタと騒がしい音が聞こえた。
咄嗟にそちらに目をやれば、威張り散らしながら肩で風を切って此方に向かってくる王弟バロンがいて、ヴィクトールは溜息をつく。
「はあ、こんな時に······面倒なのがきたな」
バロンと側付きの金髪の竜人、それを追うようにロキが四阿にやってくると、その二人の光景を見て少し頬を染め、俯いた。
「、ッ!!番の匂いがしてきてみれば、竜王宮の四阿で交わいなどとっ!」
「だが、私の妻が発情していた。それを慰めるのは夫である私の義務だ。それにお前の番ではない」
ヴィクトールは自分の男根を握るリリアーナの手を導くようにして蜜口へあてると、一気にそれを押し込んだ。
「っふあぁ、あふぅッ!」
「ああ、声を抑える貴女も可愛いな。それに周りに見られていると興奮するのだろう?」
それを見ていたバロンが顔を歪める。
彼にとっては、リリアーナは彼の番。皇国の皇帝に娶られた事も屈辱的だが、目の前で彼女を犯されるなど到底耐えられる事ではなかった。
「······ヴォル、いまならいけるか?」
バロンは隣に立つヴォルに小声で話しかける。
「いえ、主よ。皇帝は危険です。それに後ろには殺したはずの犬もいる。私が皇帝に手を出した瞬間に、あの犬が貴方を殺すでしょう、」
淡々とした彼の分析にバロンは悔しさから両手を強く握りしめた。
爪が皮膚に食い込み、彼の手から血が滴り落ちる。
「力があれば良いのに······、僕が弱いから······ッ!」
「ッあぁァん!だめだめぇッ、ヴィクトールさまぁ」
───煩い、うるさい、ウルサイ!
ぼくの番なのに何故。
なぜ、そんな男のなまえをよぶんだ。
なぜ······他の男のものになった!
ボクの名はバロンだ!その美しい唇から呼ぶ名はバロンであるべきなのに、
ボクの、ボクのなまえを······!
我の名を······つがいよ、我を愛せよ。
「ッうわあぁぁァアアアア!!」
バロンは頭の中の混乱に耐えきれずに叫び声を上げて走り出した。それを隣にいたヴォルが慌てて追いかけていく。
ロキはすれ違いざまに鋭い目つきを向けられ、ぞくりと身体が粟立つのを感じた。
その一瞬でそこまで感じる程の殺気を放たれたのだ。
「ヴォル、とかいう名前だったよな」
なんで死んでいないのか未だ解せないと言った表情だったな、と思って顔を歪める。
そして目の前、走り去った竜人達を全く気にしていない二人をみた。四阿の椅子で向かい合わせに抱き合って、見つめ合っている二人だ。
惚けるような顔で快楽に喘ぎヴィクトールを見つめるリリアーナと、愛しの妻を喜悦の表情で見上げるヴィクトール。
二人は相思相愛で、獣人でいえばきっとこれが”つがい”だ。そして兄のヴィクトールは彼女を独占し絶対に離さないだろう。
リリアーナに懸想する男は何人も知っているが、その願いが叶う事はあるのだろうか?
そう思って、ロキは目を閉じた。
ないだろうな。ずっと生き殺しのように傍で彼女を見続けるだけに決まっている。こうやって見せつけられて、手に入れられないのは分かっていても、想ってしまうんだから愚かなものだ。
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