【第三章/獣人の国・邪竜と女神編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

文字の大きさ
32 / 56

29. 邪竜を前に、二人は



 ロキとジョシュアは、ヴォルとバロンが小さな祠の中に入っていくのを確認した。

「ジョシュア、奴等入っていった。時間を計ってくれるか?長く留まる様なら、多分あそこが目的地に違いない」
「ハイ!」
「とりあえず、少し近づこう」

 二人は山を登り、少し近くまで行くと、草木の生い茂る大きな岩の影に身を潜める。

「ロキさんっ、もうかなり時間が経過してます。あの祠の中に何かがあるか。それとも、何処かに繋がっているかじゃないっすか?」
「うん、そうだな。ちょっと近づこう。ここからだと見えないな」

 ロキはジョシュアと共に祠の入り口に少しだけ近づく。
 隣で動こうとしたジョシュアを片手で制すると、耳をピクピクと動かした。
 少し風魔法を使用してやれば、人間より遥かに敏感な狼の耳を持つロキの元に、祠の中の音が届けられる。

「あれは、洞窟のようになっているんだな?」
「中に抜け道があるとか、ではないんすか?」
「ああ。違うみたいだ。それに·····おかしいな。三人·····いるのか?」

「三人、っすか?」
「·····神?邪竜?·····何の話を、しているんだ?」

 ロキはジョシュアに向き直ると、徐に手を差し出す。

「ジョシュア、念話のための魔道具を貸してくれ」

 ジョシュアの魔道具を奪うと、ロキは慣れた手つきで魔力調整をしていった。
 ジョシュアには魔法の適性がない。そのために皇帝ヴィクトールから与えられている念話の通じる魔道具を携帯しているのだ。ロキは、自分の魔力波長との親和性を最大限まで高め、ジョシュアに返した。

「嫌な予感がする。俺が近くまで行って中の様子を探るから。情報は俺の聞こえるものはお前にも聞こえるようになっている筈だ。中にはあの金髪もいるから、作戦通りに。もしバレたら、俺は奴と対峙する。その時は·····バロンを任せたぞ」
「分かりました!」
「最悪の場合は撤退を優先だぞ、死ぬなら情報を持ってヴィクトール様に渡すのが優先だ」
「ハイっ!」

 ロキはジョシュアをそこに一人残し、祠の入り口まで近付いた。
 そして闇魔法を使い壁に溶け込む。
 中の様子を伺って·····あまりの異様な光景にロキは息を呑んだ。

『ッ·····!』

 その祠の真ん中にある祭壇の前には跪いたバロン。隣にはヴォルが立っている。
 二人の目線の先、壁の中には、描かれた大きな竜がまるで生きているかのように蠢いていた。

『なんだ、あれは·····壁の絵が動いて·····いる、だと?』

 そしてバロンとその動く壁画が会話を始める。ロキは集中してその情報を漏らさない様に聞き取る事に集中した。

「その祭壇の下の魔法陣に手を翳し、魔力を通すと良い」
を飲むのだ。そして感情を高ぶらせ、魔力をこの壁にぶつけるのだ。後はワレに任せよ」

·····?バロンが持っているのは·····水晶(クリスタル)?』

「約束して欲しい、これで力を得れば、皇帝を倒しリリアーナを奪い返す事ができると。ボクとボクの番。リリアーナの二人、永遠に共にできるんだな?」

『水晶を飲んで、力を得る·····?兄上を倒して、リリアを奪う、だと?』

 バロンの言葉を聞き、ロキの脳は早速、警笛を鳴らしていた。

『不味いな。何か良くない事が起きる気がする』

「ああ、小僧の番、リリアーナは永遠にお前と共に生き続ける」

 その邪竜の言葉に、バロンが躊躇することなく水晶を飲み込み、ロキは目を見張る。そしてそのまま床に倒れ込んだバロンの様子を注意深く観察した。

「ッ·····うう!っぐ·····アア!熱いッ」

『これは·····!何が起きているっていうんだ!?』

 ロキは、胸を押さえながら床を転げ回るバロンを見て背筋が凍った。バロンの身体がビクビクと痙攣し、明らかに普通ではなかったからだ。

「ああっ·····リリアーナの·····ボクの美しいリリアーナが、·····アイツもか、アイツも·····殺してやる、みんな·····」

 バロンがふらふらと立ち上がりながら妄想を呟くような声が聞こえ、ロキは異様な状況に、これ以上の静観は危険、と判断を下す。そして、ここから撤退する準備を整えた。

 だが、直後、壁画の中の竜の地を這うような怒りの声が上がり、ロキは咄嗟に身体を動かし祠から飛び出した。

 それは半獣人族として、動物の持つ、本能だったのかもしれない。
 一刻も早くこの状況を止めなければいけないと·····最悪、逃げなければいけないと、そう思ったのだ。

「小僧ォ!それはお前の見るものではない。勘違いをするな、ワレは小僧に力を授けるだけ!早くこちらに来て魔力を注げ。壁からワレを解放せよ!!」

 竜の唸り声が轟き、祠の内部の空気が振動する。
 そんな中、飛ぶように祠から出ていくロキをヴォルが振り返った。そして彼がその表情を歪め叫ぶ前に、ロキは直ぐにジョシュアに指示を出す。
 今までの内容は一方的に聞こえている筈だが、要点を端的に伝え、獣人形態が自由に取れるようになるポーションの瓶を開けると一気に飲み干した。

 出来るだけ遠くまでヴォルを引き付けなければ·····。
 今度こそこの手であの金髪の竜人を仕留めてみせる!
 その一心でロキは山を滑るように駆け降りた。


 一方、ジョシュアはロキが祠から飛び出して来たのを目で捉え、その後を金髪の竜人が追っていくのを見届ける。
 二人が山を下りきった事を目視で確認してから、祠の入り口に降り立って中を覗き込み·····唖然とした。何かの勘違いか、あるいは夢でも見ているのではないだろうか、と目を何度も擦る。

 なにせ、そこには壁に手を翳すバロンと、壁から顔だけ突き出した巨大な禍々しい赤紫色の竜がいたのだから。
感想 3

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。