【第三章/獣人の国・邪竜と女神編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

文字の大きさ
34 / 56

31. ロキ、因縁の相手



 ロキは山の麓まで降りると、出来るだけ遠くまで跳躍しながら後ろの様子を振り返る。

「ちっ、」

 ヴォルの金髪がすぐ後ろまでついて来ていて、ロキはこれ以上距離を離す事は不可能だと判断した。

「この犬ガ!まだ生きているトハ、しぶとい奴ダ」
「っふ、竜人っていうのは本当に速いな、」

 ヴォルが鉤爪を出しながら高速で飛んでくるのを視界の端に捉え、ロキは腰に付けていた武器を取り出す。そして、ヴォルの鉤爪を受け止めた。

 キィィンッ、と鋭い金属音が響く。
 止められた右の鉤爪を一瞥したヴォルが、すぐに左腕を振りかざした。

 だが、これは想定済み。だから、この武器、”サイ”を選んできたのだから。
 ロキは、もう片方の手に握られたサイで追加攻撃を受け止めると、回転させながら鉤爪を躱し払いのけた。

 一旦距離を取り、立て直しを図ろうと、ヴォルが飛び退こうとするのを確認し、ロキは自分の武器サイを投げつける。

 ロキの投げたサイは僅かに黒い靄を纏いながら、切先をヴォルの左腕に掠める。皮膚の表面を斬り付けて、浅い部分に傷を作り血が流れ落ちた。
 そして飛んで行った彼の武器は、遠く地面に落下する。

「フッ、馬鹿メ。序盤から武器を失うなど、戦士失格ヨ!」

 ヴォルは冷笑を浮かべながら、再び地を蹴ると翼を出した。翼を駆使し、縦横無尽にロキの周りを飛びながら攻撃を仕掛けるヴォル。
 対してロキは、狼の特性を利用し、細かな動きで攻撃を躱しながら防御に転じた。獣人としての能力を向上させるポーションも飲んでおいて良かった。とロキはヴォルを見据える。

「オマエ、武器一つでオレに敵うト?本当に不敬な奴だナ」
「でも、現にりあえてるだろう?犬如き相手に致命傷を与えられないのが、そんなに悔しいのか?」

 自分の手に残された、たった一つの武器サイを握りしめて、ロキは笑う。

 サイは通常、二本一組として使用され、左右の手にそれぞれ持って扱うタイプの武器だ。先端は三つ又になっており、攻撃というよりも防御に適している。
 特に、ヴォルのような両手の鉤爪で攻撃してくる相手には、防御しやすい武器。
 そして、そんな防御に特化した武器を既に一つ失った自分ロキは圧倒的に不利だろう。

 だが、それも、”ロキが闇魔法の使い手でなければ”だ。

「オマエ、犬の分際で本当に気に障ル。以前、完璧に仕留めただろウ!何故まだ生きていル!」
「それを君に教えてあげる必要はないだろう?・・・っと、危ない、」

 不意を打つように腕を振りかざしてきたヴォルの鉤爪を受け止め、クルクルと回しながら流し受けをしつつ、距離を取る。この地道な攻防戦の繰り返し。
 そう、もう少し。もう少しだけ、時間を稼げればいいんだ・・・。

 ロキはヴォルの腕を見た。うっすらと、だが確実に、どす黒い靄が切り傷を覆い皮膚の中に浸食しているのが見えて口元を緩める。

「何をニヤニヤとしていル、気持ちが悪いゾ!」

 ヴォルが腕を振り上げ・・・その違和感に目を見張ったのが見えて、ロキは笑った。

「っふははは、気持ち悪いのはお前の腕だろ?!感覚も、もう無いんじゃないのか?」
「ッ!何ヲ・・・!」

 ロキのサイは勿論、普通のサイではない。
 皇国の魔道具研究所が作成した、彼の闇魔法が付与できる特別な物だ。ロキが皇国にてヴォルに殺られ、致命傷を負った翌日から研究所が総力を挙げて開発していた魔道具の一つである。

 刺し傷は勿論の事、浅い斬り傷でさえもそこから闇魔法による壊死が進み、最終的には全身に広がるのだから。
 ヴォルはその黒ずんで腐り始めた自分の腕を見ると、躊躇を一切せずにソレを根本から斬り落とした。

「ッう、ぐッ・・・!」
「ふーん、躊躇なく左腕を捨てるなんて凄く潔いんだな。ま、その壊死はそうでもしないと命を落とすし?賢明な判断だ。さすがさすが!」

 ロキは手をパチパチと叩きながら嘲笑を浮かべる。

 そんなロキを見て、ヴォルは腕から止め処なく流れる血を服で縛り止血すると、ロキに向かって怒りのままに突撃してきた。出血量も考慮して、短時間でトドメを刺しに来ているに違いない。

 片腕が無くなった事に加えて、ロキのサイの能力にも気付いた事で、ヴォルの攻撃力は圧倒的に低くなった。とはいえ、彼は竜人。スタミナも速さも桁違いだ。
 だから、ロキもこの戦いを早く終わらせる事に集中する事にした。

 ロキのサイがヴォルの鉤爪を真正面から受け止めて、ガキィィンッ、と鈍い金属音が響き火花が散る。

 ヴォルが不意に繰り出した蹴りを片手で止め、ロキは身体を回転させる。彼の背後に周りこみサイを翳したロキの殺気に気付いたヴォルが、ロキの腕を掴んで捻り上げる。

 その瞬間を見計らっていたように、ロキは武器を持っていない手を広げた。


「【武器回帰リターンウェポン】」


 彼の詠唱と共に、ロキの掌に描かれた紋様が光る。その紋様に吸い寄せられるように帰還したのは、彼が先程投げて失った、もう一つのサイだ。
 ロキはそれをヴォルの心臓に思い切り突き挿すと、闇魔法を最大限まで放出した。

 彼の闇魔法は一瞬でヴォルの心臓を壊死させ、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
 ロキはヴォルの身体からサイを引き抜くと、その新しい武器を見つめた。

「本当に凄いものを開発するよな・・・魔道具研はさ。怖い怖い」

 序盤でサイを投げたのも、隙を見せる為。
 掌に刻まれた漆黒の紋様は、サイをいつでも瞬時に手元に戻す為の魔道具と自分を繋ぐ誓約紋だ。

「・・・さて、ジョシュアはどうなっただろう?」

 そう呟いた直後、ジョシュアの所持している魔道具が竜王宮に転移したのを感知し、ロキは顔を歪める。

「嫌な予感がするな」

 ロキは直ぐにヴォルの死体を抱えると、瞬時にヴィクトールの元へ転移を行った。

感想 3

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

王太子に「戦友としか思えない」と言われたので、婚約を解消しました

明衣令央
恋愛
婚約者である王太子ヘンリーから「君のことは戦友としか思えない」と告げられた、公爵令嬢アリスティア。 十年以上の王妃教育を積んできた彼女は、静かに婚約解消を受け入れる。 一年後、幸せな結婚を迎えた彼女にとって、ヘンリーのその後は――もうどうでもいいことだった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?