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13. その心は、誰のもの
衝撃的な結末になります・・・。
一応フォロー致しますと、それほどまでに愛しているのだと思います。愛はたまに人を狂わせますので。フォローです。嫌いにならないであげて下さい。どうぞ!
*****************************
”皇妃候補実習”という言葉でリリアーナの心を黒い闇が覆い尽くし、彼女が心を殺しながらも顔には感情のない笑顔を張り付けて立ち尽くしていた時。
マリアは内心慌てていた。
彼女が従兄弟であるベントナー公爵家マルクスからの推薦で皇帝ヴィクトールにこの皇城に呼ばれた事は事実である。
だが、それは”皇妃候補実習”などという物のためではない。
彼女が言った事は周りの令嬢達の勢いに乗せられてしまったものだったとはいえ、嘘であった。
彼女がこの皇城にいる本当の理由は、皇帝の婚儀に参加する”ドラファルト”の国王一行へと念のために用意された通訳、という枠である。
未来の皇后に向かってこんな嘘をついたと露見すればかなり不味いだろう。
そう頭では分かっていても彼女の小さなプライドが邪魔をして、それを正すことができなかった。
「・・・リリアーナ様の婚儀が終わればきっと直ぐに後宮で顔を合わせますわッ、」
そしてその言葉に、リリアーナの思考は底なしの沼に脚を取られているかのように沈んでいった。
光すら見えない真っ暗な思考の沼に。
別に、自分だって後宮に居たくているわけではない。 ヴィクトールがそこに居るように決めたから。
だから。
だから────、?
彼が彼女を皇城に呼んだから。
彼が彼女を候補者に選んだから。
彼が彼女を側室に決めるから。
そうやって自分は彼の言いなりになって、彼の隣にただの飾りの人形の様に座って居ればいいと?
そう思った時、突然、隣にいたセシルがリリアーナの手を強く握りしめた。
その瞬間、リリアーナを支配していたどす黒い感情が嘘のように消え去り、沼に埋もれていたはずの思考も清明となって彼女はセシルをじっと見つめる。
「······っ、申し訳、ありません。 でも、魔力が······」
「いえ、貴女は本当にすごいのね。 ありがとう。」
リリアーナはセシルの手を握ったまま、令嬢達に向き直って綺麗なカーテシーを取った。
「では、皆様、お話が盛り上がっている所大変申し訳ないのですが、私達は失礼させて頂きますわね。 マリア嬢、実習頑張って下さいませ。 後宮でお待ちしておりますわね」
リリアーナのあのふわっとして儚く弱弱しそうな見た目なのに芯のある強気な性格が気に入らない。
まだ皇后になったわけでもないのに、陛下の寵愛を一身に受けている事や、揺るがないその自信も、全て。
マリアは強く拳を握りしめながら去り行く二人をじっと見つめていた。
セシルの手を握ったままリリアーナはいつものように微笑んで歩いていく。 そして何事もなかったかのようにセシルを見て目を輝かせた。
「セシュは他人の魔力の揺らぎも分かるのね? 本当にすごいわ」
「いえ、私にはこれしかできなくて······。 リリアーナ様も凄いです。 っ、強くてかっこいい、」
「私は強くはないわ······ 「リリアーナ、」」
ふと後ろから馴染みのあるテノールの声がして振り向くと、ヴィクトールが宰相セドリックと共にゆっくりと歩きながら近付いてきた。
セドリックの表情は以前とは異なりすっきりとしており、もう憂いはないようだ。
この様子であれば、もう間違った選択などしないだろう。 そう考えてリリアーナは安心する。
セドリックがセシルを大切に抱きかかえて、転移して帰宅するのをヴィクトールと見送った後、後宮へと歩き出したリリアーナをヴィクトールは止めた。
「リリアーナ、助かった。 皇国の貴族に獣人族はいないからな。 貴女が力になってあげれば彼女も喜ぶだろう。」
「いえ、私は彼女の友人ですので。 彼女には幸せになって欲しいと思っているだけです。」
「貴女も幸せになって、二人で友人として仲良くすればよいだろう。 まあ彼女はこれから数日蜜月期間に入るし、貴女も儀式で忙しくなるから。 落ち着いたら時間を取ってはどうだろうか?」
「落ち着いたら・・・? それで、 「それで、」」
「ああ、遮ってしまったな。 貴女から言うと良い」
「いえ、ヴィクトール様からどうぞ」
「ああ。 昨日、貴女の『慣らし五夜』の担当者が漸く決まった。 相手は─── 「······っ、もう、そんなのどうでも良いです。 相手が誰かなんて、そんなの今は聞きたくない、」」
「───······リリィ?」
「『慣らし五夜』、後宮、側室、もううんざりです」
一言口にしてしまえば、不満というのは湧き出るように口から出てくるものだ。
セシルの居なくなった今、いまだ魔力は安定しているとはいえ、彼女の心に巣喰らった闇からは孤独や辛さが相まって、堰き止められていた川の氾濫の様に勢いよく口から溢れていく。
先程、マリア達に煽られたのもあってか、リリアーナの歯止めはほぼ効いていなかった。
「貴方は、所詮誰でもいいのかもしれませんが。
私はちがうっ・・・。 貴方は私がいなくても、、他の女性と閨を共にしてしまうのでしょうね。
でも、『慣らし五夜』で私が他の男性方に心を奪われてしまったら、どうするのですか? そうなればこの気持ちが少しは貴方にも──────、っゔ」
リリアーナは俯いていたため、終始ヴィクトールの表情を見ていなかった。
言葉を最後まで言い終わる前に、ドンッと強い衝撃が背中に響き、顔をあげれば怒りに顔を歪めたヴィクトールが自分の肩を壁に押しつけているのが見えて目を見張る。
「それは赦さぬ」
グッと力が込められて、リリアーナは痛みに顔を顰め、押し退けようと両手で彼の胸板を押した。
だが相手は皇帝ヴィクトールだ。 勿論、ぴくりともしない。
「っ、ちょっ······と、」
「俺が、貴女に、まだ手を出せないからと良い気になっているのだろうが────、」
ヴィクトールはその彼女の両手を一纏めにして掴み、上で固定するとふっと冷笑する。
「─────お前はもう俺のものだ。」
誰にも渡さないし、究極な話、お前が他の誰かを好きになったとしてもその願いは叶えられない。
と、ヴィクトールは言葉を続けた。
「······っ、どうして、貴方はっ······あなたには自由が許されて、私はなにも出来ないなんてっ······、」
「皇帝の地位に居るのだ。 俺の欲しいものは手に入れる。 それだけだ。 お前は何が気に入らない?」
「そういうっ、ところ。 そうやって、女性を誑かすところも······とても、いや。 離してっ、、」
「だが、お前もすぐに俺に惚れただろう」
「ほんとうに、いたいっ······のですっ! 離してください、っ、ヴィクトール様なんて、だいっきらい!! ······っ、」
ヴィクトールの手が急に放され、リリアーナは重力に誘われるようにペタリと地面に座り込んだ。
そして、刹那、頭上から聞こえた低く唸るようなその声に身体が竦み小刻みに震える。
「───────いま、、なんと?
俺のことが、嫌い、だと······。 そう、言ったのか?」
ヴィクトールは地面に座り込んだまま身体を震わせるリリアーナの前に屈み込むと顎を乱暴に掴んだ。
「赦さぬ。 お前が俺から離れるのは絶対に、だ」
「······ぜったい、など、、 「まだ拒絶するのか?この私の前では絶対、が存在する!」」
ヴィクトールは彼女の瞳を見て魔眼を発動した。
彼女の心を『魔眼』で【支配】して繋ぎ止めるなど、間違っている。 そう分かってはいるが、この際、背に腹は代えられない。
彼女の心が離れるのなら、支配すればいいのだ。
「【支配】リリアーナ、お前は俺だけを見て永遠に愛すれば良い。 それは今後、不変であると誓え、」
リリアーナはその真っ赤な瞳を初めて見た。
いや、どこかで一度見たかもしれないが、そんなことは今更どうでもいい。 いつもの黄金ではない、真っ赤な鮮血が流れるような深紅の瞳を呆然と見つめる。
そしてヴィクトールは魂の抜け落ちたような表情をした彼女の顎から手を放し立ち上がった。
未だに地面を見つめたま座り込んでいる彼女を見て、魔眼を使用した自己嫌悪に陥りシャルロッテかメイドを呼ぼうと一歩を踏み出した、その時。
小さく呟くリリアーナの声がして耳を疑って立ち止まる。
「······最低、、だわ。 恋愛この感情まであなたに指図される気はない。 人の心なんて、不変ではないのだから······、」
リリアーナはそう言ってヴィクトールに凍て付く氷のような冷え切った眼差しを向けた。
そう、【支配】の魔眼が、効いていなかったのだ。
一応フォロー致しますと、それほどまでに愛しているのだと思います。愛はたまに人を狂わせますので。フォローです。嫌いにならないであげて下さい。どうぞ!
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”皇妃候補実習”という言葉でリリアーナの心を黒い闇が覆い尽くし、彼女が心を殺しながらも顔には感情のない笑顔を張り付けて立ち尽くしていた時。
マリアは内心慌てていた。
彼女が従兄弟であるベントナー公爵家マルクスからの推薦で皇帝ヴィクトールにこの皇城に呼ばれた事は事実である。
だが、それは”皇妃候補実習”などという物のためではない。
彼女が言った事は周りの令嬢達の勢いに乗せられてしまったものだったとはいえ、嘘であった。
彼女がこの皇城にいる本当の理由は、皇帝の婚儀に参加する”ドラファルト”の国王一行へと念のために用意された通訳、という枠である。
未来の皇后に向かってこんな嘘をついたと露見すればかなり不味いだろう。
そう頭では分かっていても彼女の小さなプライドが邪魔をして、それを正すことができなかった。
「・・・リリアーナ様の婚儀が終わればきっと直ぐに後宮で顔を合わせますわッ、」
そしてその言葉に、リリアーナの思考は底なしの沼に脚を取られているかのように沈んでいった。
光すら見えない真っ暗な思考の沼に。
別に、自分だって後宮に居たくているわけではない。 ヴィクトールがそこに居るように決めたから。
だから。
だから────、?
彼が彼女を皇城に呼んだから。
彼が彼女を候補者に選んだから。
彼が彼女を側室に決めるから。
そうやって自分は彼の言いなりになって、彼の隣にただの飾りの人形の様に座って居ればいいと?
そう思った時、突然、隣にいたセシルがリリアーナの手を強く握りしめた。
その瞬間、リリアーナを支配していたどす黒い感情が嘘のように消え去り、沼に埋もれていたはずの思考も清明となって彼女はセシルをじっと見つめる。
「······っ、申し訳、ありません。 でも、魔力が······」
「いえ、貴女は本当にすごいのね。 ありがとう。」
リリアーナはセシルの手を握ったまま、令嬢達に向き直って綺麗なカーテシーを取った。
「では、皆様、お話が盛り上がっている所大変申し訳ないのですが、私達は失礼させて頂きますわね。 マリア嬢、実習頑張って下さいませ。 後宮でお待ちしておりますわね」
リリアーナのあのふわっとして儚く弱弱しそうな見た目なのに芯のある強気な性格が気に入らない。
まだ皇后になったわけでもないのに、陛下の寵愛を一身に受けている事や、揺るがないその自信も、全て。
マリアは強く拳を握りしめながら去り行く二人をじっと見つめていた。
セシルの手を握ったままリリアーナはいつものように微笑んで歩いていく。 そして何事もなかったかのようにセシルを見て目を輝かせた。
「セシュは他人の魔力の揺らぎも分かるのね? 本当にすごいわ」
「いえ、私にはこれしかできなくて······。 リリアーナ様も凄いです。 っ、強くてかっこいい、」
「私は強くはないわ······ 「リリアーナ、」」
ふと後ろから馴染みのあるテノールの声がして振り向くと、ヴィクトールが宰相セドリックと共にゆっくりと歩きながら近付いてきた。
セドリックの表情は以前とは異なりすっきりとしており、もう憂いはないようだ。
この様子であれば、もう間違った選択などしないだろう。 そう考えてリリアーナは安心する。
セドリックがセシルを大切に抱きかかえて、転移して帰宅するのをヴィクトールと見送った後、後宮へと歩き出したリリアーナをヴィクトールは止めた。
「リリアーナ、助かった。 皇国の貴族に獣人族はいないからな。 貴女が力になってあげれば彼女も喜ぶだろう。」
「いえ、私は彼女の友人ですので。 彼女には幸せになって欲しいと思っているだけです。」
「貴女も幸せになって、二人で友人として仲良くすればよいだろう。 まあ彼女はこれから数日蜜月期間に入るし、貴女も儀式で忙しくなるから。 落ち着いたら時間を取ってはどうだろうか?」
「落ち着いたら・・・? それで、 「それで、」」
「ああ、遮ってしまったな。 貴女から言うと良い」
「いえ、ヴィクトール様からどうぞ」
「ああ。 昨日、貴女の『慣らし五夜』の担当者が漸く決まった。 相手は─── 「······っ、もう、そんなのどうでも良いです。 相手が誰かなんて、そんなの今は聞きたくない、」」
「───······リリィ?」
「『慣らし五夜』、後宮、側室、もううんざりです」
一言口にしてしまえば、不満というのは湧き出るように口から出てくるものだ。
セシルの居なくなった今、いまだ魔力は安定しているとはいえ、彼女の心に巣喰らった闇からは孤独や辛さが相まって、堰き止められていた川の氾濫の様に勢いよく口から溢れていく。
先程、マリア達に煽られたのもあってか、リリアーナの歯止めはほぼ効いていなかった。
「貴方は、所詮誰でもいいのかもしれませんが。
私はちがうっ・・・。 貴方は私がいなくても、、他の女性と閨を共にしてしまうのでしょうね。
でも、『慣らし五夜』で私が他の男性方に心を奪われてしまったら、どうするのですか? そうなればこの気持ちが少しは貴方にも──────、っゔ」
リリアーナは俯いていたため、終始ヴィクトールの表情を見ていなかった。
言葉を最後まで言い終わる前に、ドンッと強い衝撃が背中に響き、顔をあげれば怒りに顔を歪めたヴィクトールが自分の肩を壁に押しつけているのが見えて目を見張る。
「それは赦さぬ」
グッと力が込められて、リリアーナは痛みに顔を顰め、押し退けようと両手で彼の胸板を押した。
だが相手は皇帝ヴィクトールだ。 勿論、ぴくりともしない。
「っ、ちょっ······と、」
「俺が、貴女に、まだ手を出せないからと良い気になっているのだろうが────、」
ヴィクトールはその彼女の両手を一纏めにして掴み、上で固定するとふっと冷笑する。
「─────お前はもう俺のものだ。」
誰にも渡さないし、究極な話、お前が他の誰かを好きになったとしてもその願いは叶えられない。
と、ヴィクトールは言葉を続けた。
「······っ、どうして、貴方はっ······あなたには自由が許されて、私はなにも出来ないなんてっ······、」
「皇帝の地位に居るのだ。 俺の欲しいものは手に入れる。 それだけだ。 お前は何が気に入らない?」
「そういうっ、ところ。 そうやって、女性を誑かすところも······とても、いや。 離してっ、、」
「だが、お前もすぐに俺に惚れただろう」
「ほんとうに、いたいっ······のですっ! 離してください、っ、ヴィクトール様なんて、だいっきらい!! ······っ、」
ヴィクトールの手が急に放され、リリアーナは重力に誘われるようにペタリと地面に座り込んだ。
そして、刹那、頭上から聞こえた低く唸るようなその声に身体が竦み小刻みに震える。
「───────いま、、なんと?
俺のことが、嫌い、だと······。 そう、言ったのか?」
ヴィクトールは地面に座り込んだまま身体を震わせるリリアーナの前に屈み込むと顎を乱暴に掴んだ。
「赦さぬ。 お前が俺から離れるのは絶対に、だ」
「······ぜったい、など、、 「まだ拒絶するのか?この私の前では絶対、が存在する!」」
ヴィクトールは彼女の瞳を見て魔眼を発動した。
彼女の心を『魔眼』で【支配】して繋ぎ止めるなど、間違っている。 そう分かってはいるが、この際、背に腹は代えられない。
彼女の心が離れるのなら、支配すればいいのだ。
「【支配】リリアーナ、お前は俺だけを見て永遠に愛すれば良い。 それは今後、不変であると誓え、」
リリアーナはその真っ赤な瞳を初めて見た。
いや、どこかで一度見たかもしれないが、そんなことは今更どうでもいい。 いつもの黄金ではない、真っ赤な鮮血が流れるような深紅の瞳を呆然と見つめる。
そしてヴィクトールは魂の抜け落ちたような表情をした彼女の顎から手を放し立ち上がった。
未だに地面を見つめたま座り込んでいる彼女を見て、魔眼を使用した自己嫌悪に陥りシャルロッテかメイドを呼ぼうと一歩を踏み出した、その時。
小さく呟くリリアーナの声がして耳を疑って立ち止まる。
「······最低、、だわ。 恋愛この感情まであなたに指図される気はない。 人の心なんて、不変ではないのだから······、」
リリアーナはそう言ってヴィクトールに凍て付く氷のような冷え切った眼差しを向けた。
そう、【支配】の魔眼が、効いていなかったのだ。
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