【第二章/皇国・慣らし五夜編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

文字の大きさ
17 / 65

15. ヴィクトールの不安



 リチャードの羨ましそうな眼差しをひしひしと背中に感じながらシャルロッテはヴィクトールの後を追いかけた。


 シャルロッテは城の地下にある、大きな魔石の目の前でじっとヴィクトールが魔力を入れていくのを観察する。やはり、強大にして底を知らない膨大な魔力量だ。

 そんな中、ヴィクトールはシャルロッテに言葉を投げかける。


「シャルロッテ、リリアーナに何か変化があれば教えてくれるか?なんでも良いんだ。 他に分かりそうな者がいたら、そちらにも手回しを頼みたい」

「はい、お心のままに、」


 シャルロッテは執務室で見た惨劇と、この何気ない会話を漠然と結び付けた。

 リリアーナとの間に何かがあったのは明白だろう。聞くべきだろうか、いや、聞かない方が······、と考えあぐねていると魔力を入れ終わったらしいヴィクトールが振り返った。


「シャルロッテ、今から私が言う事は他言厳禁だ。 軽くだが、誓約をしよう、」


 どうやらいつも無口な陛下は本日、話すことをご所望らしい。シャルロッテは心を決めて手を差し出す。
 誓約魔法の中でも軽いものを交わし、ヴィクトールは自分の髪を鬱陶しそうに掻き分けると目を逸らした。そして口を開く。


「リリアーナに······『魔眼』を使ってしまったのだが、効かなかったのだ」

「はっ?」


 シャルロッテは困惑した。先ず第一に、何故、ヴィクトールが『魔眼』をリリアーナに使用する必要があるのか。そして、何故、その絶対効果を発揮すると言われる『魔眼』が彼女に効かなかったのか······すべてが謎。


「彼女に”だいきらい”と言われてな。 ······拒絶されたのが気に障った。 だから、【支配】してしまえば、楽だと思ったのだが」


 上手く行かなかった、と言って歩き出したヴィクトールをシャルロッテは追って部屋をでる。


 『それは、最低ですね』
 とは言える筈もなく彼女は押し黙った。

 リリアーナが怒っているだろう事は想像に難くないし、なんなら本気で嫌いになっている可能性もある。

 あの美しい、自分好みのリリアーナが独り身となるのは大歓迎だが、その所為でヴィクトールが怒りに身を任せ自爆し国自体が無くなるなど、本望ではない。


「彼女が最初に怒っていた様子だったのだが。 その理由が分からない。 探りを入れてくれるか?」

「はい······シルフィア嬢との次の面会が明後日にあるようですので、彼女にも頼んでおきます。 それから······ええと、最初に陛下が何を仰ったのか、伺ってもよろしいでしょうか······?」

「ああ、『慣らし五夜』の相手が決まったのでそれを伝えようとした。それだけだ。それも聞きたくないというから、未だに伝えられてはいないが、」

「なるほど。ちなみにどなたに?」

「オリリアス、マルクス、ジョシュア、だ」


 オリリアスは分かるが、あの無口で堅物のマルクス卿と、あのニコニコした熊のようなジョシュアか······、と一瞬逸れかけた思考をシャルロッテはすぐに引き戻す。


「では、担当者の件はこちらで機会を伺ってお伝えしてもよろしいですか?」

 ああ、任せる。
 そう呟いてヴィクトールは他の面々の待つ執務室の扉を開けた。




 そして、その日の夕方、リリアーナを訪れたシャルロッテは、彼女の怒りが本気であると知る事となる。それは機会を見計らって『慣らし五夜』の相手を伝えるなど、出来得ないものだった。

 食事も殆ど取らず、湯あみ等最低限の世話以外はメイドすらも入れていない様子のリリアーナに、シャルロッテは慌てて作戦を立て直す。
 
 この皇国が近い未来に無くなることがなく、安心して生きていく事ができるように。

 その命運は彼女にかかっているのだ。

 そのためには、皇帝ヴィクトールとの仲を取り持つという重大な任務を遂行しなければいけないのだから。
感想 5

あなたにおすすめの小説

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

好きな人が嬢を身請けするのが辛くて逃げたら捕まりました~黒服の私は執着騎士に囲われる~

こじまき
恋愛
騎士が集う高級酒場「夜香楼」で女性黒服として働くソフィアは、客である寡黙な騎士ゼインに恋していた。けれど彼が指名するのはいつも人気花嬢イサナで、身請けも近いと予想されていた。 ソフィアは、叶わない想いにと嫉妬に耐えきれず、衝動的に店を去る。 もう二度と会うことはないはずだったのに、身請けした嬢と幸せに暮らしているはずの彼が追ってきて―― 「お前への愛は焼き印のように刻まれていて、もう消えない」 ――失恋したと思い込んで逃げた黒服が、執着系騎士様に捕まって囲われる話。 ※小説家になろうにも投稿しています

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。