【第二章/皇国・慣らし五夜編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

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49. 明かされる、能力



 翌朝、リリアーナは夫婦の寝室、広い寝台の上で目を覚ました。
 嫌な記憶が蘇り、ハッとして頭を触るが、耳はないし尻尾もない。


「良かった······、」


 あれは悪夢だったのかもしれない。白い大きな耳と尻尾が生えたというあまりにも非現実的な夢だったのだ、と胸を撫で下ろした瞬間、窓際から声が聞こえて彼女は寝台の上で飛び跳ねた。


「何が良かったんだ?」

「······っへ? ヴィ、ヴィクトール様!?」


 窓際で脚を組んで優雅に紅茶を啜っているヴィクトールが、特段気にする様子もなくその目線を書物からリリアーナに移した。


「ええと······、」


 今日は執務に行かなくてもいいのですか? 何故まだこの寝室にいるのですか?
 いや、ここは“おはようございます”が先かしら······?と、大混乱に陥ったリリアーナにヴィクトールは口角をあげてその端正な顔を邪なものに変える。


「ああ、白狼姿の貴女を愛でるのも良かったが······そうか。もとに戻れたのだな?」

「······っ、」


 あれはやはり夢などではなかったのだ。ではどこからが夢で······どこまでが······。
 一人熟考しようとするリリアーナを遮るようにヴィクトールは言葉を続けた。


「で、我が妻殿。貴女がご令嬢に唆されて仕方なく実行した事だとは分かったが、次はないぞ?」


 夢であればよかったのに、現実はそんなに甘くはないらしい。リリアーナは記憶を一つ一つ辿っていく。

 ラナーを人質に取られマリアに脅されて、彼女を皇后の部屋に招き入れた。それで······。

 記憶を呼び起こす、それすらも許さないような鋭い視線に射貫かれてリリアーナは寝台の上で両手を前につき頭を下げた。


「本当に申し訳ございませんでした」

「貴女のメイドも無事だ。今日はドラファルトと帰国前の最後の面会も予定している。貴女も出席するといい」


 “ドラファルト” と聞いてリリアーナは身体を震わせる。確か、昨夜はマリアから石を渡されて、急に魔法陣が出現した。そこに吸い込まれて着いた先には第三王子、バロンがいたのだ。
 ラナーはその時には既に気を失っていて、部屋に充満する独特な匂いを嗅いだ瞬間全身が火照ったように熱くなったのだっけ。と、リリアーナはその時の状況を思い出した。



「罰、は陛下のお心のままに、私が受けます。ですがラナーだけは······」

「罰なら昨夜与えたし、メイドに責任はとらせぬ、心配するな。それよりも此処に、」


 トントンっと椅子を叩く彼を見て、リリアーナは寝台を降りてヴィクトールの隣に腰かける。


「······夜着のまま、お目汚しを。お許し下さい」

「良い眺めだぞ、そのままでいい、」

「ドラファルトの面会の件ですが、ヴィクトール様と御一緒致します。ですが、その前に、一つお伺いしても?」


 ヴィクトールが自分に治癒魔法の力があると言っていた気がする。
 リリアーナは昨夜、意識を失う前の事を思い出した。


「その······昨夜仰っていた治癒魔法、とは?」


 ああその事か、とヴィクトールは読んでいた書物を閉じるとリリアーナに向き合った。


「昨日話した通り、貴女には初代皇帝の妻、女神『サーシャ』と同程度の治癒魔法が使えるようだ」

 まあ、これも書物に記されている事だから信憑性は確かではないが、とヴィクトールは言葉を続ける。

「完全な治癒を施すことができる、光属性だな。ただ、貴女には使用条件があるらしい。性交渉でのみ魔法を使用できるようだ」


「······え?」


 性交渉でのみ、魔法の行使が······と考えて、目を見開く。


 光属性は使い手が少ない希少な属性だと聞いている。それに、女神と同じ完全回復のできる治癒魔法が行使できれば、皇国で皇后として力の還元が出来るかもしれないと考えていた矢先の、”使用条件”。


「性交渉······のみ、ですか?」

「ああ、要するに、俺だけに効果があるという事だ」


 え? それってヴィクトール様、無敵なのでは······。とリリアーナはヴィクトールを見つめた。


「まあ、そう言う事になるな。闇魔法で最強と言われる俺が、光属性の大治癒持ちの妻を得たのだ。それは無敵だろうな?」


 心の声が完全に漏れていた、とリリアーナは慌てて口を抑える。


「その······あの······、他には?」

「他? 光属性、以外の適性か? 今の所は分からんな。その完全治癒も、性交渉とは言ったが、実際は粘液交渉でのみ効果がある様だ。要するに深い口づけによる唾液の摂取、口淫などもそれに含まれる。
 だが、やはり挿入が一番効果が高かったな」


「そんな事を調べて······いたのですね······?」


 リリアーナは恥ずかしさに顔を真っ赤にした。


「ああ、それに、貴女の感じる感度もその効果の発揮度には大きく響くらしい。興奮している時は特に治りが早「···っ!は、恥ずかしい!そんな、魔法の使い手がいるのですか?!」」


「それは、分からないな。特殊だ、と言ったろう?ただ、やはり、これは機密情報にしたい。他国や神殿に露見して貴女が危険に晒されないと、保証はできないからな」


 確かに、悪用してリリアーナを拉致、監禁して犯すという事もあり得る話なのだ。
 それが希少性の高い完全治癒の魔法であれば特に、である。ヴィクトールが機密情報として外部に漏らさずに匿ってくれるならリリアーナとしても安心だ。
 
 リリアーナはヴィクトールの言葉に深く頷いた。そしてもう一つ分かった事実が頭を過ぎりじっと彼を見据える。


「なるほど······だから、ヴィクトール様は閨でも······、」

「ああ。そうだな。そこでも無敵だろうな。いつも閨では貴女に回復をしてもらっているからな」


 ふふっ、と清々しく笑ったヴィクトールを見て、リリアーナはガタンと音を立てて勢いよく立ち上がると声を張り上げた。


「わたしっ、リチャード様には早々にお願いをして、魔法の制御の仕方を教わりたいと思いますっ!!」

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