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51. 謁見、マリアの処遇 

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 翌日、朝一番で皇帝ヴィクトールの謁見の機会を得たマルクス達は床に頭を擦り付けるように謝罪をした。そしてその場には急遽、マルクスの父、現ベントナー公爵も駆け付けたのである。


「皇帝陛下、昨夜の件、本当に申し訳ございませんでした!我々はドラファルトとは一切通じてはおりません。全ては我が娘の独断。皇后陛下も危険に晒し、本来であれば極刑であること重々承知しておりますが ──────」


 そう口火を切ったマリアの父、ベルリアーノ伯爵だった。そして彼は昨夜、マルクスと話合った通り、中立国代表の退任とマリアの神殿行きを提言したのだ。

 何卒、御慈悲を!と切迫した様子で頭を下げた伯爵を鋭い眼差しで見つめたヴィクトールは頷いた。


「そちらの意向は相分かった」
 

 その伯爵の隣にいたマルクスはヴィクトールを真っ直ぐに見つめ口を開く。そしてそのマルクスの言葉を実の父が遮った。


「陛下、此度の事は私、マルクスが責任を ─── 

「皇帝陛下、お久しぶりにございます。
 此度の件、分家の勝手な判断とはいえ、我がベントナー公爵家にも非がございましょう。
 しかしながら、我が愚息はまだ若く、未熟で、今後の伸びしろはあるかと思います。
 未だ経験も責任も足りない愚息に何卒成長と再起の機会を与えて頂きたく。
 そこで、此度の件、責任を取って私が公爵を辞させて頂きます。 ご容赦願えませんでしょうか」」


 マルクスは、隣に傅く父を見た。
 公爵をいずれ継ぐ予定であったとはいえ、あまりにも早急だ。それに、父には他国との繋がりも多く自分は未だ彼の足元にも追いついてはいないのに。


「ベントナー公爵、確かに今回の件、公爵家の落ち度でもある。分家を従えるのも本家の仕事だ。
 だが、確かに公の息子、マルクスは将来性もある様だ。できれば私も有能な臣下は失いたくはない。
 よって、その提案、許可しよう。本日をもってマルクスを公爵とする」


「寛大なお心、ありがとう存じます」


 続いてヴィクトールは呆然と父を見つめているマルクスを見た。


「さて、マルクス。中立国の今後の管轄だが、どう考えている?」

「······はい。その件ですが。
 ベルリアーノ伯爵家の爵位返上を致します」


 マルクスは姿勢を直すと、ヴィクトールの揺るがない意思を瞳に宿らせ、そう言い放つ。
 昨夜は聞いていなかったその言葉に、ベルリアーノ伯爵はあんぐりと口を開けたまま硬直した。


「ほう? 伯爵を廃爵とするのか?」

「その代わり、現伯爵嫡男マーロンを我が公爵家の養子とし、中立国の管轄を任せようと思います」

「なるほど? 今後お前達が何かしでかせば、もう次はないという事だな」

「はい。その覚悟を持っております、という意思表示も兼ねております」


 その言葉にヴィクトールは頷いて先を促す。


「そして、マリア嬢ですが、神殿に送ります」

「それに関しては、此方の意見と相違ない。では、以上を持って本件は解決としよう。お前達はもう下がれ。 あとはの問題だ」


 ヴィクトールは謁見の間から全員退出したのを確認してから、マルクスに向かって言葉を発した。


「で、マルクス。念話まで飛ばして何用だ?」

「陛下、お時間割いて頂きありがとうございます。此度の件も寛大な 「早く、本題に入れ」」


 話が纏まった後にマルクスが個人的に念話を飛ばしてきたため、ヴィクトールは斯うして彼に時間を取っている。自分の寝室で未だ眠っているであろうリリアーナの元へ早く駆け付けたいのに。とヴィクトールは少し苛々とした様子を見せた。


 そんな彼を見て、マルクスは頭を下げると口を開いた。

「はっ。マリアの件ですが、神殿に入れた後、彼女には内情を探らせようと思います。その後、定期的に彼女に会い、神殿内部の情報を此方に渡してもらえれば何か裏が掴めるかもしれません」

「なるほど。だが、あの令嬢にそんなことができるのか?」

「内情を掴めば早く神殿から出れる、と餌を捲けば、きっと彼女は食いつきます」

「分かった。そこはお前に任せよう。だが、あまり深入りしすぎるなよ。あそこは危険だぞ」

「はっ、お心のままに」


 その日、マルクスは公爵となり、後に伯爵嫡男であったマーロンを養子として公爵家へ引き入れた。
 今後、二人は足並みをそろえてベントナー公爵家と中立国の管理を行っていく事となる。
 
 また、マリアも同様にすぐに手続きが行われ、神殿へと送られることとなった。
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