FBI連邦捜査官: file 1 Liar FBI連邦捜査官シリーズ Ⅰ

蒼月さわ

文字の大きさ
6 / 23

5

「……ああ」

 絶頂に達したような激しい喘ぎ声を漏らすと、トラヴィスは背中からジェレミーの胸に凭れこんだ。息はひどく乱れ、肌は汗でびっしょりと濡れている。

 ベッドの上で背後からトラヴィスを抱きかかえ、広げさせた両足の恥部の奥を貪欲に貫いていたジェレミーは、ようやくペニスを抜いた。ジェレミーも荒い息をついていた。両腕で恋人の足を抱え込み、前後に揺り動かしながら、繰り返しペニスで突いていた。トラヴィスはされるがままに、ずっと声をあげた。その声は性欲を刺激するほどにとても色っぽかった。

「……ジェレミー……」 

 トラヴィスは恋人の胸に頭を押しつけ、上目づかいに甘ったるく囁く。

 ジェレミーはその唇に熱くキスをする。

 ベッドの周りは、二人の匂いで充満していた。お互いのからだは乱れ、トラヴィスの恥部はジェレミーの精液でべっとりと汚れている。白いシーツの上に背中を押さえつけられ、露わになった秘部にペニスを激しく挿入されてからだいぶ夜は深まったが、二人はぴったりと寄り添い、舌を絡ませながら、飽きることなくキスをした。

 やがて、トラヴィスは腹の底から大きく息をついた。

「……明日も早いんだぞ……」

 かすれた声で、自分を抱いて離さない男に文句を言う。だがその口調はからかうようだ。

「だから、終わりにした。私の我慢に感謝するんだな」

 ジェレミーも笑いながら言い返した。

「ワシントンを離れると、無性にお前とやりたくなるのが困る」

 自分が抱いている男のうなじに唇を押しつけて、吸いあげるようにキスをする。

「……おい」

 犬猿の仲と噂されている特別捜査官は、その行為を咎めようとしたが、その表情はとても愉しそうだ。

 トラヴィスとジェレミーは、つまりこういう仲だった。表向きはお互いに嫌いあって――アカデミーの訓練生時代からというプレミアもつけて、目一杯嫌味や皮肉を投げあっているが、本当は訓練生時代からつきあっているのである。だが自分たちの関係を公にする意思はないので、極秘にしている。二人の仲は、二人しか知らない。勿論ミリアムも知らない。

「それにしても……不思議な事件だな」

 トラヴィスは恋人の息を感じながら、サイドテーブルに腕を伸ばして、タバコを一本手に取った。口にくわえて、揃えてあったライターで火をつける。

「いったい……あのガキどもは何がしたいんだ?」
「お前の言いたいことはわかる」

 ジェレミーは湿った黒髪を撫でながら、飽きることがないようにうなじにキスをする。

「だが、二人の少年が犯人という考えは無理がある。ハリウッド映画ではあるまいし」
「おい、ジェレミー……」

 反論をしようとして振り返ったトラヴィスの指先から、素早くタバコを抜き取ると、ジェレミーも一服吸った。

「その少年たちが、こんな馬鹿げた犯罪をする理由は何だ?」

 ジェレミーはふっと煙を吐く。その眼差しは、冷徹と評判のスペシャルエージェントになっている。

「最初の事件はガス爆発だったが、それをわざわざ電話で爆弾と嘘をついたのは何故だ?」
「言い間違えたんだろう?」

 トラヴィスは閃光のように赤くなるタバコの先を見ながら、言い返す。

「きっと初めてだったから、緊張したんだ」

 ジェレミーは無視する。

「空き家に仕掛けられたのは本物の爆弾だったが、どうやって少年たちがそれを入手して、上手く設置できたんだ?」
「きっと爆弾造りに夢中なお友達がいたんだぜ? 将来の夢はテロリスト。尊敬する人物はユナボマー」
「馬鹿な憶測で、私の質問に答えるな」

 ジェレミーは冷ややかに言った。ユナボマーとは、七十年代から九十年代にわたって米国の大学や研究施設を標的にした連続爆破事件の犯人の呼び名である。

 トラヴィスはやれやれと天井を仰いだ。こと任務になると、優秀な恋人はどれだけ激しい情事の後でも、平気で冷静になれる。せっかくの甘ったるい空気が、木っ端微塵に吹き飛んだ。

「お前の勘が鋭いのは認めていいが、きちんと頭で考えろ」
「考えているさ。お前こそ、派手に考えすぎなんだ。事件ていうのは、案外シンプルなんだ」

 トラヴィスはタバコを無理やり奪い取る。

「大体、なんで優秀なアンダースミス捜査官が、今回俺たちと一緒に捜査することになったんだ?」

 FBIでは目下別々のチームに属している二人である。ジェレミーが所属しているのは、女性で初のFBI長官の座を狙っていると噂されている野心的なアリスン・キーン率いる犯罪対策チームだ。

「あのゴルゴンがリックを敵視しているのは知っているぞ。自分の野望のライバルだと勝手に妄想しているからな。まさか、監視しに来たわけじゃないだろうな?」
「私は暇ではないんだ」

 ジェレミーは素っ気なかった。実はトラヴィスが別件の事件でミスを犯し、上層部によくない心象を与えたことを知ったジェレミーは、裏の手を使って今回の事件に参加したのである。勿論、愛する恋人を助けるためだ。だがヴェレッタ捜査官は自分のためだとは露とも思わないだろうし、アンダースミス捜査官もそれを告白することはないだろう。

「お前たちを補佐するように命令された」

 それだけ言った。

 トラヴィスは何も言わず、タバコを口にした。吐き出される紫煙しえんは、まるでため息のようだ。だがやがて、ジェレミーの腕の中から抜け出すと、両足をベッドから下ろして、腰かける姿勢になった。

「もう帰れ」

 トラヴィスは背中を見せて言う。

 恋人の機嫌を損ねたとジェレミーは察知したが、素直にベッドから離れた。全身は汗をかいていたが、シャワーを浴びず、脱ぎ捨てた下着やワイシャツに袖を通す。

 トラヴィスはジェレミーに背を向けたまま、タバコを吸い続けた。それが気分の悪い時の癖だと知っているジェレミーは靴を履くと、傍らからそっとトラヴィスの頬にキスをした。それがジェレミーの「おやすみ」の挨拶で、上着を手に取ると、振り返らずに部屋を出て行った。

 トラヴィスはドアが閉まると、タバコをサイドテーブルにあった灰皿に押しつけた。それから疲れたように立ち上がって、ドアの鍵をかけに行く。再びベッドへ戻ると、ランプを消し、横になった。

 暗闇の中で、しばらく両目を開けたまま、宙を睨む。ベッドシーツは二人の行為でまだ濡れていたが、恋人に愛された肉体はもう冷えていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年