115 / 129
第十話②
「仕方がないことだ!! もう大会は始まっているのだ!!」
貼り出された日の昼休みに、突如として宇佐美が伝馬のいる教室に台風のごとく来襲した。突然のスキンヘッドの大男の登場に教室中がざわめいたが、宇佐美はお構いなしに堂々と入ってきて、空いていた伝馬の前の席にドンッと腰を下ろすなり叫んだ。
「……え、先輩どうしたんですか」
伝馬は食べかけのおにぎりを手に持ったまま、目の前の壁のような宇佐美を、目を丸くして見上げる。いきなりの登場に文字通り仰天した。
「うむ」
宇佐美は後ろ向きに椅子に座って、胸の前で両腕を組む。
「両道会に出場する代表者たちの中間考査の結果が廊下に貼り出されて、一学年で騒ぎになっていると聞いてな。これは両道会の競技の一環で、成績を公開しなければならんのだ」
「……あ、そうなんですか」
伝馬は今知ったというように相槌を打つ。おそらく宇佐美は一学年の各代表者たちの動揺を伝え聞いたのだろう。伝馬も貼り出されたのにはびっくりしたが、先生方から説明を受けた後だったので落ち着いていた。だが宇佐美がわざわざ休憩時間に足を運んでくれたのは自分のためだとわかって、宇佐美に話を合わせた。
「驚いたんですけれど、仕方がないです。テストの点数も加算されるって聞いていましたから」
「うむ、それならば良い」
宇佐美は男前な相好を崩す。真正面から向き合うと、本当にイケメンな先輩なのだと伝馬はつくづく感心した。スキンヘッドでなければ、もっと周囲にそのイケメン度が認知されていただろうとさえ思う。
「でんまー」
伝馬の真横で、アルミの弁当箱を片手にひじきの炊き込みご飯をかっ食らっている勇太が、無邪気に尋ねる。
「この先輩だれ? カッコいいね」
すると、宇佐美は興味津々といった表情で勇太に顔を向けた。
「桐枝の友人か? 随分と率直ではないか!」
宇佐美の声がポンと跳ね上がる。ヤバいと伝馬は密かに焦る。ただでさえ教室中の注目を一身に集めているのに、宇佐美のバカデカボイスが爆発したら、級友たちから大ブーイングが巻き起こるかもしれない。
「蘭堂先輩も、両道会に出場されるんですよね」
勇太の斜め前に座っていた圭が、宇佐美を振り返って、静かで穏やかに声をかけた。
「うむ、そうだ」
まるで何かのサインでも受け取ったかのように、宇佐美もまた声の調子をやわらげて頷くと、今度は圭を見て、にやりとする。
「お前は藤島の甥だな。頭脳明晰だと聞いている」
「ありがとうございます。叔父さんによろしく伝えて下さい」
圭はまるで台本があるかのようにそつなく返して、小さな唐揚げを口に入れた。
「桐枝の友人たちは、実に面白い。良い学校生活を送れるな」
宇佐美は愉快そうに笑って、用事は済んだというように教室を出て行った――
貼り出された日の昼休みに、突如として宇佐美が伝馬のいる教室に台風のごとく来襲した。突然のスキンヘッドの大男の登場に教室中がざわめいたが、宇佐美はお構いなしに堂々と入ってきて、空いていた伝馬の前の席にドンッと腰を下ろすなり叫んだ。
「……え、先輩どうしたんですか」
伝馬は食べかけのおにぎりを手に持ったまま、目の前の壁のような宇佐美を、目を丸くして見上げる。いきなりの登場に文字通り仰天した。
「うむ」
宇佐美は後ろ向きに椅子に座って、胸の前で両腕を組む。
「両道会に出場する代表者たちの中間考査の結果が廊下に貼り出されて、一学年で騒ぎになっていると聞いてな。これは両道会の競技の一環で、成績を公開しなければならんのだ」
「……あ、そうなんですか」
伝馬は今知ったというように相槌を打つ。おそらく宇佐美は一学年の各代表者たちの動揺を伝え聞いたのだろう。伝馬も貼り出されたのにはびっくりしたが、先生方から説明を受けた後だったので落ち着いていた。だが宇佐美がわざわざ休憩時間に足を運んでくれたのは自分のためだとわかって、宇佐美に話を合わせた。
「驚いたんですけれど、仕方がないです。テストの点数も加算されるって聞いていましたから」
「うむ、それならば良い」
宇佐美は男前な相好を崩す。真正面から向き合うと、本当にイケメンな先輩なのだと伝馬はつくづく感心した。スキンヘッドでなければ、もっと周囲にそのイケメン度が認知されていただろうとさえ思う。
「でんまー」
伝馬の真横で、アルミの弁当箱を片手にひじきの炊き込みご飯をかっ食らっている勇太が、無邪気に尋ねる。
「この先輩だれ? カッコいいね」
すると、宇佐美は興味津々といった表情で勇太に顔を向けた。
「桐枝の友人か? 随分と率直ではないか!」
宇佐美の声がポンと跳ね上がる。ヤバいと伝馬は密かに焦る。ただでさえ教室中の注目を一身に集めているのに、宇佐美のバカデカボイスが爆発したら、級友たちから大ブーイングが巻き起こるかもしれない。
「蘭堂先輩も、両道会に出場されるんですよね」
勇太の斜め前に座っていた圭が、宇佐美を振り返って、静かで穏やかに声をかけた。
「うむ、そうだ」
まるで何かのサインでも受け取ったかのように、宇佐美もまた声の調子をやわらげて頷くと、今度は圭を見て、にやりとする。
「お前は藤島の甥だな。頭脳明晰だと聞いている」
「ありがとうございます。叔父さんによろしく伝えて下さい」
圭はまるで台本があるかのようにそつなく返して、小さな唐揚げを口に入れた。
「桐枝の友人たちは、実に面白い。良い学校生活を送れるな」
宇佐美は愉快そうに笑って、用事は済んだというように教室を出て行った――
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。