男子校的教師と生徒の恋愛事情

蒼月さわ

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第十話⑫

 第一体育館には数分もかからずに到着したが、大変に盛り上がっていた。

「もっと引っ張れやー!!」
「オマエラねばれ!!」
「クッソ!! 力出せー!!」
「踏ん張らんかい!!」

 怒号のような大声と、必死のかけ声と、悲痛な雄叫びと、鼓舞する絶叫が一大集約されて大音量となり、外まで漏れ聞こえてくる。第一体育館へ近づくにつれ、伝馬の耳にも賑やかに飛び込んできた。それで中の盛り上がりようは想像できたが、生徒たちがたむろしている入り口付近から後方越しに顔を覗かせると、想像以上に男臭い熱気ムンムンな光景が広がっていた。

 ――勇太や圭たちはどこだ?

 綱引きはバレーの試合と同じように二つにコートを区切って行われていて、どちらでも熱戦が繰り広げられている。応援団も声を張り上げているため、全体で体育館の空気を揺るがすくらいにうるさい。男子しかいないので、野太い野郎声一色だ。

 ――あ、いた。

 伝馬はそっと左へ首を伸ばした。コートの外側には応援する生徒たちの他に、出場を控えた生徒たちが雑多に並んで座っている。膝を抱えている生徒もいれば、両足を伸ばして楽な姿勢で競技を見物している生徒もいる。その中に一年三組の集団もいて、勇太は立ち上がって目の前の綱引きに腕を振り回してはしゃぎ、その隣では圭が胡坐あぐらをかいて微動だにせず座っている。まるで嵐が過ぎるのを待つがごとくの姿勢だ。

 ――ちょっと近くに行くのは無理だな。

 ごちゃついている周りの様子を見ながら、伝馬はくるっときびすを返し、第二体育館へ戻ることにした。

 その途中で水のペットボトルを購入しようと、渡り廊下を右に曲がり、校舎へと向かう。一階の昇降口付近に自販機コーナーがあって、空のペットボトルを専用のゴミ箱に捨てて、値段の手頃な天然水を購入した。ひんやりと冷たくて、手で持つと気持ちがいい。

 昇降口は人の気配もなく、静まり返っている。体育館の騒々しさとはひどく対照的で、先程までいたそこにいた伝馬はそう離れていない場所のあまりの違いっぷりに、少々変な感覚になった。

 ふと、昇降口から見える外へ視線を投げた。日差しが照りつけ、空気が明るい。気温が上昇しているのは、日光の強さからも見て取れる。

 ――まだ時間はあるな。

 伝馬は冷たいペットボトルを手に、自分の靴箱で外履きに履き替えて、眩しい陽光に誘われるように外へ繰り出した。やっぱり暑いなと空を仰いだが、風が太陽の熱をやわらげるように吹いていて、そんなに気にはならなかった。
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