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第二話⑦
インテリな風貌でいかにも理数系男子二十代バージョンという雰囲気の理博は、理知的な目で二人を見据えたままスッと右手を上げると、その手にある使い古された算盤で、ガツン! と再び机を叩いた。
「お前たち、五月蠅い」
古矢と一成を苦々しく注意する。
いや俺は煩くないだろうと一成は抗議したくなったが、それより先に古矢が目を丸くして言った。
「理博! 物は大切にしなきゃダメだよ! 僕がソロバンだったらびっくりだよ!」
この馬鹿と一成は手で古矢の口を抑えたくなった。古矢の言葉は正しい。物を乱暴に扱ってはいけない。もし自分の生徒が目の前でこんな真似をしでかしたら、即相談室まで連行して大説教である。だが当の五月蠅い張本人である古矢が絶対に口にしてはいけない正論だ。言ったら相手は当たり前に激怒する。
案の定、理博はこめかみのあたりに青筋を立てると、算盤を丁寧に置いて、おもむろに事務用椅子から立ち上がった。
「古矢」
怒りのオーラを滾らせながら、腕を伸ばして右手のひとさし指を突きつける。
「お前が私の算盤だったら、真っ二つに割って捨てている。生憎だが吃驚する暇もない」
「そうか! それは残念だ! 僕が理博のソロバンじゃなくて良かったね!」
おどろおどろしい嫌味VSポジティブシンキングの会話が始まる。一成は面倒になったので一抜けすることにした。名前を呼び捨てにしあっていることからもわかる通り、古矢と理博は高校時代この学園の同級生同士であった。しかも友人というプライベートカテゴリーに入る仲である。第三者からすれば俄かに信じがたい事実だが、二人の後輩にあたる一成からすれば別に驚きでも何でもない。喧嘩しているんだかスキンシップしているんだか全く理解できない会話は、当時の在学生時代からやっていた。そのまま成長して仲良く教職になっても変わらない。もっとも、どうしてお互いに友人と思っているのか吾妻学園七不思議の一つではあるのだが。
「一成」
この間の歴史の小テストを採点しようとプリントを机に出した一成は、理博に不機嫌そうに呼ばれてしぶしぶ顔をあげる。
「何ですか、橋爪先生」
「どうしてお前は私に呼ばれる度に、そんな可愛くない顔をする」
理博は胸の前で両腕を組み、顎をあげて不満そうにぶちまける。それはあなたに呼ばれたくないからだと一成は正直に言おうかなと思ったが、先に古矢がアッハッハと笑った。
「大丈夫! 可愛くない顔でも可愛いよ! 一成!」
親指をグッと立ててみせる。いつのまにか二人の会話は終結したようだ。
「お前たち、五月蠅い」
古矢と一成を苦々しく注意する。
いや俺は煩くないだろうと一成は抗議したくなったが、それより先に古矢が目を丸くして言った。
「理博! 物は大切にしなきゃダメだよ! 僕がソロバンだったらびっくりだよ!」
この馬鹿と一成は手で古矢の口を抑えたくなった。古矢の言葉は正しい。物を乱暴に扱ってはいけない。もし自分の生徒が目の前でこんな真似をしでかしたら、即相談室まで連行して大説教である。だが当の五月蠅い張本人である古矢が絶対に口にしてはいけない正論だ。言ったら相手は当たり前に激怒する。
案の定、理博はこめかみのあたりに青筋を立てると、算盤を丁寧に置いて、おもむろに事務用椅子から立ち上がった。
「古矢」
怒りのオーラを滾らせながら、腕を伸ばして右手のひとさし指を突きつける。
「お前が私の算盤だったら、真っ二つに割って捨てている。生憎だが吃驚する暇もない」
「そうか! それは残念だ! 僕が理博のソロバンじゃなくて良かったね!」
おどろおどろしい嫌味VSポジティブシンキングの会話が始まる。一成は面倒になったので一抜けすることにした。名前を呼び捨てにしあっていることからもわかる通り、古矢と理博は高校時代この学園の同級生同士であった。しかも友人というプライベートカテゴリーに入る仲である。第三者からすれば俄かに信じがたい事実だが、二人の後輩にあたる一成からすれば別に驚きでも何でもない。喧嘩しているんだかスキンシップしているんだか全く理解できない会話は、当時の在学生時代からやっていた。そのまま成長して仲良く教職になっても変わらない。もっとも、どうしてお互いに友人と思っているのか吾妻学園七不思議の一つではあるのだが。
「一成」
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「何ですか、橋爪先生」
「どうしてお前は私に呼ばれる度に、そんな可愛くない顔をする」
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「大丈夫! 可愛くない顔でも可愛いよ! 一成!」
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