ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第一章

第15話 到着と救助

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 爆発発生の数時間前 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 

 私こと、アランディア・フォン=フェニア=ノルドは、我が息子エギルの武術と魔導の師匠となる二人の人物に会う為、謁見の間に向かっていた。
今日の謁見には、エギルも参加することになっていたが、リウム殿から出された課題である【経済について知る】を完遂する為、朝から〔ハルマ―〕の城下町に衛剣の二人と共に繰り出していったので、参加しないことになった。その代わり、妃たちとリウム殿が参加することとなり、私は、彼女たちと共に歩いているのである。

 私の後ろについてくる妃たちは、妃たちの隣にいるリウム殿にエギルの事について聞いていた。

「リウム先生、何故エギルは、謁見の方よりも課題の方を取ったのでしょう?」

 マリアが、公的な行事よりも私的な事柄を取ったエギルの考えが、分からないのか、そんな事を聞いていた。
確かにエギルの行動は、王族としての自覚に欠ける行いであろうと私も思う。だがリウム殿は、そうとは思っていないようであった。

「第一王妃様のご憂慮、よく分かります。ですが、今回は問題ないと思っております。」

「何故ですか?」

「はい、今回の謁見は公的ではありますが、多分に私的な面を持っております。エギル殿下は、それが分かっていたので、課題の方を優先されたのでしょう。もしこの謁見が、公的なものであり、重要なもので有るなら、エギル殿下は、必ず参加されたでしょう。」

「なるほど、分かりました。」

 マリアは、リウム殿の言葉を聞いて、納得した様であった。

 私は、妃とのやり取りを終えたリウム殿に、今回、エギルがやっている課題の狙いを聞いた。

「リウム殿、その課題の狙いを聞かせて貰えないか?」

「狙いで、ございますか。」

「うむ。」

 リウム殿は、私の言葉を聞くと目を閉じて開き、手をつきだして、三本指を立てた。

「今回の課題の狙いは、三つございます。一つ目は言うまでもなく、経済の仕組みを知るため、二つ目は、王族としてこの国の産業を知るため、そして三つ目、これが最も重要な事でございます。」

「それは、何です?」

「生き残るために術です。」

 私は、その言葉を聞いて、リウム殿の狙いが分かり、この大賢者の薫陶を受けたエギルの将来を楽しみに思ったのであった。
 そんな事を言いながら歩いて行き、謁見の間の控室に到着すると儀典官が、歩み寄ってきた。

「陛下、お二人とも謁見の間の扉の前に到着されております。」

「うむ、分かった。」

 私は、儀典官にお二人を謁見の間に入れるように言うと、控室に備えてある鏡をみて身嗜みを整え、位置に着いた。

『〔デイ・ノルド王国〕国王 アランディア・フォン=フェニア=ノルド陛下並びに第一王妃 マリアンヌ・フォン=カルティア=ノルド陛下並びに第二王妃 ステラ・フォン=ルドリア=ノルド陛下、御入来。』

 と言う衛兵の言葉が響き、私たちは、控室を出て玉座へと向かった。

 玉座に腰掛け、前を見ると二人の人物が、頭を垂れていた。私は、言葉を掛けた。

「面を上げられよ。よくぞ遠い所よりお越し下さった。」

 そう言うと二人は、顔を上げた。

 そして、私から見て左にいる初老の男性から声を発した。

「お初に御意を得ます。拙者、須針和泉守雪兼と申します。大殿の命によりこの国に参りました。以後よろしくお願い申し上げ奉ります。」

「うむ。お爺様は、お元気でいらっしゃるか?」

「はい、御壮健でいらっしゃいます。この度の曾孫様からのお手紙も大層喜んであられました。」

「それは、何より。」

「はっ。」

 そう言って会話が終わると、隣の妙齢な女性が声を発した。

「ご尊顔を拝し恐悦至極でございます。私は、ユナリーム・ベラント・カークソルト。国王陛下、第一王子殿下と大賢者殿の要請により罷り越しました。以後よろしくお願い申し上げます。」

「うむ。要請に応じて頂き、感謝を申し上げる。」

「いえ、私の興味をそそる王子殿下で在られたのでお受けいたした次第でございます。」

「それは、何よりです。」

 一通りの会話を終えると、控室の方からリウム殿が出てきて、私たちに礼をして二人に相対した。
 私は、改めて二人にリウム殿を紹介した。

「こちらに居られるのは、大賢者リウム殿。我が息子エギルの教育を担って貰っております。」

「お二人とも、よろしくお願いします。」

 そうリウム殿が言うと、二人も挨拶を返し、謁見は無事に終わった。
謁見も終わり、細やかなお二人の歓迎の茶会をしていると、ものすごい揺れが襲い、大きな音が聞こえて来た。
何事かと思うと、衛兵が息を切らして部屋に入ってきた。

「申し上げます。」

「何事か?」

 私が促すと、衛兵が答えた。

「はっ、先ほど王城の西に隣接する軍の兵器庫におきまして、魔力爆発が発生いたしました。現在、消火作業を行っておりますが、火の勢いが強いとの事、さらに死傷者も出ているとの事ですが、人数は、分かっておりません。」

「あい、分かった。下がってよい。」

「はっ、失礼いたします。」

 私は、報告を受けると衛兵を下がらせた。そして私は、目の前にいる三人に手助けをお願いした。

「リウム殿、ユナ殿、和泉守殿、御助力をお願いしたい。」

 私が、それを言うと三人は快く引き受けてくれ現場に急行した。だが、その時の私は、知る由もなかった、エギルもまた魔力爆発が起きた現場に向かっていることを。





 僕は、黒い煙の立ち上る場所に急行していた。オルティシアとセドイスからは、もちろん危険だと言うので止められたが、僕は二人の静止を振り切って走り、王城の正門へと到着していた。
 門番の兵士が、僕に気づくと駆け寄ってきて、声をかけてきた。

「殿下、どうされたのです?」

「黒い煙が、見えたから急いで戻ってきたの、何があったの?」

 兵士は、困った顔をしてどう言ったものか答えあぐねていると、後ろから衛剣の二人が追い付いてきた。

「殿下、お待ちください。危険でございます。」

 僕は、その言葉を聞いて怒りが込み上げてきて、大声で叫んだ。

「僕たちが、やらなければならないのは、あの黒い煙の下にいる人を助けることだ、僕の事を案じても何にもならない、今すぐにあの煙の下にいる人たちを助けろ―――。」

 そう叫ぶと、僕は、門番に通用門を開けさせて中に入り現場に急行した、衛剣の二人も僕について来てくれたのであった。
僕たちは、全速力で走り現場に到着すると、そこは、炎が埋め尽くしていた。皆が懸命に消化を試みているが、全く火の勢いは、衰えてなかったのである。
 僕は、この場を指揮する指揮官を探して辺りを見回すと、リウム先生の姿を発見した。その他に二人の人物がいた。

「リウム先生。」

 僕は、先生が居る場所に駆け寄った。

「殿下、どうしてここに?」

 リウム先生は、僕を見つけるとそう問うてきた。

「王城に帰ろうとしていたら、すごい揺れと音と黒い煙が立ち上ってるのを見たからここに来たの。」

「そうですか、ですがここは危険です。もう少し下がってください。」

 先生は、僕をこの場所から追い出そうとした。なぜ追い出すかは、非常に危険な火災になっているので安全を確保する為なのだが、それが今は非常に鬱陶しい、この炎さえ鎮火できれば、ここにいることが出来るのにと思ったとき、ある事が頭によぎった。

「リウム先生、あの炎を消す方法があります。」

「何ですって? どんな方法で。」

「あの炎の起点に、《エクスプロージョン》の魔法を打ち込むんです。死傷者を保護した状態で。」

「確かに、その方法なら鎮火も可能、だけど残骸が邪魔をしたり、死傷者の現在位置も正確には掴めていない状態では、出来ないのよ。」

「でも、あの残骸と死傷者さえ如何にかできれば、やれるんだよね。」

「ええっ、可能よ。」

 そう言い合っている僕たちに、先ほど先生と一緒にいた二人の人物が、話しかけてきた。

「中々、面白いことを仰る王子ですな、気に入りましたぞ。残骸は拙者が、取り除きましょう。」

「やっぱり、面白い子ね。死傷者の確認と保護は、私に任せて。」

 二人がそう申し出ると、リウム先生も「分かりました」と言い、魔法の準備に入った。

 初老の男性は、残骸が散らばっている少し前に立つと、腰を落とし足を前と後ろに開き、腰に佩いている刀剣に手を掛けた。
 年若い女性の方は、魔方陣を展開すると、何かの術式を使い死傷者の位置の確認と保護を行った。
 それが終わると、リウム先生の《エクスプロージョン》と初老の男性の握っている刀剣からの斬撃が一斉に発動し、残骸を吹き飛ばし、炎を鎮火したのであった。
炎が、鎮火したことにより救助が開始され、多くの人が助かることになった。
僕は、それを誇りに思った。
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