ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第7話 演習と捕縛

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 〔デイ・ノルド王国〕首都近郊 〔ダービル城〕演習場

 〔デイ・ノルド王国〕の誕生を祝う建国祭の最大のイベントが、首都近郊に存在し、首都防衛の最大拠点である、この〔ダービル城〕の周辺で行われる、『王国合同総合火力演習』である。
『王国合同総合火力演習』は、王国軍と貴族が編成している諸侯軍の合同演習である。その目的は、両軍の連携を強化することである。戦場において連携が取れていない軍隊が集まったとしてもそれは烏合の衆である。そして烏合の衆は、戦場ではよい的にしかならず、壊滅をさせられ、敗退してしまう。それにより国が、滅亡したことは枚挙に暇もない歴史的事実である。
その烏合の衆化を防ぐのが、本演習の肝となる部分である。
 そして、本演習のもう一つの目的は、王国軍及び諸侯軍が使っている装備品の品質確認、それを収めている商会などの点検、さらに新たな装備の試験及び新たに軍と取引をしたいと申し出て来た商会の検査を行う事である。

 と長々と、僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドにそう言ってきて説明しているのが、今の軍務省長官である軍務卿のポール・フォン・スカイトール伯爵である。
スカイトール伯爵は、前スカイトール伯爵の三男に生まれ、上に二人の兄がいたことから伯爵家を継がなくてもよい立場であった。この事から、幼少の時から軍に入り、国に仕えたいと考え、王国軍幼年学校に入り軍人としての生活をスタートさせた、しかし幼年学校を首席で卒業したにも関わらず、士官としてではなく、一兵卒として入営したという異色の経歴を持っている。
一兵卒として入営はしたが、本人の実力により順調に出世し、軍務卿にとの内示が下るころには、王国軍大将に抜擢されていたほどの人物である。
そんな人物が、僕に長々と説明をしているのである、ありがたい事ではあるが、少し大変である。

「エギル殿下、お分かりいただけましたか?」

 ようやく、軍務卿の説明が終わったようである、しかし気を抜いてはいけない、少しでも気を抜けば、先程の説明がまた繰り返し起こることは、予想がつくのであった。
その為、しっかり答えなければならない。

「うん、分かった。ありがとう、軍務卿。」

 そう言うと、軍務卿は満足そうな顔を浮かべると、こう返してきた。

「お役に立てて光栄です、エギル殿下。」

 そもそも何故、僕が乗っている馬車に軍務卿が乗っているのかと云うと、これは全て、リウム先生の仕組んだことである。
先生は、僕の考えた作戦を評価をして足りない部分が存在する言って軍務卿から演習についてのレクチャーを受けるように言って来たのである。
その為僕は、軍務卿と一緒に馬車に乗っているのである。


 しばらくして僕が乗っている馬車は、目的地の〔ダービル城〕に到着した。城の玄関に到着し馬車の扉が開き僕が降りると、衛兵が敬礼の代わりとなる捧げ銃をしながら僕を出迎えてくれた。
 僕が、玄関から城の中に入ると同時に、母上たちとクリスタ一家が乗った馬車が到着し母上を先頭に降りて来た。

「あら、エギル。まだ入っていなかったの?」

 母上が、そう尋ねて来たので、僕は、こう返した。

「はい、入ろうとしたら母上たちの乗られた馬車が到着したので、一緒に城の中に入ろうと思いまして。」

「そう、でも衛兵たちを困らせてはダメよ。」

 母上は、そう僕に諭すと、一緒に城の中へと入っていた。

 僕たちは、城の中を進んで行く、目的地は、王族と王族に招待された招待客にしか入ることが許されない観覧場所である。
僕は、母上から離れてダンテと一緒に目的地に向かっていた。

「エギルは、このお城に来たことがあるの?」

 ダンテが、そんな質問をしてきた。

「ううん、今回初めて来たんだ。」

 僕が、そう答えると、ダンテは、こう返してきた。

「へ~、そんなんだ。何でだろうね、来ちゃダメなのかな?」

 僕もその疑問を父上には、聞いた事があったが、5歳に成らないとここには、来れないと言われたのだった。
その事をダンテに話すと、「何でかな」と返ってきたのであった。

 そんな事を話している内に目的地である観覧場所に到着し、先についていた父上たちと合流をし、僕は、ダンテをお爺様とお婆様と叔父上たちに紹介をした。
ダンテの紹介が終わり、後は演習が始まるのを待つばかりとなった。

 それから30分後、父上の元に今回の演習の総責任者である、演習指揮官がやって来て父上に、これから演習を開始すると報告し、演習が開始された。

 ここで、軍務卿より、今回の演習の概要が語られた。最初の午前の部は、装備品の披露で、性能や品質などの試験も兼ねて行われる、この午前の部において取引したいと名乗りを上げた商会も、同時に披露し、性能や品質を試験される。
そして午後の部は、王国軍と諸侯軍の合同部隊と、近衛師団、第6騎士団、第二混成師団の合同部隊による実践演習を行うと説明してくれた。
僕は、それを聞きながらとある人たちがあたふたするのが、眼に浮かぶようであった。




 〔デイ・ノルド王国〕首都近郊 〔ダービル城〕演習場 
 演習場には、いくつかの建物が存在する。本城の他に兵器庫や隊舎、更に学校である。そしてこの建物もまた演習時使われる建物である。その名前は〔待機所〕である。ここでは軍に物品を卸している商会や軍に物品を卸したいと名乗りを上げた商会がここで試験結果を待つための建物の一つである。
 その建物に入ってきたのは、おそらくまだ30歳台になったばかりの男であった。名前は、ヤーオク・フルドイン。フルドイン商会という新興商会を立ち上げたやり手の経営者である。
 そのやり手経営者であるヤーオクが、事業拡大にと目を付けたのが、軍、特に王国軍との取引であった。
王国軍と取引をすれば商会の名に信用が生まれ、商品が飛ぶように売れる、そう考えたヤーオクは、軍に売り込むための商品を自身の商会から見つけようとしたが、見つけることが出来なかった。
その理由は、そう言った一般的な商会が取り扱っている物品ついては、軍は納入商会を決めており、不正などの著しい信用失墜などが無ければ、納入商会の選定は行われないからである。
 しかし、そこはやり手の経営者こんな事を思いついた。

「そうだ、商会の入れ替わりが激しい武器の納入ならチャンスがあるかもしれない。」

 そう言って商会を挙げて武器の研究と製造を開始し、わずか1年という期間において野戦用榴弾砲を開発し製造したのである。
しかし、兵器とは、売り込まなければただのガラクタである。そこでヤーオクが、取った方法が自分の友人である、とある伯爵に買ってもらい、実際に伯爵軍で使ってもらうというものであった。
 その目論見は、功を奏し、更にはこうして王国軍との契約のための試験に臨めている状態になっていた。

「さあ、これで私の商会が、ここにいる者たちを抑えて、契約を勝ち取って見せる」

 そんな事を言いながら用意された席に着くと試験を待った。

 演習午前の部が始まって間も無く1時間が経過しようとしていたころ、射場では、火砲の実弾射撃及び性能テストが開始された。

 ドーン ドーン ドーン ドーン

という音が榴弾砲と呼ばれる大砲から鳴り響いている。そして最後の大砲が、発射されようとしたが、何故か弾が発射されない。
誰もが、欠陥かと思い砲術士たちが近づくとそれは起こった。

 ズッドーン

 巨大な火柱が上がり、その大砲は、近づいた砲術士たちを巻き込んで大暴発を起こしたのであった。

 それを待機場で見ていたヤーオクは、顔を青く染めプルプルと体を震わしていた。

「なぜ、こんな事になった。計画と違う。」

 実はヤーオクは、競合商会と王国軍との契約を阻止し、自分の商会と王国軍を契約させるため、妨害工作を命じていたのである。
その工作とは、他の競合商会の大砲を使えなくし、自分たちの所だけ撃てるようにするという物であった。
しかし、何故か他の競合商会の大砲は正常に発射され、自分の商会の大砲は、大暴発をしてしまったのである。

 待機所に重苦しい雰囲気が立ち込めている時、王国軍の制服を纏い右の上腕に何かを表す輪章をつけた二人の軍人がやってきた。
そして、こう言った。

「ヤーオク・フルドイン、居るか、王国軍憲兵隊だ。」

 しかし、返事はない。するとその時、建物の裏でドスンと言う音が聞こえて来た。
憲兵二人は、急いで建物の裏に向かうと、そこにはヤーオクが尻餅をついた状態で座り込んでいた。
憲兵二人は、すぐにさらに逃げようとしたヤーオクを拘束し、憲兵隊本部へと連行していた。
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