ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第12話 要求と正体

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 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 謁見の間

 私ことアランディア・フォン=フェニア=ノルドは、執務を終え、重臣たちとの会食も終え、後宮に戻ろうとしていた時、宰相からの呼び出しを受け、こうして謁見の間の玉座に腰を据えている状態であった。
 では何故、このような事に成ったのかと云うと、その原因がこの謁見の間の扉の外に待機しているのである。

「よろしいでしょうか、陛下?」

 宰相が、準備が大丈夫かと聞いてきた。

「うむ、通せ。」

 私は、問題ないと答え、招きいえるよう宰相に言った。それを受け宰相が合図を送ると扉の外で衛兵が、槍の石突で床を叩く音と名前を呼ぶ声が、聞こえて来た。

 ガンガンガン

「〔ノース・ザルド王国〕特命全権大使オーベルト・ハームノイス閣下、御入来。」

 扉が開き、一人の男が、しずしずと部屋の中へと入ってきて、大使などの他国の代表者が立つラインで止まり、頭を下げた。

「国王陛下におかれまして、益々のご健勝の事、誠にお喜び申し上げます。」

 大使が、礼儀として言って来た言葉に対し、私も礼儀として、こう返した。

「貴国の王は、お元気でおられるか。」

「はい、我が君はすこぶるご健勝であらせられます。」

 そう大使は、返してきた。そんな世間話を終えると宰相が一歩前に進み、大使も一歩前に進んだ。

「それでは、信任状捧呈式を執り行う。」

 宰相が宣言すると、大使は手に持っていた信任状を宰相に同伴していた外務卿に手渡すと私の方に向き直り礼をして、再び元の位置へと戻っていき、宰相が私に対して大使の紹介を行った。

「陛下、こちら〔ノース・ザルド王国〕特命全権大使オーベルト・ハームノイス殿です。」

 私は、それを聞き、こう答えた。

「大使の着任を裁可し、貴殿の来訪を歓迎する。」

 そう言うと宰相が、こう発した。

「これにて信任状捧呈式を終了する。」

 その言葉を受け、大使は、前に向いたまま下がっていき、ある所でクルリと周り後ろに向くとそのまま謁見の間から出て行った。
儀式を終え、私も宰相たちと共に謁見の間を後にし、それぞれの帰路についたのであった。

 そんな夜の信任状の受け取りから、三日が経ったこの日、ハームノイス大使が、私に面会を求めて来たのであった。
私は、断る理由もないので、それを受け謁見の間で彼が来るのを待ったのであった。
 大使は、予定の時間に現れた。私は、大使に対して今日何故面会を申し込んだのかを聞いた。
すると大使から、この様な返答がなされた。

「本日、面会を希望いたしましたのは、我が君のご要望をお伝えいたすためでございます。」

「ほぉ~、要望とは?」

 私が、続きを促すと、大使は、こう答えた。

「貴国と我が国の新たな条約の制定と輸出に関する新たな取り決めでございます。」

 私は、それを聞き何を考えているのだと思った。なぜなら現在〔ノース・ザルド王国〕との不可侵条約は、かの国が、我が国に一方的な言いがかりを付け開始した戦争で、敗北し、自国の領土を守るために賠償金とセットとして結ばれたものである。
それを今更新たな条約にすると言う事は、こちらを侮っていると言う事でもある。
 その為、この面会を謁見の間で同席し見ていた、貴族たちからは、反発の声が上がっていた。

「何故、条約を新たに結ばねばならないのだ。」

 私は、大使に質問をした。すると大使は、こう答えて来た。

「貴国と我が国は隣国同士です。それらが争えば、逆に他の国を利してしまう。それを我が王も望むところではありません。」

「成るほど、他国を利させぬため、全てを水に流して手を組む、そう言う事か?」

 大使の説明に私が、この様に答えると、大使は、「その通りでございます。」と言って来た。
 私は、宰相の方見ると、宰相も私の方を見て来た。私は首を縦に振ると、宰相も首を縦に振り、私の代わりに宰相が、大使に対して答えた。

「貴国の意志は、分かりました。しかしそう簡単に返事は出せません。こちらで検討の上お答えいたします。」

「はっ、分かりました。」

 そう言って宰相の答えに満足したのか、大使は私に礼をしそそくさと帰っていったのである。





 そんな事が、起こっていることなど知らない、僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、王宮の馬場に来ていた。
理由は、先日助けた親子の馬が、元気になってきているとの知らせを受けたためであった。

 僕は、先生たちと共に馬場に向かうと、そこには先日の仔馬が、元気に走っている姿があった。
その仔馬を見つめている母馬もしっかりと立っている状態であった。

 僕が、馬場の柵に近ずくと、母馬が僕に気付いたのか、近づいてきた。すると僕の方をじっと見て首を縦に振ると、首を更に深く縦に振ったのであった。
僕は、こいつ変わった馬だなと思っていると、リウム先生が、その仕草をみて声を上げた。

「あっ、もかして。」

 先生は、そう言うと何処からともなくある本を取り出すと、何かを調べだした。何を調べているんだろうと思っていると、仔馬の方も僕に気付いてやって来て、僕の顔に自分の顔を近づけてきてスリスリとしだしたのであった。

「うわ、くすぐった。」

 そんな状態になっている時に、リウム先生が調べものを終え僕の方に近づいてきた。先生は、母馬の方をじっくりと観察し、開かれたページの書かれている事と照らし合わせると「うん。」と頷き、僕の方を向きこう言って来た。

「殿下、この馬たちは、天馬でございます。しかも単なる天馬ではございません。ベエヤードと呼ばれる天馬でございます。」

「エェェェェェ――――。」

 その説明を聞いた時、僕は、驚きのあまり絶叫してしまったのをよく覚えているのであった。
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