ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第14話 報告と調査

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 〔ノース・ザルド王国〕首都 〔ザイルシティー〕王城 謁見の間

「報告を聞こう。」

 謁見の間に、老人の厳かな声が響き渡る。この声の主は、〔ノース・ザルド王国〕宰相を務めている、キナモル・フォン・ディニール。歳は、65歳である。
〔ノース・ザルド王国〕の全てを取り仕切る人物であり、彼が居なくなればこの国が滅びてしまうと言われるほどの傑物である。

「はっ、報告させていただきます。」

 そう答えたのは、現在〔デイ・ノルド王国〕に派遣されている大使である、オーベルト・ハームノイスであった。
彼は、先日の〔デイ・ノルド王国〕国王との会談を終え、秘密裏に本国へと帰還していたのであった。

「アランディア陛下に条約の新たな締結を申し込みました。陛下は、即答はなされずに一旦預かるとの事でした。」

 それを聞いたディニール宰相は、こう答えた。

「ふむ、そう簡単には運ぶわけはないか。まあ、想定の範囲内ではある。して回答は、いつ返される?」

 その問いにハームノイス大使は、こう答えた。

「私が、かの国に戻りました3日後に回答すると、エスカルパ―宰相閣下は、申されておりました。」

 それを聞いたディニール宰相は、そばに控えていた官僚たちを呼ぶとこう伝えた。

「直ちに、条約の作成に入れ。」

 命を受けた官僚たちは、宰相に頭をさげて、謁見の間から退出していった。そしてディニール宰相は、ハームノイス大使にも退出するように命じた。
ハームノイス大使が、謁見の間を退出するとディニール宰相は、玉座の置いている場所に向くと頭を垂れた。
すると、玉座へと続く扉から誰かが出てきて、玉座に向かい、そして腰掛けたのであった。

「ヒック、面を上げよ。」

 しゃっくりの音の後に、その人物から言葉が発せられ、それを受けディニール宰相は、頭を上げたのであった。
頭を上げると玉座には、顔を真っ赤にさせた太った男が、鎮座していた。彼こそが、この〔ノース・ザルド王国〕国王、ピスグリス・ドゥ・ユーベル・ザルド。歳は35歳である。

「直言を許す、申せ。ウムウムウムウム。」

 それを言うと片手に持っていたゴブレットを呷り、中に入っていた、ワインを呷り飲みしだしたのであった。
 それを見ながらディニール宰相は、眉をしかめながらこう言った。

「陛下、計画は順調に進んでいます。もう少しお待ちください。」

 それを言い終えた直後、何かが宰相めがけて飛んできたのであった。宰相は、それを半身をずらして回避すると、音が聞こえて来た。

 カアーン カン カン カン。

 それは先ほど国王が呷り飲みをしていたワインが入っていたゴブレットであった。国王が、宰相に向かって投げつけたのであった。
 国王は、投げつけたゴブレットが当たらなかったことと、とある計画が遅々として進まない事に腹を立てて癇癪を爆発させ喚きだした。

「キーサーマー、この役立たずが-。いつに成ったら朕の出番が来るのだ? ヒック。 さっさとせぬか、この無能が―。」

 ディニール宰相は、その戯言に一切反応することなく無言を貫き、国王の気が収まるまでその言葉を聞いていた。
 しばらく続いた国王の罵詈雑言は、酔いが完全に回った国王が眠りに落ちることにより終了された。

「はっ、ようやく終わったか。この馬鹿を相手にするのは疲れるの。」

そう言うと宰相は、侍女たちを呼び国王を寝室へと連れて行くように命じると、謁見の間を後にし、自身の邸宅へと戻っていったのであった。





 一方その頃、〔デイ・ノルド王国〕から〔ノース・ザルド王国〕へと入ろうとしていた人物がいた。





「フゥ~、あと少しで国境か。」

 俺は、支給された地図を確認しながら現在地を確かめていた。地図によると現在地は、国境の砦から3キロの地点の様である。
俺は、地図を装備入れに仕舞い、休憩のため焚いていた焚火を後始末し、再び歩き出した。

「暗くなる前には、国境の砦に入ることが出来るな。」

 そう言って俺は、少しペースを上げ前進を続けたのであった。

 それからしばらくして、俺は国境の砦に入っていた。入る時間が砦の入門時間のギリギリだったのは、かなりの誤算であった。そんな事を思いながら砦内に在る旅人向けの宿へと向かい、泊まる手続きをして部屋へと入った。
 部屋に備え付けのベットに腰を掛けるとここに来る事に成った理由を思い返した。


 俺の名前は、ロードスト・モルロ。歳は30である。俺はとある事件に関わってしまったことにより王国に害を与えたとして、今まで勤めていた警衛士を解雇され、投獄されていた。
しかし、とある日俺は、再び日の光の元に戻ることが出来たのであった。俺を開放してくれたのは、この国の第一王子であるエギル様であった。
エギル様は、俺に新たな職も与えてくれた。それは、王宮森番という仕事であった。この仕事は、後宮と呼ばれる王妃様たちが暮らしている場所の後ろに広がる広大な森を管理するのが務めである。
 俺は、家族と共にこの森番のための家に引っ越し、森番としての日々を送っていた。

 そんなある日俺は、国王様からの直々のお呼び出しを受け、とある場所に向かった。その場所に到着するとすぐに国王様がやって来て、とある事を依頼されたりであった。この依頼こそが、王宮森番の真の仕事であったのである。
 俺は、森番の長から必要な装備と身分証を受け取り、こうして〔デイ・ノルド王国〕と〔ノース・ザルド王国〕の国境の砦に来ているのであった。

 俺は、物思いにふけるのを止めると、部屋を出で下に降り夕食を食べるとカウンターからお湯を貰い部屋に帰り体を拭き、明日の国境越えに備え、ベットに入ったのであった。
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