ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第16話 仲介と開始

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 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王宮 中庭

パン パパン パン パン パァーン

 僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、王宮の中庭で、九我流の鍛錬の一つである掛かり稽古を行っていた。
この掛かり稽古は、型で習得した基本技やその基本技を応用した応用技などを一対一の試合形式で確認をし更なる向上を目指すと言う物である。
この掛かり稽古では、木刀は危険な為使わず、細い竹を一定の長さで切り、それを束ねて紐で固く結びつけ、その上から袋を被せ、紐で固定した、袋竹刀という呼ばれる物を使う。

 パン パン パパン パァーン パン

 僕が、今相手にしているのは、兄弟子の一人である。一旦お互いに離れ、構えなおすと、ジリジリと間合いを図りながら相対した。

「相変わらずだな、エギル。その正確さ。俺には、真似出来ねーよ。」

 兄弟子が、僕が兄弟子の太刀筋に対して的確に対処しているので、そんな事を言って来た。

「兄弟子こそ、僕に容赦なく打ち込んでくるのは、如何かと思いますけど?」

 僕も負けじと兄弟子の打ち込みの強さについて言及した。すると兄弟子は、こう言い返してきた。

「お前は、これぐらいの力で打っても捌くからいいんだよ。っと。」

 すると兄弟子が、一挙に間合いを詰め、袋竹刀を振りかぶり打ち込んできた。僕は、袋竹刀を横に構え、兄弟子の攻撃を防ぐ、その防いだ反動で後ろへと下がり再び体制を整えると、兄弟子の手首を狙い袋竹刀を叩きつけた。

 パァーン

「それまで。」

 須針師匠の掛け声が響く。試合終了の合図である。

「勝者、エギル。」

 勝敗の判定が出ると僕と兄弟子は、一旦元の間合いに戻り袋竹刀を納刀し、お互いに礼をし、更に須針師匠にも礼をし、再び向き合い、お互いを見ながら場外と呼ばれる場所まで下がると更に礼をした。

 パチパチパチ

 すると拍手が聞こえて来た。誰が拍手しているのだろうと思って、周りを見回してみると、王宮の入り口の所にお爺様と知らないお爺様と同じぐらいの年齢の男性が立っており、さらお婆様と、お婆様によく似た顔の女性が立っていたのである。

 僕は、誰だろと思いながら、須針師匠の号令を受け、兄弟子たちと共に正座をすると、須針師匠に礼をした。

「ありがとうございました。」

 そう言うと僕は、立ち上がりお爺様たちの所へと向かったのであった。


 時は、少し遡る。


 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王宮 謁見の間 夜

「ようこそ我が国へ、歓迎いたします叔父上、叔母上。」

 そう言ったのは、〔デイ・ノルド王国〕現国王、アランディア・フォン=フェニア=ノルドである。

「アラン直々の出迎えとは、わしもうれしく思うぞ。」

 そう言って、「かかかかかっ。」と笑う男性は、数日前に海洋都市〔アルカニス〕に停泊した純白の帆船より降りてきた人物であった。

「今回は、仲介を引き受けていただき、誠にありがとうございます。」

 アランがそう言うと、その初老の男性は、こう返した。

「何、これが我が国の使命だ。気にする必要はない。」

「はっ、ありがとうございます。」

 アランは、そう言うと、手を叩いた。すると謁見の間の扉が開き、侍女たちが出て来た。

「叔父上たちを、客間にご案内してくれ。」

 アランは、そう指示すると、初老の人物にこう言った。

「では、叔父上、叔母上、ごゆっくりお休みください。また明日の昼食会でお会いしましょう。」

「うむ、ではなアラン。」

 そう言って初老の人物は、侍女たちに伴われて謁見の間を後にしたのであった。


 時は、また元の時間に戻る。


「おはようございます。お爺様、お婆様。」

 僕は、二人に朝の挨拶をした。すると二人も挨拶を返してくれた。

「うむ、おはよう。エギルよ。」

「おはよう、エギル。」

 挨拶を終えた二人は、一緒にいる人たちを紹介してくれた。

「紹介しよう、エギル。こちらの男性は、私の友であり、エギルの大叔父でもある、〔スカイテール連邦王国〕の前国王、ディスダベル・ドゥ・ネクロンシアだ。」

 お爺様は、そう言うと「こちらが、エギルだ。」といって男性に僕を紹介してくれた。すると男性は、僕の眼の高さまで腰を落とすと、にこりと笑いこう言った。

「初めまして、エギル。君の大叔父である、ディスダベルだ。気軽にダベルと呼んでくれ。」

「はい、初めまして。ダベル大叔父上。エギルと言います。お会いできて光栄です。」

 と僕が、返事を返すと、大叔父上は、「かかかかっ」と笑いながら頭を撫でてきたのであった。
するとお婆様の隣にいた女性がひょこりと出てきて、僕をヒョイと持ち上げるとクルクルと回りだしたのであった。

「ワァァァァァァ―、目が回る。」

 と僕が言うと女性は、「ごめんなさい」といって回るのをやめ僕を地面に降ろすと、自己紹介をしてくれた。

「初めまして、エギル。私の名前は、アヤネ・ドゥ・ネクロンシア。貴方のお婆様の妹よ。だから貴方には、大叔母にあたるのよ。よろしくね。」

 そう言うとアヤネ大叔母上は、僕をまた強く抱きしめたのであった。僕は自分も自己紹介をしなければいけないと思い、強く抱きしめられながらも、こう言った。

「初めまして、アヤネ大叔母上。エギルです。お会いできて光栄です。苦しいです、離してください。」

 そう言うと大叔母上は、「あら、ごめんなさい。」と言いながら抱擁を解き、その代わりに頭を撫でてきたのであった。
暫く大叔母上が満足するまで頭を撫でるに付き合った後、僕は、お爺様たちと食事をし、その席で何故、永世中立国家である〔スカイテール連邦王国〕の前国王が、この国にいるのかを聞いた。
すると、とある解答が、返ってきて僕は、「ヘェ~、そんなんだ。」と言ったのであった。

それから数日が経過したある日、とある会議が、王城で始まろうとしていた。





 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 合議の間

 この日、〔デイ・ノルド王国〕王城にある合議の間に集まったのは、〔デイ・ノルド王国〕を代表し、王国宰相であるカマル・フォン・エスカルパ―、王国外務卿であるイサミル・フォン・シーハイル、そして王国公爵であるガーベリウム・フォン・ノグランシアの三名と外交官などの事務方であった。
 対する〔ノース・ザルド王国〕は、王国の代表として駐〔デイ・ノルド王国〕特命全権大使であるオーベルト・ハームノイス、王国外務長であるオーランド・フォン・カタンベリル、そして外交官の事務方であった。

 それぞれが所定の席に着きとある人物の到着を持っていた。すると合議の間の扉が開きその人物が入ってきた。
出席者全員が立ち上がり、その人物に礼をする。その人物は、合議の間に設けられた二つの国の机と机を繋ぐ机に向かうとそこに置かれた椅子に着席した。
それを確認した両国の出席者も礼をやめお互いに正面を向いたのであった。
すると先ほど席に着いた人物が立ちあがると、こう宣言した。

「これより、条約の締結交渉を執り行う。議事進行及び仲介は、〔スカイテール連邦王国〕前国王、ディスダベル・ドゥ・ネクロンシアが行う。異議のある者は起立せよ。」

 その言葉を合図に出席者全員は、ダベルに一旦礼をすると着席したのであった。

「異議なしと認め、これより開会する。」

 そう言うとダベルは、机に置かれていた木槌を打ち鳴らしたのであった。
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