43 / 69
第一部 第二章
第16話 仲介と開始
しおりを挟む〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王宮 中庭
パン パパン パン パン パァーン
僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、王宮の中庭で、九我流の鍛錬の一つである掛かり稽古を行っていた。
この掛かり稽古は、型で習得した基本技やその基本技を応用した応用技などを一対一の試合形式で確認をし更なる向上を目指すと言う物である。
この掛かり稽古では、木刀は危険な為使わず、細い竹を一定の長さで切り、それを束ねて紐で固く結びつけ、その上から袋を被せ、紐で固定した、袋竹刀という呼ばれる物を使う。
パン パン パパン パァーン パン
僕が、今相手にしているのは、兄弟子の一人である。一旦お互いに離れ、構えなおすと、ジリジリと間合いを図りながら相対した。
「相変わらずだな、エギル。その正確さ。俺には、真似出来ねーよ。」
兄弟子が、僕が兄弟子の太刀筋に対して的確に対処しているので、そんな事を言って来た。
「兄弟子こそ、僕に容赦なく打ち込んでくるのは、如何かと思いますけど?」
僕も負けじと兄弟子の打ち込みの強さについて言及した。すると兄弟子は、こう言い返してきた。
「お前は、これぐらいの力で打っても捌くからいいんだよ。っと。」
すると兄弟子が、一挙に間合いを詰め、袋竹刀を振りかぶり打ち込んできた。僕は、袋竹刀を横に構え、兄弟子の攻撃を防ぐ、その防いだ反動で後ろへと下がり再び体制を整えると、兄弟子の手首を狙い袋竹刀を叩きつけた。
パァーン
「それまで。」
須針師匠の掛け声が響く。試合終了の合図である。
「勝者、エギル。」
勝敗の判定が出ると僕と兄弟子は、一旦元の間合いに戻り袋竹刀を納刀し、お互いに礼をし、更に須針師匠にも礼をし、再び向き合い、お互いを見ながら場外と呼ばれる場所まで下がると更に礼をした。
パチパチパチ
すると拍手が聞こえて来た。誰が拍手しているのだろうと思って、周りを見回してみると、王宮の入り口の所にお爺様と知らないお爺様と同じぐらいの年齢の男性が立っており、さらお婆様と、お婆様によく似た顔の女性が立っていたのである。
僕は、誰だろと思いながら、須針師匠の号令を受け、兄弟子たちと共に正座をすると、須針師匠に礼をした。
「ありがとうございました。」
そう言うと僕は、立ち上がりお爺様たちの所へと向かったのであった。
時は、少し遡る。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王宮 謁見の間 夜
「ようこそ我が国へ、歓迎いたします叔父上、叔母上。」
そう言ったのは、〔デイ・ノルド王国〕現国王、アランディア・フォン=フェニア=ノルドである。
「アラン直々の出迎えとは、わしもうれしく思うぞ。」
そう言って、「かかかかかっ。」と笑う男性は、数日前に海洋都市〔アルカニス〕に停泊した純白の帆船より降りてきた人物であった。
「今回は、仲介を引き受けていただき、誠にありがとうございます。」
アランがそう言うと、その初老の男性は、こう返した。
「何、これが我が国の使命だ。気にする必要はない。」
「はっ、ありがとうございます。」
アランは、そう言うと、手を叩いた。すると謁見の間の扉が開き、侍女たちが出て来た。
「叔父上たちを、客間にご案内してくれ。」
アランは、そう指示すると、初老の人物にこう言った。
「では、叔父上、叔母上、ごゆっくりお休みください。また明日の昼食会でお会いしましょう。」
「うむ、ではなアラン。」
そう言って初老の人物は、侍女たちに伴われて謁見の間を後にしたのであった。
時は、また元の時間に戻る。
「おはようございます。お爺様、お婆様。」
僕は、二人に朝の挨拶をした。すると二人も挨拶を返してくれた。
「うむ、おはよう。エギルよ。」
「おはよう、エギル。」
挨拶を終えた二人は、一緒にいる人たちを紹介してくれた。
「紹介しよう、エギル。こちらの男性は、私の友であり、エギルの大叔父でもある、〔スカイテール連邦王国〕の前国王、ディスダベル・ドゥ・ネクロンシアだ。」
お爺様は、そう言うと「こちらが、エギルだ。」といって男性に僕を紹介してくれた。すると男性は、僕の眼の高さまで腰を落とすと、にこりと笑いこう言った。
「初めまして、エギル。君の大叔父である、ディスダベルだ。気軽にダベルと呼んでくれ。」
「はい、初めまして。ダベル大叔父上。エギルと言います。お会いできて光栄です。」
と僕が、返事を返すと、大叔父上は、「かかかかっ」と笑いながら頭を撫でてきたのであった。
するとお婆様の隣にいた女性がひょこりと出てきて、僕をヒョイと持ち上げるとクルクルと回りだしたのであった。
「ワァァァァァァ―、目が回る。」
と僕が言うと女性は、「ごめんなさい」といって回るのをやめ僕を地面に降ろすと、自己紹介をしてくれた。
「初めまして、エギル。私の名前は、アヤネ・ドゥ・ネクロンシア。貴方のお婆様の妹よ。だから貴方には、大叔母にあたるのよ。よろしくね。」
そう言うとアヤネ大叔母上は、僕をまた強く抱きしめたのであった。僕は自分も自己紹介をしなければいけないと思い、強く抱きしめられながらも、こう言った。
「初めまして、アヤネ大叔母上。エギルです。お会いできて光栄です。苦しいです、離してください。」
そう言うと大叔母上は、「あら、ごめんなさい。」と言いながら抱擁を解き、その代わりに頭を撫でてきたのであった。
暫く大叔母上が満足するまで頭を撫でるに付き合った後、僕は、お爺様たちと食事をし、その席で何故、永世中立国家である〔スカイテール連邦王国〕の前国王が、この国にいるのかを聞いた。
すると、とある解答が、返ってきて僕は、「ヘェ~、そんなんだ。」と言ったのであった。
それから数日が経過したある日、とある会議が、王城で始まろうとしていた。
〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 合議の間
この日、〔デイ・ノルド王国〕王城にある合議の間に集まったのは、〔デイ・ノルド王国〕を代表し、王国宰相であるカマル・フォン・エスカルパ―、王国外務卿であるイサミル・フォン・シーハイル、そして王国公爵であるガーベリウム・フォン・ノグランシアの三名と外交官などの事務方であった。
対する〔ノース・ザルド王国〕は、王国の代表として駐〔デイ・ノルド王国〕特命全権大使であるオーベルト・ハームノイス、王国外務長であるオーランド・フォン・カタンベリル、そして外交官の事務方であった。
それぞれが所定の席に着きとある人物の到着を持っていた。すると合議の間の扉が開きその人物が入ってきた。
出席者全員が立ち上がり、その人物に礼をする。その人物は、合議の間に設けられた二つの国の机と机を繋ぐ机に向かうとそこに置かれた椅子に着席した。
それを確認した両国の出席者も礼をやめお互いに正面を向いたのであった。
すると先ほど席に着いた人物が立ちあがると、こう宣言した。
「これより、条約の締結交渉を執り行う。議事進行及び仲介は、〔スカイテール連邦王国〕前国王、ディスダベル・ドゥ・ネクロンシアが行う。異議のある者は起立せよ。」
その言葉を合図に出席者全員は、ダベルに一旦礼をすると着席したのであった。
「異議なしと認め、これより開会する。」
そう言うとダベルは、机に置かれていた木槌を打ち鳴らしたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる