ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第21話 謁見と接見

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 〔ノース・ザルド王国〕首都 〔ザイルシティー〕王城 謁見の間

「まもなく陛下が、いらっしゃいます。」

 謁見の間に先に来ていた侍従長から言葉であった。わしは、服装の乱れがないかを確認し、陛下の到着を待った。
すると兵士が、槍の石突を廊下に打ち付ける音が聞こえて来た。

 ガンガンガン。

 わしは、姿勢を正すと頭を垂れて陛下の入ってくるのを待った。そして兵士の掛け声が響いた。

「〔ノース・ザルド王国〕国王ピスグリス・ドゥ・ユーベル・ザルド陛下の御入来。」

 陛下は、いつものようにのっそりとした動きで、玉座に向かい座ると、手に持っていたゴブレットを呷り、「ヒック」とゲップを出すと、こう言って来た。

「ディニールよ、いったい何の用で謁見を申し込んだ。申してみよ。」

「はっ、陛下にお尋ねいたします。条約締結後の条件についてでございます。」

 わしは、回りくどい言い回しはせず直球勝負に出ることにした。しかし陛下は、何のことだか分かっていないようでこう言って来た。

「それが、如何した。その様な些末な問題、其方が処理することであろう。違うか?」

「では、何故陛下の裁可前にはなかったはずの条件が付けくわえられているのです。それも『人質の提供』などと言う条件が?」

 わしが、突っ込んだ質問をすると陛下は、「あ~、そのことか。」と言うとこう言い放った。

「朕が、あの生意気な国王から美しき王妃たちを手に入れるためよ。」

 わしは、その答えを聞いて「やはり、そうか。」という感想しか出てこなかった。わしは、再び心の中で我が朋友であった先王陛下に「すまぬ、友よ。」と詫び、玉座にふんぞり返るバカを睨め付けた。
そしてその視線も感じていないのか、陛下は、わしにこんな事を言って来た。

「〔デイ・ノルド王国〕との交渉は、どうなっておる?」

 わしは、その不躾な質問に心の底から怒りが込み上げて来た。そしてこのバカに言い放ったのであった。

「貴様の所為で……貴様の所為で、交渉はご破算だ。我が国を滅ぼすつもりかこのバカが。」

 しかし、わしがそう言った後に聞こえて来たのは、こんな戯言であった。

「交渉は、ご破算になったのだな。では進軍だ。あの国も美しき王妃たちも奪い取るのだ。ははは。ウムウムウムウム。プッハー。ヒック。」

 わしは、その戯言を宣ったこのバカを殴ろうとし玉座に近づいた。しかしわしの後ろに気配を感じ振り向くと、黒ずくめの何者かがおり、わしは何かをされたのか急に意識が亡くなったのであった。





 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王宮 後宮 応接の間

 僕ことエギルは、今すごく憂鬱な気分になっていた。何故そんな事態に成ったのかと言うと、僕の目の前に座っている女性の所為であった。
彼女の名前は、ステファニー・フォン・キタニアン。歳は、二十歳である。彼女がこの応接の間にやってきたのは、僕たちとの接見のためだ。僕と姉上もいったいどんな女性が父上の王妃として迎えられるのかを楽しみにしていた。
母上たちも、父上を共に支える新しい仲間が出来ると思い、お腹が大きくなってきている状態にも係わらずこうして来ていたのだが、その期待は、いとも簡単に壊れたのであった。
 現れたステファニー公爵令嬢は、母上たちよりも煌びやかすぎるドレスを身に纏い、香水をこれでもかという具合に振りかけた状態で現れたのである。
そして僕と姉上が同席しているのを見ると一瞬物凄い形相になり僕らを威嚇してきたのである。
そして母上たちの許可もなくソファーに座るとこう言い放った。

「わたくしは、国王陛下の一番の寵愛を賜り、必ずや跡継ぎを生んで見せますわ。お二人は、どうぞごゆるりとなさってくださいませ。オーホホホホホホホホホ。」

 僕たちは、この接見でその高飛車な物言いにかなり心配になったが、父上と枢密会議が決めたことなので従うしかなく、父上とこの高飛車令嬢との結婚の日を迎えたのであった。
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