ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第24話 未遂と奇襲

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 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王宮 中庭

 ヒューン ドン

 僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、ユナ師匠の指導の元、魔法と魔術を交互に行使し、それを遠くに設置した的に当てるといった訓練に勤しんでいた。
この訓練は、魔導師になる者に必要な訓練であり、さらに自分の魔力や魔力保有量を増やす事なるのである。
しかし、先程からこの訓練をしているのだが、的に当たる確率が、昨日より低下しているのであった。
するとユナ師匠もそれを感じたのかこう言って来た。

「エギル、ストップよ。一旦、休憩にしましょう。」

「はい、分かりました。」

 僕は、ユナ師匠の言葉に従い、少し離れた場所に行くとそこに据え付けられている椅子に腰掛け休憩を取ることにした。

「フゥ~。」

 と僕が、ため息をつくと隣にユナ師匠が腰掛けてきて、こう聞いてきた。

「今日は、魔法と魔術の錬成も精度も芳しくないけど、エギル、何か気になることでも有るのかしら?」

「うん、実はあるんです。」

 と僕は、答え、昨日の夜から感じていたことを話した。

「異変を感じ取ったのは、昨日の夜からです。後宮内に僕が会ったこともない気配が存在していると感じたんです。でその事が気になって、眠りが浅くなって、今の状態になっているんです。」

 それを聞いたユナ師匠は、さらにこう聞いてきた。

「その気配を探ろうとした?」

「いえ、探ってません。探ちゃいけないと感じたので。」

 僕が、そう答えるとユナ師匠は、僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でるとこう言って来た。

「大変、よくできました。」

「では、今から教える方法でその気配を探ってみてください。これならば相手に悟られることなく探ることが出来ます。」

 そうユナ師匠は、言って来た。僕もこの気持ち悪さから解放されたいので、「はい、教えてください」と言ったのであった。

 それから1時間ぐらいが経ち僕は、後宮に戻ってきた。相変わらず誰か分からない気配を感じるが、それを一旦意識の外に追いやり自室へと入ったのであった。
そして自室の椅子の一つに腰掛け、ユナ師匠から教えて貰った方法を開始したのであった。
その方法とは、周囲の魔力や気に自らを溶け込ませ、相手に感知されなくするものである。これは魔導師や九我流などの使い手のごく限られた者たちにしか扱う事の出来ない者である。
僕は、目を閉じ周囲の魔力と気に僕の魔力と気を同調させ、更に全く何も無いように溶け込ませていった。
そして違和感を感じていた場所にその状態のまま意識を向けるとそこには、男が居り、何かを探っている様子であった。
するとその男は、何かに反応し、自分がいる場所の下をのぞき込むと、何やらメモを取り出し、書き込みを行ったのである。
僕は、それが気になりその男の入る場所の下に誰が居るのかと思いそちらに意識を向けると、そこには、母上たちが居り何やら談笑をしていたのであった。

 僕は、この男が母上たちを狙っている者と考え、母上たちを助ける算段を付けるため教えて貰った離脱方法を使い、気配を探るのをやめ、そしてユナ師匠と須針師匠、さらに森番長にも助力を請う為に自室を出たのであった。


 それから数時間が経過し僕たちは、食事を終え、湯浴みをし、ベットへと向かい親子四人で寝たのであった。
そしてその気配が、動き出した。僕は、再び同じ方法で見つけられない様にするとその気配を探りながらベットを抜け出すと、寝る前に手にしていた真剣の刀を鞘から抜き、身体強化を施しその男が居る場所に向かって思いっきりぶっ刺したのであった。

「ギャア―――」

 という声が、天井裏から響くと、その刺した場所から少し離れた場所の天井板が外されると、男が足を庇いながら出てきてベットの方へと向かったのである。
そしてベットで寝ている母上を捕まえるとこう要求してきた。

「武器を捨てろ、俺をここから逃がせ」

と言って来たが僕は、そんな事には返事をせず天井に刺さっている刀を抜くと、九我流の構えを取ったのであった。
すると母上を人質にした男がこう言って来た。

「近づくな、こいつを殺すぞ。」

 しかし僕は、一歩踏み出すと、こう言った。

「あなたは、ここから二度と出られない。」

 そう言って九我流の技を発動した。

 「九我流、三ツ和の技」

 それは、相手にこう見えていた。「僕が刀を後ろに引き、上体を斜めに下ろし、さらに足を踏み出した状態になっていた。そして次の瞬間目の前に刀の峰が迫っている間合いまで詰め寄られ首に衝撃を受けてた」と言っているのである。
そして僕は、こう言った。

「斜鈍閃」

 そういって刀を鞘に納めると母上を人質に取っていた男は、気絶し倒れたのであった。すると部屋の中に女性近衛騎士で編成された部隊が突入し、男を拘束すると連れて行ったのである。
さして後に残されたのは、母上とママ様と姉上であったが、彼女たちは一言も発しないのである。
僕は、部屋へと戻り指をスナップさせると三人の姿は、人形へと変わっていたのである。
そして人形たちが停止すると扉が開きユナ師匠と須針師匠が姿を見せた。
そして二人は、それぞれこう言った。

「うむ、見事だ。 免許皆伝にまた一歩近づいたな。」

 と、須針師匠が言い。

「相手に気取られることなくよく操りました。」

 と、ユナ師匠が言ったのであった。

 実は、母上たちにも襲撃者が居る旨を伝え、襲撃者を欺くためそれぞれの魔力を先ほどの人形たちに注いでもらい僕が、人形を操作し母上たちがここにいるように偽装したのであった。
すると部屋の扉が再び開き、今度はようやく本物の母上たちが現れると、僕の所に来てしゃがみ込むとギュッと三人同時に抱きしめられたのであった。
しかし僕は、その苦しさにこう言ってしまった。

「母上たち、苦しいですから、離してくださいー。」

 それを聞いた母上たちは、抱擁を解き、僕と見つめ合うとコロコロと笑い出し、僕もそれに釣られて笑い出したのであった。
そして師匠たちに帰ってもらい僕たちは、四人仲良くベットへと入り眠りに就いたのであった。

 そして、次の朝僕たちは、思いもよらない知らせに遭遇するのであった。

『国境砦、奇襲により陥落。被害、現在確認中。民間人及び守備部隊、要塞に撤退中。』
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