ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第30話 発見と接触

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 〔ノース・ザルド王国〕北方 とある町端 古びた教会跡

「ウ~、寒い。今日も冷えるな~。」

 そう言って僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、教会の尖塔に向かって登っていた。手には、熱々の食べ物と温かい飲み物を乗せたトレイを持ちながらである。
このトレイに乗っている食べ物は、尖塔で見張りをしてくれている部隊の兵士たちの物である。

 トン トン トン トン トン

 階段を上がり鐘が吊るされている部屋に出ると、外へと出る扉に向かい一旦トレイを床に置いて、扉を開け、再びトレイを持ち、外へと出たのであった。

「寒い中、見張りご苦労様。二人とも食事を持ってきたよ。」

 僕が、そう呼びかけると声を聞きつけて見張りをしていた二人の兵士が、慌てて此方へとやって来た。

「殿下、この様な場所にお出になっては、いけません。何かあったらどうするのですか?」

 「そうでごいます。それに食事などは、自分で運びますので、殿下は、この様な雑事をおやりになる必要は、ございません。」

 兵士たちは、僕の所に来るとそのように言って来たが、僕は二人が言っていることを一旦無視して、トレイを床に置いてあった樽の上に置くと振り返り、二人にこう言った。

「そんな事よりも二人が、食事を摂ることが大事な事じゃないの。交代まで後1時間ぐらいあるけど、体を温めて元気になっておくことが、必要だと思うけど?」

 そう言うと二人は、「「は~あ、心得ました。」」と不満そうに答えた。二人は、置いたトレイの所に向かうと食器を取り見張りをしながら食べようとした。これでは休憩にならないと思った僕は、二人が食事をする20分の間、見張りを変わると言うと、二人はまた小言を言って来たが、「僕も部隊の一員だ。」と黙らせ、食事を摂らせその間の見張りを開始した。
 僕は、魔法式を展開させるとこう唱えた。

「周囲を見る者、遠くの景色を映す者、我の目は見定める者、オールディレクション。」

 すると僕の頭の中に映像が浮かび、尖塔を中心として半径3kの範囲が写し出された。僕は、その状態で周囲を観察し何か不審な事が起きていないか監視をした。
そしてしばらくして見張りの二人が食事を終えたのを確認すると、僕は魔法を解除しトレイを持って中に戻ろうと思ったとき、ふと聞くべき事が思い浮かんだので、その事について尋ねた。

「森番長は、戻ってきた?」

「いえ、まだでございます、殿下。戻られたら、お知らせいたします。」

 そう言って兵士の一人が、答えてくれた。

「うん、分かった。」

 と僕は、そう言うと尖塔の中に戻り階段を降りて、部隊の他のメンバーがいる広間へと戻ったのであった。
暫くして、先程の見張りの兵士たちの交代の兵士が尖塔へと昇って行き、代わりに先程の兵士たちが下りてきて僕に礼をして仮眠を取るため設置したテントへと入っていた。
それからすぐの事であった。
上が、騒がしくなったので、何かあったのかと持っていると、交代した兵士の一人に付添われて老年であるがピシッと背筋が伸び、物腰が柔らかな老人が下りて来た。
そしてその老人は、僕の前へ進み出ると膝まづいて礼をした。

「ただいま戻りましてございます、殿下。」

「うん、ご苦労様。森番長。」

 僕は、そう返した。そうこの人こそ我が〔デイ・ノルド王国〕王室直轄諜報機関「フォレスト・アイズ」通称「森番」の長、タオーメルス・ズバニール。年齢60歳である。

「はっ、有難き幸せにございます。」

 僕の労いに森番長は、そう答えると、本題へと入った。

「遅くなって申し訳ありません、ようやくかの人物の居場所を特定いたしました。」

 僕は、それを聞いてこの作戦の約30%が達成されたと確信し、こう確認した。

「あの方は、生きていたのか?」

 その問いに対して森番長は、こう答えた。

「はい、お元気に過ごされておられました。」

 その答えに僕は、森番長にこう告げた。

「では、夜に会いに行くとしよう。繋ぎは?」

「モルロが残り接触しております。」

「了解。」

 僕は、森番長の返答に頷き、夜の接触に備えて準備を開始した。

 それから十数時間が過ぎた頃、教会にとある人物が戻ってきた。その人物も兵士に付添われながら降りてくると僕に対し膝まづいて礼をした。

「殿下、ただいま戻りました。」

「うん、ご苦労様。首尾は?」

「はっ、上々でございます。」

 そう答えたのは、開戦前に〔ノース・ザルド王国〕へと潜入して貴重な情報を取集してくれたロードスト・モルロであった。
今回の作戦の為、森番長と共に参加をしてくれたのであった。

「では、お会いになると?」

 僕が聞くとモルロは、こう答えた。

「はい、ただし少人数でとの事です。」

「うん、了解した。」

 僕は、そう頷くと服の上から王族の身分を示す肩掛けマントであるペリースを身に着け、そして更に黒衣のローブを身に纏いモルロに先導されて教会から町へと向かいその人物が待つ場所へと歩いて向かい、そしてその人物と接触したのであった。

 僕はローブを脱ぎ、ペリースに描かれている紋章を見せ名乗った。

「初めてお会いいたします、〔デイ・ノルド王国〕第一王子、エギル・フォン=パラン=ノルドと申します。」

 そう自己紹介をし、国際儀礼で他国の王族に対してする礼を行うと、その人物も同じ礼を返してきてこう名乗った。

「こちらこそお初にお目にかかります。〔ノース・ザルド王国〕元第三王子、ハイディ二ル・ドゥ・カールベル・ザルドです。」

 そうこの人物こそ僕が、この戦争の終結に欠かせないと考え、そして更に我が国の盟友となる人物として選んだ人であった。
僕たちは、握手を交わし彼の住む家へと入りこれからの事について話し合いを始めたのであった。
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