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第4話 宇宙散歩
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妙土はベッドから離れ、男からゆっくりと距離をとった。
不審者を見るような目つきで全身これ警戒体勢の妙土に男は苦笑する。
「何かするなら、あなたが寝ている間にとっくにしていたと思うけど」
・・・それもそうだ。
妙土は体の緊張を少しゆるめた。
そして、彼はあの危機的状況を救ってくれた恩人になるのではないか。
「あの・・・助けてくれて、ありがとう・・・ございます」
男の美しさと気品のある物腰に気後れして思わず敬語になる。
あらためて男を見ると、スラッとした長身で、モデルのようにバランスの良いしなやかな体躯をしていた。
年齢は20代ぐらいであろうか。
サラサラな金髪にアクアマリンを落とし込んだような碧眼。
明らかに日本人ではないのに、流暢な日本語を話すことに少し違和感がわく。
「説明をしてほしいって顔だよね。話すことは山ほどあるんだけど、何から話そうかな・・・」
「あなたは誰で、ここはどこなのかをまずお願いします!」
急に妙土が自己主張をしてきたことに男は驚いたような顔をしたが、フッと微笑んだ。
「いいよ。では、話す場所を変えようか」
男がパチッと指を鳴らす。
電車の中でも感じたあたたかいものを全身に感じると、妙土はまた自分の中心に急速に体全体が集まっていくような気がして・・・
気づいた時には男とともに宇宙にいて地球を見下ろしていた。
二人はガラス張りの球体のような物体の中にいて、360度、宇宙を見渡すことができた。
宇宙には行ったことがないけれど、写真で月から見える地球を見たことがある。
写真通り、宇宙の闇に浮かび上がる地球は白いマーブル状の模様がついた青い宝石のようだった。
実際に見る想像以上の美しさに妙土は息を呑んだ。
「きれいだろう。ここから見る光景が好きでさ」
男が右手の指をクルクル回転させると、妙土と男を包む燐光をかすかに放つ球体がフワッと動いていく。
「これってイリュージョンじゃなくて、本当に宇宙にいるんですよね」
「本当の宇宙だよ。ニューヨークのホテルから移動したんだ。ニューヨークの空間と宇宙の空間を一瞬つなげてね。瞬間移動をしたと思ってくれて良いよ」
妙土はゲンナリする。
どうやら正真正銘のニューヨークにいて、今は宇宙にいるらしい。
しかも、宇宙にいるのに呼吸がちゃんとできてるし。
神様、私は魔法使いか超能力者に拉致されたのでしょうか。
「僕の名はリーヴィ・・・いや、長いからやめておこう。カイルと呼んでもらおうかな」
名前を思いっきり言い直しましたね。
リーヴィとカイルじゃまるで関連性がないんですけど・・・。
「カイル」はミドルネームとか?
もう、なんなんだ。
「天宮妙土さん」
突然、フルネームを呼ばれて妙土の背筋がピンとする。
「あなたの素性が敵にバレたので危険回避のため日本から脱出したんだ。あなたのご両親も危険にさらされるしね」
「パパとママも狙われてるの!?」
「いや、狙われているのはあなただから、あなたと離れていれば、ご両親は安全だよ」
両親が無事ならばそれで良い。
けれど、離れていないと安全でない、ということは、このままでは家に帰れないではないか。
朝の襲撃を、思い出して妙土は身震いした。
地球の重力に逆らってあんな重い電車を空高く引き上げるなんて人間のすることじゃない。
電車の中にいた人たちはどうなったのだろう。
あの後に謎の飛来物で攻撃されたし、一体どうなっているんだ。
到底、自分で防衛できるレベルではない。
「どうして私が狙われるの。敵って誰なの」
「ちょっと込み入った話になるんだけど・・・」
カイルが語り始めた。
不審者を見るような目つきで全身これ警戒体勢の妙土に男は苦笑する。
「何かするなら、あなたが寝ている間にとっくにしていたと思うけど」
・・・それもそうだ。
妙土は体の緊張を少しゆるめた。
そして、彼はあの危機的状況を救ってくれた恩人になるのではないか。
「あの・・・助けてくれて、ありがとう・・・ございます」
男の美しさと気品のある物腰に気後れして思わず敬語になる。
あらためて男を見ると、スラッとした長身で、モデルのようにバランスの良いしなやかな体躯をしていた。
年齢は20代ぐらいであろうか。
サラサラな金髪にアクアマリンを落とし込んだような碧眼。
明らかに日本人ではないのに、流暢な日本語を話すことに少し違和感がわく。
「説明をしてほしいって顔だよね。話すことは山ほどあるんだけど、何から話そうかな・・・」
「あなたは誰で、ここはどこなのかをまずお願いします!」
急に妙土が自己主張をしてきたことに男は驚いたような顔をしたが、フッと微笑んだ。
「いいよ。では、話す場所を変えようか」
男がパチッと指を鳴らす。
電車の中でも感じたあたたかいものを全身に感じると、妙土はまた自分の中心に急速に体全体が集まっていくような気がして・・・
気づいた時には男とともに宇宙にいて地球を見下ろしていた。
二人はガラス張りの球体のような物体の中にいて、360度、宇宙を見渡すことができた。
宇宙には行ったことがないけれど、写真で月から見える地球を見たことがある。
写真通り、宇宙の闇に浮かび上がる地球は白いマーブル状の模様がついた青い宝石のようだった。
実際に見る想像以上の美しさに妙土は息を呑んだ。
「きれいだろう。ここから見る光景が好きでさ」
男が右手の指をクルクル回転させると、妙土と男を包む燐光をかすかに放つ球体がフワッと動いていく。
「これってイリュージョンじゃなくて、本当に宇宙にいるんですよね」
「本当の宇宙だよ。ニューヨークのホテルから移動したんだ。ニューヨークの空間と宇宙の空間を一瞬つなげてね。瞬間移動をしたと思ってくれて良いよ」
妙土はゲンナリする。
どうやら正真正銘のニューヨークにいて、今は宇宙にいるらしい。
しかも、宇宙にいるのに呼吸がちゃんとできてるし。
神様、私は魔法使いか超能力者に拉致されたのでしょうか。
「僕の名はリーヴィ・・・いや、長いからやめておこう。カイルと呼んでもらおうかな」
名前を思いっきり言い直しましたね。
リーヴィとカイルじゃまるで関連性がないんですけど・・・。
「カイル」はミドルネームとか?
もう、なんなんだ。
「天宮妙土さん」
突然、フルネームを呼ばれて妙土の背筋がピンとする。
「あなたの素性が敵にバレたので危険回避のため日本から脱出したんだ。あなたのご両親も危険にさらされるしね」
「パパとママも狙われてるの!?」
「いや、狙われているのはあなただから、あなたと離れていれば、ご両親は安全だよ」
両親が無事ならばそれで良い。
けれど、離れていないと安全でない、ということは、このままでは家に帰れないではないか。
朝の襲撃を、思い出して妙土は身震いした。
地球の重力に逆らってあんな重い電車を空高く引き上げるなんて人間のすることじゃない。
電車の中にいた人たちはどうなったのだろう。
あの後に謎の飛来物で攻撃されたし、一体どうなっているんだ。
到底、自分で防衛できるレベルではない。
「どうして私が狙われるの。敵って誰なの」
「ちょっと込み入った話になるんだけど・・・」
カイルが語り始めた。
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