天の龍 地の女神

常盤 舞子

文字の大きさ
16 / 60

第15話 夢の続き

しおりを挟む
ギリシャ神話のような地下神殿のような場所。
・・・ああ、いつもの夢だ、と妙土たえとは思う。
夢の中で妙土はリーネ族最後の女王、リーザだ。
妙土の前世であるリーザは、ウェーブがかった腰を覆うほどの豊かな金髪と形の良い朱唇を持つ。
アクアマリンを落とし込んだような大きな瞳は息子であるカイルとよく似ている。

リーザと向き合う魔王ラディリオンは、月のない夜を思わせるような漆黒の髪に瞳。
美しく整った目鼻立ちは、どこか冷ややかで、感情を感じさせない。

リーザとラディリオンは静かに見つめ合い、対峙する。

おもむろにリーザが右手のひらを自分の斜め前に出すと、手のひらからゆっくりと青白く光る刀身が出てきた。
細身の長剣で柄には青い宝石がはめ込まれている。
バルムンクの剣。
神代より神々からリーネ族に受け継がれ、神々の地上代行者として認められていることを象徴する神剣である。

リーネ族であれ、魔族であれ、バルムンクの剣が振るわれたなら、致命的な傷を負い、死に至る、恐るべき魔力を宿す魔剣でもある。

刀身全体が姿を現すと、リーザは剣の柄を握り、魔王ラディリオンを見据えた。
ラディリオンの妹であるラビリティアが兄をかばうように前に出てきてリーザを睨む。

リーザの体が光に包まれると一瞬にして武装した姿に変わった。
ラビリティアも同様に武装する。

虎視眈々と地上の覇権を狙っている魔族。
多種多様な種族から構成されている魔族は一枚岩ではない。
カリスマ性と統率力のある魔王ラディリオンを倒せば、寄せ集めの魔族の結束力など瓦解するだろう。

地上を守るためには躊躇すべきではない。
自分はリーネ族の女王として、魔王ラディリオンを殺し、長きにわたる神魔の戦いに終止符を打たなければいけない。
それが戦いに傷つき倒れていった同胞たちへのはなむけであろう。
リーザは間合いをジリジリと詰めていくが、迷いは消えない。

バルムンクを使えば、魔王ラディリオンは確実に死ぬだろう。
だが、私はこの男が血を流し、地に伏するところなぞ見たくない。
リーザの苦渋に満ちた思いが妙土に流れてくる。
リーザが何かを決断したところで、妙土は眠りから覚めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...