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第51話 二人の兄
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魔界の王宮に連れていかれたリーナは、途中で意識を取り戻したが、状況を把握するため、気絶しているフリをして様子を伺っていた。
どうやら自分を拐ったのは魔界の王子ランティスのようである。母リーザの最初の息子で、自分とカイルの兄に当たる。
乳母ネリーニからランティスのことは聞いていたが、会うのは初めてである。
リーナとカイルは極力、魔界との接触を避けていたので、今までランティスに遭遇したことはなかった。
ランティスはどうやらリーナを自分の妃にするつもりのようである。
「 君は僕の運命の女性だ」とか「同じ血を分けた兄妹だからこそ、わかり合える」とかランティスはリーナに囁く。
アホか!
ただでさえ、超ド級のマザコン兄貴に顔形がそっくりでイラつくのに、しゃべり方もやることもバカっぽい。妻になるなんて絶対に無理である。
イラつきが顔に出ないよう、リーナは意識のないふりをするのに苦心した。
助けを求めるような相手もいないので、自分で何とか逃げなければならない。
ふとリーナの脳裡をブランドンの顔がかすめだが、ふるい払うように、彼の面影を自分の中の奥底に沈めた。
リーナに力の使い方や戦い方を教えてくれたブランドンにいつの頃からかリーナは惹かれ、気づけば彼への思いで息が詰まりそうだった。
しかし、彼の心は母リーザだけを向いている。
ブランドンは魔王に魅入られたリーザに今なお深く忠誠を誓い、その子どもたちを養育してきた。
ブランドンが永遠にリーナの手に入らないのはわかっている。
以前、ヤケになって、ブランドンに迫ったこともある。しかし、リーナのありったけの思いを彼はかわした。リーナが傷つかないように、精一杯に自分がおどけて。
彼にとって、リーナは大切な主君の娘であり、それ以上にはなりえない。
どうあがいても、ブランドンはリーナのものにならないということがわかり、リーナはブランドンと距離をおいた。
リーザをめぐる父ラディリオンとカイル、そして、ブランドンの関係。
悔しいが、自分は単なる傍観者なのだ。
彼らの関係はリーナが産まれる前からの因縁であり、リーナが立ち入る隙はないのだろう。
だったら、彼らがどう決着をつけるのか最後まで見届けようと思う。
ランティスはリーナに刺激を与えて覚醒を促した。それをきっかけに、リーナは逃げ出そうとしたが、体がしびれて思うように動かない。
リーナの体が自由にならないことを承知の上で、ランティスは服の上からリーナの胸の頂をつまみ、弄ぶ。
このバカが!
そう叫びたいのを我慢して、リーナは子供に言い聞かせるように、ゆっくりとしゃべった。
「冗談はやめてくれないかしら、オニイサマ」
リーナはランティスを睨む。
見れば見るほどランティスはカイルに似ていて気持ち悪い。
「怒った顔もキレイだね、リーナ。ずっと君に会いたかったんだよ」
「よく今まで行き逢わなかったものね。あなたの力なら、ソロモンの指輪の力で隠れていても、探し人の一人や二人、見つけられるんじゃない?」
「僕はラビリティア叔母上に地上への介入を止められているんだ。僕がアルカナ「死神」なのは知っているかな。
僕は地上の生命体からエネルギーを奪って使う力が強いんだ。だから、叔母上に釘を刺されていてね。
地上代行者であるリーネ族が魔族を討つ口実になるから必要以上に地上にいるものたちに手を出すな、とね。特に人間には」
「・・・」
「おもしろいよね。魔族が地上の人間たちを脅かすと、リーネ族は3種の神器を使い僕たちを攻撃するんだ。人間たちはディーンの意思に守られている」
「ディーンの意思・・・」
「この世界のしくみを作ったディーン神の思惑の中で僕たちは生きている。ディーンは人間たちをことのほか愛して守ろうとしていると思わない?なんでだろうね」
知るか!
リーナは睨みながら、この男からどう逃げようか画策した。
どうやら自分を拐ったのは魔界の王子ランティスのようである。母リーザの最初の息子で、自分とカイルの兄に当たる。
乳母ネリーニからランティスのことは聞いていたが、会うのは初めてである。
リーナとカイルは極力、魔界との接触を避けていたので、今までランティスに遭遇したことはなかった。
ランティスはどうやらリーナを自分の妃にするつもりのようである。
「 君は僕の運命の女性だ」とか「同じ血を分けた兄妹だからこそ、わかり合える」とかランティスはリーナに囁く。
アホか!
ただでさえ、超ド級のマザコン兄貴に顔形がそっくりでイラつくのに、しゃべり方もやることもバカっぽい。妻になるなんて絶対に無理である。
イラつきが顔に出ないよう、リーナは意識のないふりをするのに苦心した。
助けを求めるような相手もいないので、自分で何とか逃げなければならない。
ふとリーナの脳裡をブランドンの顔がかすめだが、ふるい払うように、彼の面影を自分の中の奥底に沈めた。
リーナに力の使い方や戦い方を教えてくれたブランドンにいつの頃からかリーナは惹かれ、気づけば彼への思いで息が詰まりそうだった。
しかし、彼の心は母リーザだけを向いている。
ブランドンは魔王に魅入られたリーザに今なお深く忠誠を誓い、その子どもたちを養育してきた。
ブランドンが永遠にリーナの手に入らないのはわかっている。
以前、ヤケになって、ブランドンに迫ったこともある。しかし、リーナのありったけの思いを彼はかわした。リーナが傷つかないように、精一杯に自分がおどけて。
彼にとって、リーナは大切な主君の娘であり、それ以上にはなりえない。
どうあがいても、ブランドンはリーナのものにならないということがわかり、リーナはブランドンと距離をおいた。
リーザをめぐる父ラディリオンとカイル、そして、ブランドンの関係。
悔しいが、自分は単なる傍観者なのだ。
彼らの関係はリーナが産まれる前からの因縁であり、リーナが立ち入る隙はないのだろう。
だったら、彼らがどう決着をつけるのか最後まで見届けようと思う。
ランティスはリーナに刺激を与えて覚醒を促した。それをきっかけに、リーナは逃げ出そうとしたが、体がしびれて思うように動かない。
リーナの体が自由にならないことを承知の上で、ランティスは服の上からリーナの胸の頂をつまみ、弄ぶ。
このバカが!
そう叫びたいのを我慢して、リーナは子供に言い聞かせるように、ゆっくりとしゃべった。
「冗談はやめてくれないかしら、オニイサマ」
リーナはランティスを睨む。
見れば見るほどランティスはカイルに似ていて気持ち悪い。
「怒った顔もキレイだね、リーナ。ずっと君に会いたかったんだよ」
「よく今まで行き逢わなかったものね。あなたの力なら、ソロモンの指輪の力で隠れていても、探し人の一人や二人、見つけられるんじゃない?」
「僕はラビリティア叔母上に地上への介入を止められているんだ。僕がアルカナ「死神」なのは知っているかな。
僕は地上の生命体からエネルギーを奪って使う力が強いんだ。だから、叔母上に釘を刺されていてね。
地上代行者であるリーネ族が魔族を討つ口実になるから必要以上に地上にいるものたちに手を出すな、とね。特に人間には」
「・・・」
「おもしろいよね。魔族が地上の人間たちを脅かすと、リーネ族は3種の神器を使い僕たちを攻撃するんだ。人間たちはディーンの意思に守られている」
「ディーンの意思・・・」
「この世界のしくみを作ったディーン神の思惑の中で僕たちは生きている。ディーンは人間たちをことのほか愛して守ろうとしていると思わない?なんでだろうね」
知るか!
リーナは睨みながら、この男からどう逃げようか画策した。
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