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飲み会の開催決定通知

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「戻りましたわ」

「お疲れ様、マリー。ユリーシャの案内は大変だったろう?」

「いえ……あの、ユリーシャ様が……フェルディア様と一緒に今夜飲もうとおっしゃっていらっしゃいました」

 私の顔は上手く微笑むことができているでしょうか?

「あー! 久しぶりだもんな! マリーも一緒に行こう?」

 そうおっしゃるフェルディア様の笑顔にはやましさなど感じません。

「私もご一緒でよろしいのでしょうか?」

「もちろんだよ! 向こうもそのつもりだと思うし! ……あぁ、ごめん、心配させたね」
 そうおっしゃって、私の髪をさらりと撫で上げられます。手が優しくて思わずうっとりしてしまいました。

「その顔。ちょっと可愛すぎるからやめてもらってもいいかな? 大丈夫だよ。マリーの不安は、僕には絶対に有りえない心配だから」

「え? あ、はい」

 フェルディア様の“可愛い”という言葉にいちいち顔を赤くしてしまいます。フェルディア様のお気持ちが私にあるとしても、ユリーシャ様のお気持ちはいかがなのでしょうか……?




ーーーー
「ユリーシャ! 入るよ!」
 ユリーシャ様のための酒瓶と私とフェルディア様のジュースを片手にお入りになるフェルディア様のお姿は、とてもじゃないけど、淑女の部屋にお入りになる姿ではなく、マナー違反に感じてしまいます。

「あの、このようにお入りになって……よろしいのでしょうか?」

「あぁ、そっか……マリーもいるけど、入っていいか?」

「え? ちょっとだけ待って! ……もう、いいよ!」

 フェルディア様だけだったら、そのままのお姿をお見せできるほどお二人は親しくいらっしゃるのですね……。
 気合を入れて、微笑みを浮かべ直します。



「おまたせー! どうぞどうぞ!」

 ユリーシャ様のお髪は、とても乱れていらっしゃっるのに、服装はきっちりとしたドレスをお召しになっていらっしゃいます。

「ユリーシャ、髪がまずいから直してこい」
 部屋に入った瞬間、ユリーシャ様の頭をぽん、となさったフェルディア様のお言葉に、顔を真っ青にされたユリーシャ様は洗面に向かって走って行かれました。ユリーシャ様は素足のようで、足音もなく去って行かれます。




「ごめん、おまたせ!」

 ユリーシャ様が戻っていらっしゃいました。

「この酒好きなんだよねー! 帝国でしか飲めないから助かるー!」

「今日は絶対出来上がるなよ? マリーに迷惑をかけるなよ?」

「はいはーい! フェルはまだ未成年だからだめだけど、マリーちゃんいける? 飲める口?」

「マリーはユリーシャと違って、そんな風に飲んだことないから、誘うな」

 フェルディア様がそっと私にジュースを差し出してくださいますが、私は胸がムカムカといたしました。

「私だって飲めます!」
 帝国法では18歳の成年を超えたら飲酒可能です。私だって、お酒くらい食前酒で嗜んだことはございますわ!

「マリーちゃんって、フェルとの結婚はどう思ってるの?」

「ユリーシャ!」

「いいじゃんいいじゃん! こういう時しか聞けないし」

「……とても光栄なことだと思っておりますわ」

 フェルディア様の元恋人と言われるユリーシャ様にこんなことを聞かれるなんて、不満な気持ちを感じながら、当たり障りのない回答をいたしました。

「こいつのどこが光栄!? 知ってる? マリーちゃんのことずっと好きすぎて、」

「ユリーシャ、それ以上言ったら殺す」

「こっわ!」




ーーーー
「もっともっと、まだまだお飲み足りないでしょう?」

「もうやめてやってくれ、マリー。ユリーシャは限界だから、本当に、これ以上飲ませると中毒を起こして外交問題になりかねない」

「あら……そうなのですね? 私、今がほろ酔い程度ですから、よくお飲みになられるとおっしゃっていたユリーシャ様には足りないかと思いましたわ」

 少し気分が良くなってまいりました。いつもよりも不満が表に出ますわ。酒瓶2本で限界を迎えられたユリーシャ様を横目に、私は10本目を開けようとします。

「もうやめて、マリー……怒ってる? ごめん」

「私も調子に乗りすぎたわ、ごめんなさい」

 ユリーシャ様を置いて、フェルディア様のお部屋に向かうことになりました。少し酔いを覚ましてから、帰ろうと言われたのです。

「未婚の男女が同室に2人きりだと外聞が悪いけど、今回は仕方がない」

 そうおっしゃるフェルディア様に食い掛かります。

「ユリーシャ様とは最初お二人で飲もうとなさっていたのでは?」

 困った顔をしたフェルディア様に抱き抱えられ、連れて行かれそうになったとき、ユリーシャ様がおっしゃいました。

「マリーちゃんが次期皇后になると決まったら、私との婚約の真実、話していいからね?」





ーーーー
「マリー、水を飲んで」

「嫌ですわ! もっとお酒を飲みますわ!」

 フェルディア様のお部屋に入るのは実は初めてです。緊張からかお酒がやけに回った気がいたします。

「お願いだから、ね?」
 フェルディア様が子犬のようにかわいい目をこちらに向けられます。私、その顔には弱いのです。

「フェルディア様はずるいですわ! そんな可愛いお顔をなさって、私は言うことを聞くしかありませんじゃないですか! ユリーシャ様もそんなフェルディア様にメロメロなんですわ!」

 私が暴れ回るのをフェルディア様が受け止められます。

「マリー、ユリーシャは僕のことをそんな風に思っていないし、僕もユリーシャをそういう目で見ていない。しっかりとした説明は、酔ってない時にさせてほしいけど、本当に何もないんだ! 僕はマリー一筋だよ?」

「信じられませんわ!」

「マリー、本当なんだ」

 見つめ合う私たちの視線が絡み合い、引き寄せられるように顔が近づきます。

「嘘だろ? 寝るか? ここで」

 私は突然の睡魔に負けて、眠ってしまったようです。フェルディア様が自宅まで送り届けてくださったと、翌朝フラメールに聞き、お母様に怒られました。

「淑女として、人々の面前で酔い潰れるなんて、恥ずかしいことですよ! 第二王子に免じて今回のお叱りはこの程度で済ませましたが、次はないと思いなさい?」
 限界酒量は不明ですが、酒瓶1本までしか人前では飲んではいけないと決められました。ついでに、三日間の自宅謹慎を命じられました。
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