【完結】姑皇后にいじめられたら、第一皇子が断罪されました!?〜完璧令嬢の嫁姑問題

碧井 汐桜香

文字の大きさ
22 / 31

飲み会の開催決定通知

しおりを挟む
「戻りましたわ」

「お疲れ様、マリー。ユリーシャの案内は大変だったろう?」

「いえ……あの、ユリーシャ様が……フェルディア様と一緒に今夜飲もうとおっしゃっていらっしゃいました」

 私の顔は上手く微笑むことができているでしょうか?

「あー! 久しぶりだもんな! マリーも一緒に行こう?」

 そうおっしゃるフェルディア様の笑顔にはやましさなど感じません。

「私もご一緒でよろしいのでしょうか?」

「もちろんだよ! 向こうもそのつもりだと思うし! ……あぁ、ごめん、心配させたね」
 そうおっしゃって、私の髪をさらりと撫で上げられます。手が優しくて思わずうっとりしてしまいました。

「その顔。ちょっと可愛すぎるからやめてもらってもいいかな? 大丈夫だよ。マリーの不安は、僕には絶対に有りえない心配だから」

「え? あ、はい」

 フェルディア様の“可愛い”という言葉にいちいち顔を赤くしてしまいます。フェルディア様のお気持ちが私にあるとしても、ユリーシャ様のお気持ちはいかがなのでしょうか……?




ーーーー
「ユリーシャ! 入るよ!」
 ユリーシャ様のための酒瓶と私とフェルディア様のジュースを片手にお入りになるフェルディア様のお姿は、とてもじゃないけど、淑女の部屋にお入りになる姿ではなく、マナー違反に感じてしまいます。

「あの、このようにお入りになって……よろしいのでしょうか?」

「あぁ、そっか……マリーもいるけど、入っていいか?」

「え? ちょっとだけ待って! ……もう、いいよ!」

 フェルディア様だけだったら、そのままのお姿をお見せできるほどお二人は親しくいらっしゃるのですね……。
 気合を入れて、微笑みを浮かべ直します。



「おまたせー! どうぞどうぞ!」

 ユリーシャ様のお髪は、とても乱れていらっしゃっるのに、服装はきっちりとしたドレスをお召しになっていらっしゃいます。

「ユリーシャ、髪がまずいから直してこい」
 部屋に入った瞬間、ユリーシャ様の頭をぽん、となさったフェルディア様のお言葉に、顔を真っ青にされたユリーシャ様は洗面に向かって走って行かれました。ユリーシャ様は素足のようで、足音もなく去って行かれます。




「ごめん、おまたせ!」

 ユリーシャ様が戻っていらっしゃいました。

「この酒好きなんだよねー! 帝国でしか飲めないから助かるー!」

「今日は絶対出来上がるなよ? マリーに迷惑をかけるなよ?」

「はいはーい! フェルはまだ未成年だからだめだけど、マリーちゃんいける? 飲める口?」

「マリーはユリーシャと違って、そんな風に飲んだことないから、誘うな」

 フェルディア様がそっと私にジュースを差し出してくださいますが、私は胸がムカムカといたしました。

「私だって飲めます!」
 帝国法では18歳の成年を超えたら飲酒可能です。私だって、お酒くらい食前酒で嗜んだことはございますわ!

「マリーちゃんって、フェルとの結婚はどう思ってるの?」

「ユリーシャ!」

「いいじゃんいいじゃん! こういう時しか聞けないし」

「……とても光栄なことだと思っておりますわ」

 フェルディア様の元恋人と言われるユリーシャ様にこんなことを聞かれるなんて、不満な気持ちを感じながら、当たり障りのない回答をいたしました。

「こいつのどこが光栄!? 知ってる? マリーちゃんのことずっと好きすぎて、」

「ユリーシャ、それ以上言ったら殺す」

「こっわ!」




ーーーー
「もっともっと、まだまだお飲み足りないでしょう?」

「もうやめてやってくれ、マリー。ユリーシャは限界だから、本当に、これ以上飲ませると中毒を起こして外交問題になりかねない」

「あら……そうなのですね? 私、今がほろ酔い程度ですから、よくお飲みになられるとおっしゃっていたユリーシャ様には足りないかと思いましたわ」

 少し気分が良くなってまいりました。いつもよりも不満が表に出ますわ。酒瓶2本で限界を迎えられたユリーシャ様を横目に、私は10本目を開けようとします。

「もうやめて、マリー……怒ってる? ごめん」

「私も調子に乗りすぎたわ、ごめんなさい」

 ユリーシャ様を置いて、フェルディア様のお部屋に向かうことになりました。少し酔いを覚ましてから、帰ろうと言われたのです。

「未婚の男女が同室に2人きりだと外聞が悪いけど、今回は仕方がない」

 そうおっしゃるフェルディア様に食い掛かります。

「ユリーシャ様とは最初お二人で飲もうとなさっていたのでは?」

 困った顔をしたフェルディア様に抱き抱えられ、連れて行かれそうになったとき、ユリーシャ様がおっしゃいました。

「マリーちゃんが次期皇后になると決まったら、私との婚約の真実、話していいからね?」





ーーーー
「マリー、水を飲んで」

「嫌ですわ! もっとお酒を飲みますわ!」

 フェルディア様のお部屋に入るのは実は初めてです。緊張からかお酒がやけに回った気がいたします。

「お願いだから、ね?」
 フェルディア様が子犬のようにかわいい目をこちらに向けられます。私、その顔には弱いのです。

「フェルディア様はずるいですわ! そんな可愛いお顔をなさって、私は言うことを聞くしかありませんじゃないですか! ユリーシャ様もそんなフェルディア様にメロメロなんですわ!」

 私が暴れ回るのをフェルディア様が受け止められます。

「マリー、ユリーシャは僕のことをそんな風に思っていないし、僕もユリーシャをそういう目で見ていない。しっかりとした説明は、酔ってない時にさせてほしいけど、本当に何もないんだ! 僕はマリー一筋だよ?」

「信じられませんわ!」

「マリー、本当なんだ」

 見つめ合う私たちの視線が絡み合い、引き寄せられるように顔が近づきます。

「嘘だろ? 寝るか? ここで」

 私は突然の睡魔に負けて、眠ってしまったようです。フェルディア様が自宅まで送り届けてくださったと、翌朝フラメールに聞き、お母様に怒られました。

「淑女として、人々の面前で酔い潰れるなんて、恥ずかしいことですよ! 第二王子に免じて今回のお叱りはこの程度で済ませましたが、次はないと思いなさい?」
 限界酒量は不明ですが、酒瓶1本までしか人前では飲んではいけないと決められました。ついでに、三日間の自宅謹慎を命じられました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】精霊姫は魔王陛下のかごの中~実家から独立して生きてこうと思ったら就職先の王子様にとろとろに甘やかされています~

吉武 止少
恋愛
ソフィアは小さい頃から孤独な生活を送ってきた。どれほど努力をしても妹ばかりが溺愛され、ないがしろにされる毎日。 ある日「修道院に入れ」と言われたソフィアはついに我慢の限界を迎え、実家を逃げ出す決意を固める。 幼い頃から精霊に愛されてきたソフィアは、祖母のような“精霊の御子”として監視下に置かれないよう身許を隠して王都へ向かう。 仕事を探す中で彼女が出会ったのは、卓越した剣技と鋭利な美貌によって『魔王』と恐れられる第二王子エルネストだった。 精霊に悪戯される体質のエルネストはそれが原因の不調に苦しんでいた。見かねたソフィアは自分がやったとバレないようこっそり精霊を追い払ってあげる。 ソフィアの正体に違和感を覚えたエルネストは監視の意味もかねて彼女に仕事を持ち掛ける。 侍女として雇われると思っていたのに、エルネストが意中の女性を射止めるための『練習相手』にされてしまう。 当て馬扱いかと思っていたが、恋人ごっこをしていくうちにお互いの距離がどんどん縮まっていってーー!? 本編は全42話。執筆を終えており、投稿予約も済ませています。完結保証。 +番外編があります。 11/17 HOTランキング女性向け第2位達成。 11/18~20 HOTランキング女性向け第1位達成。応援ありがとうございます。

元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い

雲乃琳雨
恋愛
 バートン侯爵家の跡取りだった父を持つニナリアは、潜伏先の家から祖父に連れ去られ、侯爵家でメイドとして働いていた。18歳になったニナリアは、祖父の命令で従姉の代わりに元平民の騎士、アレン・ラディー子爵に嫁ぐことになる。  ニナリアは母のもとに戻りたいので、アレンと離婚したくて仕方がなかったが、結婚は国王の命令でもあったので、アレンが離婚に応じるはずもなかった。アレンが初めから溺愛してきたので、ニナリアは戸惑う。ニナリアは、自分の目的を果たすことができるのか?  元平民の侯爵令嬢が、自分の人生を取り戻す、溺愛から始まる物語。

【完結】幽霊令嬢は追放先で聖地を創り、隣国の皇太子に愛される〜私を捨てた祖国はもう手遅れです〜

遠野エン
恋愛
セレスティア伯爵家の長女フィーナは、生まれつき強大すぎる魔力を制御できず、常に体から生命力ごと魔力が漏れ出すという原因不明の症状に苦しんでいた。そのせいで慢性的な体調不良に陥り『幽霊令嬢』『出来損ない』と蔑まれ、父、母、そして聖女と謳われる妹イリス、さらには専属侍女からも虐げられる日々を送っていた。 晩餐会で婚約者であるエリオット王国・王太子アッシュから「欠陥品」と罵られ、公衆の面前で婚約を破棄される。アッシュは新たな婚約者に妹イリスを選び、フィーナを魔力の枯渇した不毛の大地『グランフェルド』へ追放することを宣言する。しかし、死地へ送られるフィーナは絶望しなかった。むしろ長年の苦しみから解放されたように晴れやかな気持ちで追放を受け入れる。 グランフェルドへ向かう道中、あれほど彼女を苦しめていた体調不良が嘘のように快復していくことに気づく。追放先で出会った青年ロイエルと共に土地を蘇らせようと奮闘する一方で、王国では異変が次々と起き始め………。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

処理中です...