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6.悪役令嬢、復帰する
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「お母様。わたくし、社交界に戻ろうと思いますわ」
よく休んで、回復してきた。お医者様にもマリアにもそう判断してもらえたわたくしは、お母様にそう言った。
「もちろん、このまま元に戻っても同じように倒れてしまうと思いますの」
わたくしの言葉に頷いてくれるお母様。
「正直、お父様と暮らすのは無理だと思いますの。ですから、基本的には、こちらの領地で暮らしてもよろしいですか?」
お母様は嬉しそうに笑って首肯してくれます。
「お父様はわたくしを王太子殿下の婚約者にしようと画策して、わたくしを婚約者候補に押し込みましたわ。でも、わたくしはこの領地のために生きたいと思います。身体上の理由で候補を辞退し、お母様のように領地を治める女性。……女公爵になろうと思いますわ」
わたくしの言葉にお母様は頷いてくれます。
「領地を治めるためにも勉学は必要ですわ。学園に戻って、寮生活をいたします。マリアも連れて行きますわ。そして、公爵家に婿入りしてくれる男性を探そうと思いますの」
「お母様は賛成よ。サーシャちゃんが考えたのだもの。お父様が何か言っても、お母様が了承していると言いなさい? 寮の手続きも候補辞退の手続きもお母様がしておくわ」
お母様に抱きしめられ、わたくしは笑います。お父様はお母様との離縁を泣いて拒否し、領地には近寄らないと言う約束で結婚を継続しています。お父様の公爵としての力量は確かです。領民のためにも離縁するべきでない、とわたくしも賛成しました。
「あら? サーシャ・ツンドール公爵令嬢よ」
「婚約者候補を辞退なさったらしいわ。もしかして、子を産めないのではなくて?」
「相変わらず恐ろしいお顔ね」
「まぁ。ごきげんよう? これから、改めてよろしくお願いしますわ。タンザイト伯爵令嬢? ナニメア伯爵令嬢? そして、ハリアイヌ子爵令嬢?」
わたくしは笑顔で御三方に挨拶し、通り過ぎます。そして振り返りました。
「そうそう、わたくし、女公爵になることにいたしましたの。ふふ、公爵家以上に嫁がれたらこれからもよろしくお願い致しますわ」
わたくしがそう笑うと、御三方は顔色を悪くなさいます。わたくしが女公爵となったら、伯爵家や子爵家なんて簡単に潰せると気づいたのでしょう。……まぁ、そんな手間のかかることをする余裕なんて、わたくしにはありませんが。女公爵への婿入りを希望する男子学生たちが、わたくしをダンスに誘いにきます。伯爵家の次男、公爵家の三男。婿入りしないと平民になることが決まっている方達は、わたくしの婚約者の座を狙っているのでしょう。
「サーシャ嬢は相変わらず人気だね。僕も君と踊る栄誉を与えてもらえるかな?」
「まぁ! 相変わらずお口がお上手ですわ。第三王子殿下」
「……いい加減、気がついてよ。僕がこんなことを言うのは君だけだよ」
療養中、わたくしに返信不要と言ってさまざまな手紙やフルーツ、ペット用品を贈ってくれていた第三王子殿下。義姉になるかもしれないからだと思っていましたが、違ったようで目を丸くしてしまいます。
「君が兄上の婚約者候補から外れて一番喜んでいるのは、僕だよ」
そう言って、手の甲に口付けを落とされ、わたくしは顔に熱が集まるのを感じました。
「……へぇ。照れた顔もかわいいね」
「て、照れてなんかいませんわ!」
顔を背けてそう言ったものの、手はがっしりと掴まれています。エスコートされ、ダンスを踊ることとなり、殿下のご機嫌そうな様子にわたくしも思わず笑ってしまいました。
「君を全力で落としにいくからね」
そんな言葉を受けながら、恋の予感を感じたのでした。
よく休んで、回復してきた。お医者様にもマリアにもそう判断してもらえたわたくしは、お母様にそう言った。
「もちろん、このまま元に戻っても同じように倒れてしまうと思いますの」
わたくしの言葉に頷いてくれるお母様。
「正直、お父様と暮らすのは無理だと思いますの。ですから、基本的には、こちらの領地で暮らしてもよろしいですか?」
お母様は嬉しそうに笑って首肯してくれます。
「お父様はわたくしを王太子殿下の婚約者にしようと画策して、わたくしを婚約者候補に押し込みましたわ。でも、わたくしはこの領地のために生きたいと思います。身体上の理由で候補を辞退し、お母様のように領地を治める女性。……女公爵になろうと思いますわ」
わたくしの言葉にお母様は頷いてくれます。
「領地を治めるためにも勉学は必要ですわ。学園に戻って、寮生活をいたします。マリアも連れて行きますわ。そして、公爵家に婿入りしてくれる男性を探そうと思いますの」
「お母様は賛成よ。サーシャちゃんが考えたのだもの。お父様が何か言っても、お母様が了承していると言いなさい? 寮の手続きも候補辞退の手続きもお母様がしておくわ」
お母様に抱きしめられ、わたくしは笑います。お父様はお母様との離縁を泣いて拒否し、領地には近寄らないと言う約束で結婚を継続しています。お父様の公爵としての力量は確かです。領民のためにも離縁するべきでない、とわたくしも賛成しました。
「あら? サーシャ・ツンドール公爵令嬢よ」
「婚約者候補を辞退なさったらしいわ。もしかして、子を産めないのではなくて?」
「相変わらず恐ろしいお顔ね」
「まぁ。ごきげんよう? これから、改めてよろしくお願いしますわ。タンザイト伯爵令嬢? ナニメア伯爵令嬢? そして、ハリアイヌ子爵令嬢?」
わたくしは笑顔で御三方に挨拶し、通り過ぎます。そして振り返りました。
「そうそう、わたくし、女公爵になることにいたしましたの。ふふ、公爵家以上に嫁がれたらこれからもよろしくお願い致しますわ」
わたくしがそう笑うと、御三方は顔色を悪くなさいます。わたくしが女公爵となったら、伯爵家や子爵家なんて簡単に潰せると気づいたのでしょう。……まぁ、そんな手間のかかることをする余裕なんて、わたくしにはありませんが。女公爵への婿入りを希望する男子学生たちが、わたくしをダンスに誘いにきます。伯爵家の次男、公爵家の三男。婿入りしないと平民になることが決まっている方達は、わたくしの婚約者の座を狙っているのでしょう。
「サーシャ嬢は相変わらず人気だね。僕も君と踊る栄誉を与えてもらえるかな?」
「まぁ! 相変わらずお口がお上手ですわ。第三王子殿下」
「……いい加減、気がついてよ。僕がこんなことを言うのは君だけだよ」
療養中、わたくしに返信不要と言ってさまざまな手紙やフルーツ、ペット用品を贈ってくれていた第三王子殿下。義姉になるかもしれないからだと思っていましたが、違ったようで目を丸くしてしまいます。
「君が兄上の婚約者候補から外れて一番喜んでいるのは、僕だよ」
そう言って、手の甲に口付けを落とされ、わたくしは顔に熱が集まるのを感じました。
「……へぇ。照れた顔もかわいいね」
「て、照れてなんかいませんわ!」
顔を背けてそう言ったものの、手はがっしりと掴まれています。エスコートされ、ダンスを踊ることとなり、殿下のご機嫌そうな様子にわたくしも思わず笑ってしまいました。
「君を全力で落としにいくからね」
そんな言葉を受けながら、恋の予感を感じたのでした。
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