6 / 20
ひとり
「そういえば、夫は家に帰っているのかしら?」
日曜日の夜遅く、孝介と別れて家路をたどりながらすっかり忘れていた夫の事を思い出す。
玄関をそっと開けると何やら話声がする。
「そんなっ! 500萬円なんて無理だっ!」
夫が携帯で話している。
「あれはタクシーが悪いので、私のせいじゃない!」
「入院三ヶ月だって?伊豆の病院に?」
「私だってそこいら中、怪我をしている」
どうやら伊豆で、夫とトシ子が乗ったタクシーが事故にあい、病院に運ばれたのでトシ子の夫に不倫がばれたよう。
其なのに、夫は一人でさっさと帰ってきたのか。
慰謝料も請求されているようだ。
トシ子の怪我も酷いらしい。
トシ子は自分の夫に愛されているのだろうか。
怪我をしたトシ子の所へ駆け付けるのだからトシ子を愛しているのだろう。
絹子が脚を縫う程の怪我した時
病院に付き添うこともなかった哲也を思いだし、チクリと胸が痛む絹子。
私は一ミリも愛されていなかった。
トシ子を羨ましく思う自分がいる。
トシ子の夫と絹子の夫と、二人の男から愛されている女。
此れからの人生を楽しもうと決心している絹子だったが、無駄にした時間はあまりにも長かった。
「夫と結婚したのが間違いだったわ」
唇を噛み締めて
絹子はスーツケースを引いて回れ右をした。
⭐
「明日から半年、シンガポールで仕事だから好きにしてて」
スーツケースをパッキングしながら、榊 芳江が声をかける。芳江はカメラマンとして忙しい。
絹子は中学時代の親友、芳江のマンションにいる。
ショートカットで背が高い芳江はリーダータイプで、小柄で大人しい絹子とは対象的。
クラスが一緒になったことはないけれど、学校から渋谷駅まで通学路が同じだったことから仲良くなった。
夫の不倫で悩んでいた時、話を聞きたがった友達は
皆、好奇心の塊で、同情している振りをして
「ああ。不倫されたのが自分でなくて本当に良かった‼」
と思っているのが透けて見えた。
人の不幸は蜜の味、とはよく言ったもの。
芳江は
哲也を過剰に責めることもなく、ましてや絹子が悪いと諭すこともない。
他の人達のように夫婦間の話を声を潜めて聞いてくることもなかった。
絹子は
芳江と同級生だったことを感謝した。
日曜日の夜遅く、孝介と別れて家路をたどりながらすっかり忘れていた夫の事を思い出す。
玄関をそっと開けると何やら話声がする。
「そんなっ! 500萬円なんて無理だっ!」
夫が携帯で話している。
「あれはタクシーが悪いので、私のせいじゃない!」
「入院三ヶ月だって?伊豆の病院に?」
「私だってそこいら中、怪我をしている」
どうやら伊豆で、夫とトシ子が乗ったタクシーが事故にあい、病院に運ばれたのでトシ子の夫に不倫がばれたよう。
其なのに、夫は一人でさっさと帰ってきたのか。
慰謝料も請求されているようだ。
トシ子の怪我も酷いらしい。
トシ子は自分の夫に愛されているのだろうか。
怪我をしたトシ子の所へ駆け付けるのだからトシ子を愛しているのだろう。
絹子が脚を縫う程の怪我した時
病院に付き添うこともなかった哲也を思いだし、チクリと胸が痛む絹子。
私は一ミリも愛されていなかった。
トシ子を羨ましく思う自分がいる。
トシ子の夫と絹子の夫と、二人の男から愛されている女。
此れからの人生を楽しもうと決心している絹子だったが、無駄にした時間はあまりにも長かった。
「夫と結婚したのが間違いだったわ」
唇を噛み締めて
絹子はスーツケースを引いて回れ右をした。
⭐
「明日から半年、シンガポールで仕事だから好きにしてて」
スーツケースをパッキングしながら、榊 芳江が声をかける。芳江はカメラマンとして忙しい。
絹子は中学時代の親友、芳江のマンションにいる。
ショートカットで背が高い芳江はリーダータイプで、小柄で大人しい絹子とは対象的。
クラスが一緒になったことはないけれど、学校から渋谷駅まで通学路が同じだったことから仲良くなった。
夫の不倫で悩んでいた時、話を聞きたがった友達は
皆、好奇心の塊で、同情している振りをして
「ああ。不倫されたのが自分でなくて本当に良かった‼」
と思っているのが透けて見えた。
人の不幸は蜜の味、とはよく言ったもの。
芳江は
哲也を過剰に責めることもなく、ましてや絹子が悪いと諭すこともない。
他の人達のように夫婦間の話を声を潜めて聞いてくることもなかった。
絹子は
芳江と同級生だったことを感謝した。
あなたにおすすめの小説
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。
山葵
恋愛
私の愛する旦那様。私は貴方と結婚して幸せでした。
姉は「協力するよ!」と言いながら友達や私の好きな人に近づき「彼、私の事を好きだって!私も話しているうちに好きになっちゃったかも♡」と言うのです。
そんな姉が離縁され実家に戻ってきました。
それは確かに真実の愛
宝月 蓮
恋愛
レルヒェンフェルト伯爵令嬢ルーツィエには悩みがあった。それは幼馴染であるビューロウ侯爵令息ヤーコブが髪質のことを散々いじってくること。やめて欲しいと伝えても全くやめてくれないのである。いつも「冗談だから」で済まされてしまうのだ。おまけに嫌がったらこちらが悪者にされてしまう。
そんなある日、ルーツィエは君主の家系であるリヒネットシュタイン公家の第三公子クラウスと出会う。クラウスはルーツィエの髪型を素敵だと褒めてくれた。彼はヤーコブとは違い、ルーツィエの嫌がることは全くしない。そしてルーツィエとクラウスは交流をしていくうちにお互い惹かれ合っていた。
そんな中、ルーツィエとヤーコブの婚約が決まってしまう。ヤーコブなんかとは絶対に結婚したくないルーツィエはクラウスに助けを求めた。
そしてクラウスがある行動を起こすのであるが、果たしてその結果は……?
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。