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ひとり
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「そういえば、夫は家に帰っているのかしら?」
日曜日の夜遅く、孝介と別れて家路をたどりながらすっかり忘れていた夫の事を思い出す。
玄関をそっと開けると何やら話声がする。
「そんなっ! 500萬円なんて無理だっ!」
夫が携帯で話している。
「あれはタクシーが悪いので、私のせいじゃない!」
「入院三ヶ月だって?伊豆の病院に?」
「私だってそこいら中、怪我をしている」
どうやら伊豆で、夫とトシ子が乗ったタクシーが事故にあい、病院に運ばれたのでトシ子の夫に不倫がばれたよう。
其なのに、夫は一人でさっさと帰ってきたのか。
慰謝料も請求されているようだ。
トシ子の怪我も酷いらしい。
トシ子は自分の夫に愛されているのだろうか。
怪我をしたトシ子の所へ駆け付けるのだからトシ子を愛しているのだろう。
絹子が脚を縫う程の怪我した時
病院に付き添うこともなかった哲也を思いだし、チクリと胸が痛む絹子。
私は一ミリも愛されていなかった。
トシ子を羨ましく思う自分がいる。
トシ子の夫と絹子の夫と、二人の男から愛されている女。
此れからの人生を楽しもうと決心している絹子だったが、無駄にした時間はあまりにも長かった。
「夫と結婚したのが間違いだったわ」
唇を噛み締めて
絹子はスーツケースを引いて回れ右をした。
⭐
「明日から半年、シンガポールで仕事だから好きにしてて」
スーツケースをパッキングしながら、榊 芳江が声をかける。芳江はカメラマンとして忙しい。
絹子は中学時代の親友、芳江のマンションにいる。
ショートカットで背が高い芳江はリーダータイプで、小柄で大人しい絹子とは対象的。
クラスが一緒になったことはないけれど、学校から渋谷駅まで通学路が同じだったことから仲良くなった。
夫の不倫で悩んでいた時、話を聞きたがった友達は
皆、好奇心の塊で、同情している振りをして
「ああ。不倫されたのが自分でなくて本当に良かった‼」
と思っているのが透けて見えた。
人の不幸は蜜の味、とはよく言ったもの。
芳江は
哲也を過剰に責めることもなく、ましてや絹子が悪いと諭すこともない。
他の人達のように夫婦間の話を声を潜めて聞いてくることもなかった。
絹子は
芳江と同級生だったことを感謝した。
日曜日の夜遅く、孝介と別れて家路をたどりながらすっかり忘れていた夫の事を思い出す。
玄関をそっと開けると何やら話声がする。
「そんなっ! 500萬円なんて無理だっ!」
夫が携帯で話している。
「あれはタクシーが悪いので、私のせいじゃない!」
「入院三ヶ月だって?伊豆の病院に?」
「私だってそこいら中、怪我をしている」
どうやら伊豆で、夫とトシ子が乗ったタクシーが事故にあい、病院に運ばれたのでトシ子の夫に不倫がばれたよう。
其なのに、夫は一人でさっさと帰ってきたのか。
慰謝料も請求されているようだ。
トシ子の怪我も酷いらしい。
トシ子は自分の夫に愛されているのだろうか。
怪我をしたトシ子の所へ駆け付けるのだからトシ子を愛しているのだろう。
絹子が脚を縫う程の怪我した時
病院に付き添うこともなかった哲也を思いだし、チクリと胸が痛む絹子。
私は一ミリも愛されていなかった。
トシ子を羨ましく思う自分がいる。
トシ子の夫と絹子の夫と、二人の男から愛されている女。
此れからの人生を楽しもうと決心している絹子だったが、無駄にした時間はあまりにも長かった。
「夫と結婚したのが間違いだったわ」
唇を噛み締めて
絹子はスーツケースを引いて回れ右をした。
⭐
「明日から半年、シンガポールで仕事だから好きにしてて」
スーツケースをパッキングしながら、榊 芳江が声をかける。芳江はカメラマンとして忙しい。
絹子は中学時代の親友、芳江のマンションにいる。
ショートカットで背が高い芳江はリーダータイプで、小柄で大人しい絹子とは対象的。
クラスが一緒になったことはないけれど、学校から渋谷駅まで通学路が同じだったことから仲良くなった。
夫の不倫で悩んでいた時、話を聞きたがった友達は
皆、好奇心の塊で、同情している振りをして
「ああ。不倫されたのが自分でなくて本当に良かった‼」
と思っているのが透けて見えた。
人の不幸は蜜の味、とはよく言ったもの。
芳江は
哲也を過剰に責めることもなく、ましてや絹子が悪いと諭すこともない。
他の人達のように夫婦間の話を声を潜めて聞いてくることもなかった。
絹子は
芳江と同級生だったことを感謝した。
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