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あなたを保護します

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「その名前を口にして、ただで帰れるとお思いですか?」
 丁寧ながらも、冷たい口調で融は言う。

「だから、帰らないんだよ。お前らが俺を保護しろ」
 とらつぐみは鷹揚だ。融の周りで怒りの気配が陽炎のように揺れて見える。
「まあまあ、怒るのはやめましょうね」
 と御子柴ルイがとても緩やかな口調で言うので、その場の空気がフッと緩んだ。

 一体、この事態は何なの?
「とりあえず、家に帰りますか?」
 私は融に言った。このままここにいても仕方がない。しかし、融は頭を抱えてしまっていた。
「美景さん。これはきっと本局を通した案件ではないですよ。口にするのもいやですが、あのとらつぐみは恐らく―――――」
 と融が言うのだ。

 融の言わんとすることは、私も薄々感じていた。とらつぐみが変化をしている挑文師であるのは間違いない。そしてかなりの使い手であることも分かる。
 かなりの使い手すなわち――――と類推することもできるけれど。

 私はすでに、アライグマもとらつぐみもその愛らしさに魅了されてしまっている。
「動物愛護だと思って、保護しましょうか?」
 と私が言えば、
「後悔すると思いますよ」
 と融は予言してくるのだった。

 こうして、御子柴ルイとそしてこのとらつぐみを保護しつつ、私と融の結婚生活が、始まったのだ。
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