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記憶改ざん警報です

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「旅行先の具体的な場所の話をしましたか?」
「ええ、○○県の原生林やお宮への見学をしたと話したと思うんですよね。僕は帯同していたし」
 昨年私はまだこの学校にはいなかったので、その修学旅行のことは知らない。

「昨年の修学旅行で何か問題は起こりましたか?」
 とそれとなく突っ込んでみる。警戒されたら撤退しようと思った。玉木先生はペンを顎に当てながら考えて、そして、あ、と声をあげる。

「生徒が一人、行方不明?いや、事故だったかな。何かあったんですよね」
「行方不明か、事故ですか?それは当時ニュースになりましたか?」
「なったんじゃ、ないかな。おかしいな、記憶がなんだか曖昧で。すみません」

 違和感があった。そして、こういうときは大抵、裏側の仕事の管轄なのだ。
「ありがとうございます、玉木先生」とお礼を言い、さっそく情報を融と共有する。

 帰宅後に、さっそく糸貫高校の修学旅行の情報を集めようとするのだが、当時のことを伝えるニュース記事は存在しなかった。

 本局のデータベースを検索すると、昨年の五月に糸貫高校の修学旅行時に、生徒が一名行方不明になったと出ている。
 本局のデータベースは意図的に記憶を消される前の、原本としての一次情報が残っていた。
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