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生きてない気がする女の子の話

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 ルイしゃんはこの頃色々な話をしてくれる。出かけ先で出会った人との話や、道端の花や街路樹の話、空の色の話や天気の話。ささやかな日常の話を、帰宅後の私に話してくれる。

 私は祖母というものを知らなかったので、ルイしゃんを勝手に自分の祖母のように思って親しみを抱いてしまっていた。本来ならば、ルイしゃんは私よりも年下の少女のはずなのだけれど。

 ある日、ルイしゃんは珍しく昔話をしてくれた。
「昔、とても寂しがり屋の女の子がいたんですよ」
 とルイしゃんは話しはじめた。
 ほころびを一所懸命に探そうとする子がいたの、とルイしゃんの話は始まる。


 私たちの住んでいた場所には、三つの大きな橋がありました。大鳥橋、中鳥橋、小鳥橋。よく私とその子は橋を渡って、ぼんやりと自分達の家の方を眺めていたんです。
 大きな三つの橋は街を二分している川にかかっていました。朝早くから夜遅くまで車がひっきりなしに通る交通の要所だったんです。

 川の氾濫で台地が削れていたこともあって、橋を渡って、下を眺めるとたくさんの街の明かりが広がっているように見えました。
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