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星が瞬き満月がのぼる昼、茜空に雨が降る

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 私は目を閉じて、ルイしゃんの腕輪に編み込んだ記憶を思い出そうとしてみた。この学校に赴任した日の記憶を編みこんでいたはずだ。
 思い出そうとしても、思い出せない。思い出そうとすれば、ルイしゃんの腕輪から彼女の場所を補足できたはずだ。
 普段であれば、休み時間や空き時間に小まめにあやとりをして、彼女の無事を確認している。

「できません」
 と私は答えると、
「俺も同じです。危険ですね、彼女の場所が分かりません」
 と融は言う。

「万理や甲子童子は、場所を知らないのでしょうか?」
「両者ともに、取り込み中です」
 と融は言うのだ。
「まさか、もう、やって来ているんですか?」
「ええ、楽月に亡海でしたか?橙と青の方々がやって来ていますね。彼らには対応していただいています」

「私も行きます。ただ、この規模だと封呪をしておかないと、一般の方に影響が広がりそうですね」
「そう思います。クリニックから半径2メートル程度は封呪をしました」
「では、私も出来る範囲で封呪します」
 と言っているそばから、ぞろぞろと保健室に生徒がやって来る。

「それでは、また後で。向かいます」
 と言い私は通話を切った。
 生徒たちが、なんだか気分が優れないと言って次から次へとやって来るのだ。この奇妙な天候の中では仕方がないと思う。ただ、みんな一様に、

「少し休みたいよ、先生~」
 と言って来るだけなので、ベッドや椅子を解放すればいい。

 きっと融のクリニックにも急患が増えているはずだ。ただ、根源を絶たなければ意味がない。幸巻先生がいる日でよかった、と思った。彼女に再び協力いただき、「家族の急病」により私は学校から出させてもらうことにする。
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