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雛の器、夫と喧嘩する

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 私はスマートフォンケースを見つめている。
 子どもの絵だ。

 私には自分の子どもはいないけれど、生徒を見てきている。
 色々な家庭があるし、立場上色々な事情を目の当たりにすることもあった。

 それぞれの家庭や子ども達に、配慮を必要とする事情を知り得てしまうことも多い。DV、ネグレクトなどの家庭問題や各種障害などなど。
 色々な事情を抱える未来の子ども達のために、あなたに出来ることがありますよ?と言われたら、私もうなずくかもしれない。

 単純な私は、彼らを救うことで自分自身も救われると、希望を託してしまうから。
 彼らすれば、自己満足だと思われるかもしれなくても。

 私はスマートフォンケースを椿木に手渡した。
「え?」
「私は雛の器です。奥さんの禍を受け入れられます。私に全て編みこんでください」
「美景さん、それはいけません」
 融が首を横に振った。
「雛の器?」
 解が尋ねてきたので、簡単に説明する。

「私の生まれた家は、代々有力者の身代わりをする家系だったらしいです。私はほとんど忘れていたんですけど。弟と雌雄形をとって思い出しました。禍やもろもろの穢れを受け入れるのが、私たちの家の役割りです。双子は忌み嫌われているので、後継者じゃないですけど。それなりの力はあると思います」

「この人の禍を編みこむってなったら、禁書もろともじゃない?それは無理だよ、お義姉さん」
 解は言う。
 お義姉さんだなんて呼ばれるのは新鮮だ。とても嬉しい。こんなに綺麗な妹が出来るなんて、少し前は想像もしていなかった。
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