上 下
227 / 228
これは不貞になりますか?

3

しおりを挟む
「美景~捨てないで~!」
 そしてお酒の匂いの風と、柑橘類の匂いの風がまざった香りがしてきた。私は融と顔を見合わせる。窓の外にもやが見えた。漠だ。

 万理は融にあっかんベーをしてから、子ぎつねと共に走り去っていった。
 融ははあっと短くため息をつき、私は耳の後ろを撫でる。

「まずは、漠を払ってからですね」と私が言えば、
「今度、志野尾の縁切り神社にご招待します。魑魅魍魎との神がかりの離縁をお願いします、美景さん」
 と融。

「まあ、それはこれが終わってから考えましょうか?」
 私は緋扇でひらりと扇ぎながら答えた。融の眉根が寄ったのを見て、ひゃあ、怖い、と思う。

 とまあ、化けの皮が少しずつ剥がれてきた夫と業務結婚を存続中だ。
 次にいつ指令が来るのかは分からないけれど、私は割とこの結婚を気に入っている。
しおりを挟む

処理中です...