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第三章第二部 マグサヤ領へと駆ける風雲

80話

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※マグサヤ子爵領 滞在中の宿屋

 翌朝、かなり爽快な目覚めに成ってる。俺の横で寝ていたサナーも?全く問題が無さそうなのでチュチュを補給・・最高の目覚めだよ。サナーの様子で思い出したが、昨夜は俺が作った物を結構食べていたわ。それは例の神の加護付きだ、健康を3割もアップするあれなら最初に健康に成ってるやん。スタート違うやん、元の健康な状態からアップって悪酔いも消えていそうでしょ?悪酔いから徐々に治っていくとは全く別物だと思うの。

 うん、この旅程の間でも、俺の作り置きの焼き菓子を我が家に置いて来て良かった。まあ一抹の不安は家に残っている者達が、甘味大好きって事だろうか?それは纏めて食べてもその時だけなのさ。少しだけ食べても、毎日が健康アップでいられる方かいいに決まっている。変な青い汁を飲ませる、悪者な俺を想像しちゃったよ。

 ところで今日の予定だが・・横に居るサナーを抱き締めながらそんな事を考える俺って、ちょっとニヒルな雰囲気が漂ってないか?ちょくちょくとアヒル口でチュッとしちゃうから、お付き合いのサナーは多分呆れてる。呆れているけど俺を放り出さないのは、この後に俺一人で領主に合うのを嫌がっているからだ。そこは妻であり護衛の責任感も強いから、行き帰りの時を一緒に行動したいのだと。

 その状況は俺にとっては好ましくない、何をどうするか悩んでいた俺・・神の助言が貰えたのだ。それを食べ物で釣ったとは思っていない、こんなお菓子が作れたらなーに貧乳神が掛かった。俺の担当者と違って甘党なのかも?様相を幼く表してるから辛党では無く甘党。サナーもそっちだから、俺が頑張りを見せる所だ。

 それも先の話で、今は何をしないといけないかとなれば、俺に必要なのは自由に動ける個人行動だそうだ。それをしていれば、何がどうなるのかは解らないけどチャンスはあるらしい。禍根か遺恨かは良く解らないが、お気楽な状況ではなさそうだ。少なからずの行動制限はある、その最大は日のある時間帯に限られるが。誰彼の見分けがつかない闇間なんて、悪い方向に登りそうじゃん?楽に降りれる下りとは違うのだよ。

 さて、こうしてウダウダしていたけど解った事が増えている。俺に必要なここでの急務なんだが、個人の役割になる。そこで相対する関係者や必要な処理事を考えると、これから領主邸に向かう間に何かは起こらない。全く知らない相手をどうにか出来る可能性は低い訳だ、そこは領主邸内での何かか帰宅の際にでも関わるのだろう。ならば早々に向かって・・市場も空いてるから買い物をしてから行こう。土産・・我が家へだからね。








「やるぞぐゥアッ・」
あれ?デジャヴってね?
「はっ、うぐ!」「おおぅぐぅ!」「はっげぇぇぇ!」・・「おまえぐぅ!」うん、1人だけだが俺へ剣を横薙ぎにする姿勢は取れたな。遅いと言うか反応の鈍さにびっくりだ。ミグサ領で会った時に団長とか言ってたハゲ親父・・ん?あんときゃハゲで無かった気がするな?あの後にハゲたのか毟られたかしてハゲのかも?どうでもいいな。だいたい同じパターンで襲って来ては俺に蹴られてるんだよ、こいつの頭の中に脳ミソがあるのか疑いたく成った。

 それにお付きの奴等も同じようにぼーとした反応で、剣を横薙ぎに構えたのはたったの1人じゃん。ハゲ団長を蹴っ飛ばした時は、短距離転移を使ったけど他の奴等はそのまま殴り倒したんだからな。まあ、殴った俺は、<結界X3>を体に纏ってたから、その衝撃に優しさは無いが。ここはさっさとこいつらの剣を回収しておこう。何かの隙に不意をつかれこいつ等に刺されるのは避けたいし。

 おお!ちょいと遠くからこっちに走って来てる・・衛兵か騎士か・・軽装を纏っているから巡廻衛兵っぽいな。騎士程の威圧感が無いから多分そんな感じ。

 ここで俺は到着寸前の衛兵らしき者達を手振りで静止させる。威嚇したさ。

「私はスーリェス公爵家とメンドセイ侯爵家から用命を受けて、本日にこちらのマグサヤ領主に謁見の予定に成っているレマイア伯爵の息子であるセブレス・レマイアだ。ここに倒れている者達は、ミグサ領にて両家の使者へ剣を向け襲撃を犯した反逆者だ。ミグサ領主の面前で捕縛されたが、何らかの手段で逃走をし又も襲撃を仕掛けて来た。彼等を速やかに捕縛するのと、マグサヤ領主へ事の顛末の報告を急げ。この日中の最中に用命の使者への襲撃が行われたとなれば、こちらの領の威信が多いに欠落される。この事が衆人環視に留まってしまった以上、その対応も厳に問われると伝えろ」

 ふぅぅ。誰だよ領主邸までは何も無いとか言ってた奴。目的地半場で襲撃されちゃったよ。全く・・こいつ等を何かで縛って・・ああ、その辺の物は持ってますか。報告にも全速力で走って行ったから、戻って来るまではここて待つとしよう。

 それにしてもだよ?ウダウダやイチャイチャを早々に打ち切って、美味しくないい朝食を腹に収めて来たのだぞ。それもお腹が壊したりも不味いから早足でだ。俺の計画の殆どが裏目に出ているのは、市場の場所を聞いたら反対方向と言われがっかりしてからだ。イチャイチャタイムを俺の方から切り上げをしたからか?1人で行かせるのを嫌がったサナーが正しかったのかも知れない。割と普通な時間帯に宿を出た訳だから、その途中を待ち伏せされたのも怪しく思える。

 こいつ等が捕縛されたのが隣の領とはいえ、ここで待ち伏せ出来る程の時間が良く合ったものだ。俺達が何処の宿に泊まっているとか、俺がここを1人で通る・・歩いて来たから丸見えだったな。そこはこいつ等も、出たとこ勝負だったのだろう。宿の件は内通者を感じさせるけどな。内通者が簡単に情報を得られる地位にあれば、そんなに難しい作戦ではないな。襲撃の用意が悪過ぎるのは、この情報だけが利用出来ただけか。襲撃人数も変わっていないから、簡単な情報の遣り取りだったのだろう。

 こちらから先触れを送っているわけだから、門番の兵でも解る・・聞く者がこの団長なら身内だからな。ここは早々に撤収を図って、領主邸の中に避難か?中で襲われる分には多勢の利が消せるからな。狭い屋内となれば、一度に相手をする制限から俺を有利に導く。ぶっちゃけ尽きない魔力を、永遠と使い続けるだけで何も困らない。市街戦での物理対応は体力勝負になるけど、魔法・・ほぼ一日中を使いぱなしな俺に疲れって何?状態だもの。キャベツの千切りマシーンに成り切るだけさ。計量はしないけど。






 はい、マグサヤ子爵邸らしき屋敷に到着したよ。反逆者どもと一緒に待っていると騎士達数十人とちょっと良さげな馬車が来た。こんな良さげな馬車でこの反逆者達を運ぶのかと感心してたら、それに乗るのは俺だったわ。馬車からマグサヤ子爵が降りて挨拶されたので、ちょっとキョドっちまったよ。その後の更なる試練が、2人での馬車での移動だった。そんなキョドった俺に何かを期待しないで欲しい、ジャガイモとベリーの買い付けは話せる類の物じゃないからな。

 マグサヤ子爵邸?なのかは解らない。我が領の領公館は住まいを兼用として使っているから、この場所で公務を行っていたら同じの扱いになる。その中の作りが屋敷以上であるから、一般の民衆がうろつく様子は想像出来ない。ここが高級建築の結果を表す程では無いが、盗難に合っては困りそうな調度品が存在している。その調度品の品定めをする目を俺は持っていないが、ちょっとしたお愛想程度に感慨の目をむけておく。(ほう、それが解るのかね?)そんなお返しを甘んじて受ける為に。

 超適当にその辺を遣り過ぎながら、案内された部屋で再度領主と美辞麗句を互いに交し合う。最初での馬車内の受け合いは無かった様に、ここで今一度の挨拶をする。それもこの部屋の外の様子をしっかり把握しているから、俺が不気味に思う程の事が部屋の周りに合ってもだが。兵か騎士の判別は付かないが、総数にすれば50人に足りない程度の人達がこの周りに集まっている。

 ん?俺達の居る部屋を囲むように待機している騎士達とは別に、5・・6人の者達が部屋前に走って来たな。おおぅ?ノックもせずに扉を・・

「?!・・無礼であろうオカバク!!」
そりゃあ何の声も掛けないで開けたら、そこに淫ら展開が広がってるかも?そんな事があるかもね。部屋の外に見張りがいたから、それでもその展開を起こす奴・・勇者と呼んであげよう。

「無礼は承知の可及の用件です。この者達の報告によれば、ミグサ領で王国法を犯す事案がありました。我が領は王国への忠義を示さなければ成りません。迅速に騎士部隊の派遣を要請しに参りました。その陣頭指揮を私が取り、ミグサ領の反逆者を暴いて見せましょう」

 あんたの傍に居る奴等がその反逆者なんだけどね。

「・・その王国法の裁定は王都に任されました。私・・セブレス・レマイアがスーリェス公爵家とメンドセイ侯爵の使者の名の元で、事の仔細を明かす事になります」

 そうそう、その話は大分な遅れと言うか足りてないが、全てを聞いていても結果として我等からは手が離れているのだよ。オカバク君はいい様に
「・・オカバク様、その者の言葉を信じては成りません。その者の身分はまだ確証を得ていないのです」

 こいつ・・2回も後頭部を蹴り飛ばされたのに、未だに懲りないのか?さすが団長・・もしかして脱腸?どっから出たか知らないけど、少し前に捕縛されたのにこの場にいるのは特殊なスキルかも?ああ、この馬鹿息子が仲間だったわ。

「・・解っている。使者を謀ったらしき事は、コノモブ領からの報告にも合った。いまだに確証が得ていないのは事実」
「マグサヤ子爵様、現状況で私への糾弾だけでしたら問題無かったのですが、無手の者に剣を向けてしまっています。この者達は両家の使者へ反逆行為をしたのです、その事実は消せなくなりました」
「・・オカバク・・」
「いいえ親父殿、その偽りの使者の糾弾には及びません。この領で無頼者に亡き者とされたのは少なからずの落ち度に留めます。この場でその者を討ち果たし、ミグサ領での摘発は術を持っております」

「・・ふむ、見えませんね。ミグサ領主が当初に目論んだのであれば、俺達使者を襲撃する予定地はこのマグサヤ領でしか無かった筈。それが先に自領で事が起こった、俺達が領に入る前から動いていたから、先の計画が合ったとしても遂行するつもりも無かった。このマグサヤ領に入った俺をこいつ等が襲撃した事で、俺を襲った反逆者を逃したミグサ領主に責任問題が・・少しでしょう。こちらの子息であるオカバク・マグサヤ様を徒党の神輿に担ぎましたが、この者達諸共を反逆者の賊として打ち捨てればそれで終わりです」
「・・賊として・・打ち捨て・・」
「はい、マグサヤ子爵様。私達が居るこの部屋の周りに、3つ程の騎士隊が囲んでいます。それの指示を直接下したのが子爵のご子息、オカバク様のお口から確認されたのです。その事に戸は立てられないでしょう。むしろここを覗いている監視者なら、把握を終えていますでしょう。ここで子爵様がご子息様の身を案じて俺に剣をむければ、マグサヤ子爵家は国への謀反行為の罪に問われて失脚します」
「お前を亡き者にするのは簡単だぞ!」
「いいえ、オカバク様。誰の口を封じようと結果は替りません。俺がこの部屋の周りを囲む騎士達の人数、騎士だけなら40人ですか・・感知魔法で確認しています。少し前にメンドセイ侯爵家には、30近くの感知魔道具を作ってお渡ししました。それを遺憾なく多様な仕事に活用しているでしょう。その扉の外にいる2人の者は、騎士の装いと違っていますからこの者達の仲間なのでしょう」

 オカバク・・延命すればする程、罪を重ねる者と成ったな。
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