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第四章第一部 春は遅く竹の子は芽吹に恐れる

96話

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※レマイア領の本日の我が家 朝頃

 前回のあらすじ・・夜がハゲ・・我が家で昨夜に行われたイベントパート2をあの後直ぐに開催した。その辺は俺が気にするとか気に掛けないといけない奴なので、進んでみなさんに声掛けしたのだよ。そこで一番に迷惑そうだったのが、当の主役に扱うナロセスとターレンの2人、コノモブ領の宿屋で知り合った子供達だった。俺のエンターテインメント振りで(いい迷惑なのに)を隠してたけど、我が家に連れてこられてる今の心境をぶっちゃけろや!的なイベントです。そこはパンパカパーンと盛大に近所迷惑までもも置いてきぼりでかましてみた。

 赤コーナー・・関係ないな「・・良く解って無いんですけど、皆さんが優しく・・」大人だ。10歳だが11歳だかは怪しい感じだけど、中々のコメントをするナロセス君だった。早く大きく成って欲しい、なんたって弟のターレン君8歳と対して変わらない体格なんだぜ。まだまだ難しい数日しか経てないけど、バーンと破裂かまして覚醒してくれ。あれ?覚醒で中から出る時の一瞬は縮んでたな・・スーパーなんちゃらは目指さなくていいぞ。デパートでお願いします。

「・・あの・・旦那さまが・・美味しく・・て?」よし!ここで終りだ。みんな撤収で宜しくな。ヤバいだろ?お前何食べさせてんの?みたいな目でみんなが俺を見てるんだよ。連れて来た当初以来の会話でこれとか無いわー。風呂に入るって事が無いこんな場所なのに、釜鍋で俺が煮出されてるとか・・エキスみたいな出汁は取られたくない。フォンドボーでもねぇー、フォン俺ボーン煮込みを売りにしないからな。だがターレン君、早く会話スキルのレベルを上げておくれ。俺が無事なうちに。そして忘却・・朝でいいよね?


「・・確認なんだけど、サナー達が顔を出す今日のお茶会の内容は、昨日に聞いた内容で良いのね?」
妄想に土下座・・オルヅがスルーされてるけど妄想に絡まれても困るからな。メイサリスの質問の返事はイエスなので、俺はうんうんと肯いておく。その勢いで詰まりそうな喉にある朝食を飲み込んでる。俺が妄想トラブルを頻繁に起こすのは、リアルタイムに突発する物事の対処に忙しいからだな。

「無理に話を繋げなくていいけど、話を振って来る方々の否定をする必要はないから」

 昨晩のイベントパート2が直ぐに終了させられ、そこから俺の容姿弄り的な虐めに似た何かが開催された。8歳のターレン君があざと可愛かったのに、俺の女顔は敵視対象なのが微妙じゃないか。そこで厳しい規則のトップの位置が調髪の禁止になり、人前などの場で変顔もダメ・・ちょっといいですが?多分その変顔は自前ですよ。むしろまともな時が殆ど無いとも言う。ストレスフリーな基本形がマイバイブルなんだぞ。だからそあっ!・・はいっ気おつけます。

 因みに昨晩なイベントはかなり開催されている・・記憶に遠いのは、メイサリスの懐妊報告からの確定記念の日に開催した。大きいイベントだなこれ、サナーの嫁入り盛大にやったし。最近の大きい奴は、フェインが騎士に成る事を本人が承諾した日だ。他に俺としては不要じゃ無いかと思った旅程の引き受けや、いく前日と帰宅の諸々にも祝いの席が開かれている。勿論、帰宅した時に連れ帰ったリーリャや子供達の歓迎の祝も合った。リーリャは俺の妹枠でレマイア性を受けているので、あの日の翌日の昼間に領公館でお祝い会が開かれている。そっちは我が家のイベントの数には含まれないけど。

 何が言いたいかと・・「イエールやフーリヤが我が家に」な感じの話題から、「デンプン粉をフーリアが作れるよ」なんて小さな事がらも、俺が全てを語る前に何かに変換されてイベントに代わっている。これは大丈夫なのか?この俺の発言力云々を精査するよりも、多々な会話を削っていませんかね?コミュるよ俺。ほんっ

「旦那様が出された報告書の中身に合った、管理地区へのこれからの提案に多いに興味を抱いたのがシルゥーナイ・アサマ男爵様だと聞き及んでいます。奥方様の話では特に提案に付随の効果案は無く、レマイア伯爵様も考えなしの被りに困窮しか無いと仰られたとか」

 あははーと苦笑混りに肩を潜める俺の仕草は誰も気に留めてくれないが、サナーの剣呑な雰囲気には距離を置いた感じたった。サナーはリーリェが領公館に赴き淑女教育を受ける付き添いの傍らで、お母様の意図的な情報漏洩をしこしこと収集している。この良くない行いが井戸端会議の範疇だとしたら、いつか俺は世界を牛耳る黒幕に成るかも知れない。小心者だけど。

「本日のお茶会の開催を求めたのが、アサマ男爵様の奥様だと聞いております。奥方様の予想もお聞きしましたが、表向きの働きかけが思う形に成らないから焦りを覚えての行動でしょうと。かの奥様は適地に単身で突入する気構えを見せたいのかと」
「不利でしかない適地で擁護を受ける相手もいない、そんな場所で勇猛を見方に夫の素晴らしき所を訴ええるつもりなんだろうね。戦う場所を間違えてる感じだけど、御夫婦の意思疎通は出来てるのかな?出る場所を履き違えると良い事に成らないんだけど」
「そうよねえ」

 そんな呆れ顔のまま俺の隣で、憐憫を滲ませた息を吐くメイサリスだった。サナーが言った様に俺が作った提案らしい物は、その内容だけは良さげに飲みやすいと解釈された。それをじっくり噛み砕けば、今までの尻拭いと苦労を請け負うだけなのだが。その周辺を広い見解で読み解ければ、勝ての男爵領としての繁栄に追いつくのは何時になるのかを計れない。その結果を鑑査する者達が評価に入れば、出来ていた事・・元に戻れた事は功績とは呼べないだろう。

 思慮の浅い者が上っ面な部分を無理強いし、這い上がった所だけの評価して欲しいと言うのならその者の程度も知られる。それならばそんな面倒な男爵領だけど、自らの私財を吐き出して買い取るほうがまだ良い。そこに数年の領が集められる財貨を用立てる事で、これからする回収の危うい投資・・王国の責務で成す事から避けられるからだ。俺が推す管理地区の対策案は、王国とレマイア領の両方が後ろ盾として立つ破目になる。ぶっちゃければ全てを放置し、現状に残っている元コノモブ領の財貨を回収するって事もあったりするけどな。そんなのは国が崩壊しないと成り立たない。

「旦那様は今日も外出はされないのですか?」

 イエスいえすイーエス!扉あけちゃうよ。サナーが言う外出・・お前も領公館に来やがれ的な奴な。そんなとこに顔を出したら、俺が死ぬ未来が見えるよ。お母の様の脇で横抱きにされながら、良く知らないおばはん達に囲まれるとかないわー。絶対防御のお母様は、いつものお約束でしっかり俺を愛でるし。それに俺ちゃんはそれ也に忙しく、皆からの宿題も貰っているからね。そこに密かに人気な、クレンジングジェルと言いたい<エプッグル>の注文・・未だにジェルに成って無いけど。デンプン粉で何とか出来ないだろうか・・かぴかぴには成るな。

 それでも大きな1つは無くなっている・・イベントとして開催しようとした寸劇だ。食後の催し的な所の寸劇なんだけど、俺様プロデュースの監修から指導も含めていたあれさ。肝心の主役を張っていたフーリヤがイモ役者だったので、そのまま誰の目にも止まらずにお蔵入りが決定した。仕事をさせなさいって声も聞こえて来たしな。このイベント云々が俺の仕事とは思わないで欲しい、サナー達の送り迎えはしっかりてっちょっとオ!もう朝食は終わってたじゃない?おかたしが始まらないのはみんながお茶してただけだし、目の前のジャ・・フェインはまだ終わってなかったのか。

 怪しい・・何処からか出したんじゃない?一口にも足りない大きさのパンに3倍ものジャムを載せて・・それってどうなの?殆どジャムだよね?小さいパンの上に特盛のジャムってジャムパンじゃん。いや正しいけど納得したくないよ。まだ在庫は豊富だからケチ臭い事は言いたくないけど、エンドレスじゃむ―に成ってんじゃん。ん?サナーが何かごそごそしとる。負けん気とかいらんし。しかしだよ、こっちじゃ当たり前の果肉ボンボンのフルーツスプレッドなんだぜ。そこそこのお値段なんです・・お供は生パンだし。

 ええ、ふんわりモッチモチはナッシングな生小麦パンさ。無いけど生なんだよ。そこは酵母菌が無いから・・我が家に無いんだよ。王都では使ってると噂に聞いたけど、このレマイア領には入って来てない。だがいらん!酵母発酵に1日掛けるとかヤバそうでしょ?そこは保存場所もって感じだ。俺が預かっても時間停止じゃ無意味だもの。未発酵の生食パンとかあるじゃん?そこは未発酵だからふんわりモッチモチなんだけど、未発酵酵母をそのまま食べてるわけですよ。初ガンとか言われてるあれな、体に残らないからセーフとか訳解んなねえー。焼くから問題ないかもだけど、発酵酵母を入れないと不味い状況ってのも不安だよねえ。腐敗だもの。

「面倒を率先するデバガ男爵が静かなのは不気味と言えば不気味ね」
「提案の目通しは済ました筈だから、纏めてあった関連書類も精査したんじゃないかな?その管理の全体を見れば、苦労が盛りだくさんだもの。そこへ進んで身を投じるのは、結構な厚顔か酔狂者じゃないとねえ」
「頑張りましょう」

 おおぅぅ、サナーは追い込む事を選んだか。それにしてもデバガ男爵・・メイサリスが知っている様に、あの人は中々面倒な人である。ロックスペイ・デバガ男爵やロックスペイ・デバガリ伯爵様もそれで付随するが、英雄や偉人を称えた名がロックスペイでありそれに習い崇めて名乗る・・親が名を授けたわけだ。現にそんな名前の街まであったりするが、名前負けしたくない程に出しゃばるんだよ。そこは余計なや面倒を起こすな的に、回りに疎まれてる訳だが。今回の件に絡んでこないのは、その頭に脳ミソはそこそこ入っているのだろう。放置案件だな。

 自分が言ってなんだが、面倒な場所に嫌がっても行く事に成る。そこでの基盤は社会経済制度が基本になるから、その範疇内で其れ也の事を熟さなくては成らない。そこを精査する者達の立ち位置は、統治制度を軸に考えてるんだよね。そのどっちも蔑ろに出来ないから、ふらふらと渡る感じかな。それでも様子見の殿だから、なかなかお気楽な立場なんだけどね。

「頑張りは必要かもだけど、頑張れる所があまり無いんだよね」
「・・頑張らないのですか~?」
緩いよフーリア君、忘れつつある使用人育成学を思い出せ。貴族家の職場からこの庶民の家に就労したままなら良かったけど、うちも貴族家に成る事は避けられなかったからな。あれこれと遣るんだぞ、誰さんどこ~何て気楽に探しに行けないのだ。「サナーは今何処に居る」と俺が聞けば「お部屋の方におられます」とか、何をしておられますとかの把握もしてないといけない。その場所に向かう場合も貴方達の案内付きでの移動だからな。勿論俺は後ろからその背中を電車押しだけど。

「まあ、仔細は省いていたから知らないのも当然かな。その元コノモブ領が管理地に成る事が確定したら、治安や秩序の保守に足りるかその者達の素行の確認に先に動くのがこっちの騎士団になるんだよ。その状況確認で安全も把握出来たら、次に入るのがこちらの文官の人達になる」
「・・そうなんですね」
「その頃には先にこちらから動いた商会が、それまでの取り纏めをすると思う。彼等は領の余剰地と非正規雇用者や、その雇用斡旋先も管理する手筈だから。その辺はレマイア領で行っていた骨組に伴うから、税の絡みもあって双方が足並みを揃える事に成る。農政と産業の改革・・先入りした文官達は、レマイア領に伴い適確に進めて行くだろうね。領の経済把握にこちらの商業ギルドも意欲を見せていたのと、元コノモブ領の商業ギルドは支部として格下げされるから弱体するよ。その分気楽に動かせる駒が減るけど、レマイア領のギルドが代わりになるって。俺があちらに行く必要があまり感じないんだけど、気晴らし程度に顔は出すつもりだよ」
「滞在期間はなるべく短くお願いします」

 そこにどんな理由が・・聞くなのサナーの視線を受けとる。あー護衛にはつけないのね。何となく微妙な感じだ、奥様同伴は仕事じゃなくなるし護衛枠なら騎士職に成るからな。傍使えの使用人となると俺の叙爵が行われた後に成るのだ。どこからの異議が躱せる人物と成れば、そこは護衛騎士のフェインに成るな。サナー達を領公館へと送りに出た俺は、庭でツノを回収して屋内に戻った・・追い出されて送り届けた。多分ツノとまったりとしかけたのがいけなかったと思う、メイサリスがとても怖かったよ。送りを忘れた訳じゃないからね!
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