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第四章第一部 春は遅く竹の子は芽吹に恐れる

100話

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※レマイア領 我が家に帰宅

 ええ、あの冒険者ギルドから何事も無く帰ってこれましたし、家の前に怪しい人物が転がったてるとかも有りません。途中で貧乳神がシャワー降臨しましたが、現実とのギャップに萌えちゃいました。
 あんな場所や危険ゾーンにシャワーの掛け湯が・・その情報を何処から入手してるのだろうか?生活魔法で体を綺麗に出来るから、風呂に入るなんて事はしないんだから。
 転生人は記憶がないから風呂が発展しない訳で、習慣を知って再現したがるのは勇者くらいか。聞く話に寄れば馬鹿勇者らしいから、無駄にそんな状況が出来る様にしたかも?スケベ風呂バンザイとか叫びながらだな。

 まあ、現実から逃避しても埒があかないから、ここは素直に自供・・今日の報告をしないとな。だいたい、自分の旦那が空の上で大車輪よろしく錐揉ってたら流石に引くよね。あれは死んだか?見た奴は納得だろうけど。俺もびっくりだった。
 先にダンゴ蛇君の近況報告でここは和むか?今回は食べ過ぎでツチノコみたく成ってたけど。狩った魔獣の内臓を持って行ったのは、コオモリの数が把握出来なかったから埋めあわせを兼ねて狩って行ったんだよね。
 まさか80近くが群れてるとか・・その黒いコオモリを纏った俺って暗がりで何が何やらだったな。月明りが無かったのもバンパイヤ真似するに不足したか。口先を伸ばしてチューって吸うのはいつでも出来るのに。チュー

 いくら自宅前とはいえ、タコチュー唇を作ってる奴は怪しかった。シラカバ屋の営業時間は終わっていたから、店の者に見られる事は無かったけど。
 庭からツノに目撃でもされてたら、悶え死ねる自身がある。いや、直ぐにツノを捕まえてチューしよう。牙で対抗されそうだけど。俺は美味しい食べ物だと言い聞かせれば何とかなりそうかな?




「領公館から執事のサグシェスさんが見えたわ。王都から正式に通達がおりて、元コノモブ領が正式なレマイア領の管理地に決まったそうよ。それでいつまでも元コノモブ領と呼ぶ事は出来なく成るから、その名称の相談もしないといけないと。それと早速あちらに出向く者達が明日にでも出るので、それから先の予定も詰めておくみたい。今回の用向きに入っていなかったけどサグシェスさんの意見があって、貴方は1人で大森林へ出向かない様にと言われたわ」

「おおぅ」ジーザス!バレなきゃいいな的な奴が、速攻でピンポイントにヒットしたじゃん。誰かが見張ってたんじゃない?警戒しまくりで時期をずらしてたのに。

「明日に出向いてその対応も相談しておくよ」

 その対応に沢山の内訳があるけど、みんなが絡んでるから纏めた返事にしておく。言い訳だけど。

「旦那様、大森林の中でダンゴムシと遊んでいたと<エスセス>さんからお聞きしましたが、今一度ご説明下さい」

 サナー君、蛇がムシになっとるよ。細かな話は面倒だと明日を纏めてぶった切った為、俺の行いを時間を掛けて話す事に・・あれ?自業自得ってこれかも?おケツに災いした。ダンゴ蛇が<エスセス>を乗せて移動しなかったのがいけなかったのか?俺は跨ったて乗ったけど。

「・・その祠だね。そこが放置されていたんだけど、どこからか集まったコオモリがそこで群れちゃったんだよ。そいつらを風魔法で纏めて落としたんだ。その予定はしてたんだけど、いきなりは無理だからちょっと風に乗ってみたよ。バヒューンっと」

 いや、ドップァバァババアーンな威力で飛ばされたけど、流石にそこは気楽に話せないからな。ここで聞いてる者達の視線がちょっと怖いし。しっしっ

「先日に買った風属性のスクロールは、干物の乾燥程度にしか使えないと思ったけど、俺も風に成れるんじゃ?と思ったがそこは無理だった。吹かれた本人かクルクルしちゃうから、つむじ風じゃ空は飛べないって解ったよ。コオモリ退治には大いに役立ったから、買った元は取れたかな。土埃の対処も必要だと知ったけど」

 そりゃあ祠だから密封されてる穴だもの、沢山の粉塵が当然として舞い踊りましたがな。先に水を撒いとけって事さ、数トンも持ってる俺がすっかり忘れて使わずじまいだ。水浸しにしなかったから移動は楽だったけど。

「処分したコオモリは埋めずに、蛇のお腹に入れて貰ったよ。その後は祠を埋めたんだけど、適当に崩して埋めると一緒に埋まりそうじゃない?。だから奥地をどんどんと堀進めて、その大量の土で入口近くから結構な距離を埋めたよ。あれを掘り返す馬鹿がいても、今度は感知外になるからね。今回は以前の調査の後始末ってところで報告してある」

 アハって感じに弛緩して貰おうと思ったが甘かった「風にガツガツ当てたんですか~」祠・・話戻すなよ。俺が態々お気楽調子で流してるんだからさ。一緒に流して欲しかったよ。「吹かれって空ですか?あの高い空の空ですか?」低い所まで繋がってる状態だからなんて、説明は誰も聞かないか。うん、その高い奴だよ。木にぶつかりたく無かったから、あの上の空を泳いだんだわ。
 吹き飛ばされてたともいう。約2人くらいからのもの凄い殺気にびびったわ。あー自分の旦那が木の上の方で飛ばされてたら流石にちょっとって感じは解るな。当人は必死だったけど。フーリアは飛ばしたい。

 あと、顔バッテンは気に入っている。両目を閉じて眉を目一杯に寄せたら出来上り、鏡で見ればバッテン顔だ。えっ?目を瞑ったら見えないだろって?当然だよ。それで見えるなら透視か何かの心眼だろうか?それで心眼に開眼したら、回りの女子どもを透視しまくれる。バッテンくれてる場合じゃないからな。
 異世界あるあるで透視の話が少ないのは、18禁ではカバー出来ないのかも?壁は透視するけど服は無理・・きっと絶対防御が付与されてるな。知られたらタコ殴りだろうから、採用されてないな。

「ちょっと面白い物も、その祠から採取出来たんだよ」

 ひょいと行き成り石の塊を出す、その大きさは子供の頭くらいだ。この塊は[似ている石の塊]こんなイメージが俺の頭に浮かんだ。おい!その場で即座に突っ込んだ俺は悪くない。似てるって何だ?[アイテム②]の中でこんな表示されてもねえ・・なら[アイテム①]に入れたら別の表示かもって奴はやめておいた。  
 これって頭の中での連動なんだから、俺の知ってる物に似てる何かなんだよ。単に色だけなら魔道具で良く見るあれか?試せない・・変な付与をしちゃったら無駄になるもの。保留にする。

 保留を破って・・そこは見せただけだけど。うん、これで誤魔化せたと勘違いする俺・・俺の両隣の奥様達から何度もボディブローが来てます。これって結構な痛さなんですよ、<結界>を展開すると彼女達が堅い壁を殴ってる状態に成る。素手の彼女等に壁を殴らせるのは不味いでしょ?俺の生身を殴らせるのは旦那としての矜持からだな。痛いけど。
 説明済みなのに容赦はナッシングだ!ここは早々に別話題に引き込もう。俺を見て笑ってるフーリヤ達には、新たな試作品のオヤツで仕返しを考えなきゃ。

「これは原石らしい。祠の土塊の中にちょっとだけ混じっていて、この大きさの物が数個はある。まだ調べ終わって無いけど、魔道具に使われてる物だと思う。使えると解ったら何かを作ってみるけど、その時は又みんなに話すよ」

 直ぐに調べられないのは加工の問題と、見切り発進して無駄にするのは惜しい物だからだ。出来の見映えは悪かろうが、大きさに寄って付与容量が変わる可能性が高い。俺が付与出来る魔法陣の数が少ないから、睡眠や快眠を増やす愚かな行為が見えるし。ここからは本当に保留とする。

「祠の話の続きに成るけど、ギルドに報告した時に言われた事がある。我が家の件でギルドに新たな申請が出されていて、それが決済されればギルドの職員が定期的に此方へ出向くらしい。ちょっと変わった様子伺いって感じかな?あっちからの依頼も含む的な奴だね。領公館から依頼した俺の護衛がそんな奴で、貴族の意向を優先してるんだとか」

 まあ、優秀な人員は特に限られるからな。居ない者は仕方ないと簡単に諦めてくれるかは、相手をする貴族に寄り蹴りだ。碌な話に成らなかった事案は、以前にも良く耳にした。高ランク冒険者パーティは、この手の被害が後を絶たない。強く生きて欲しい。

「それでだれが来るのかは未定だけど、受付のラーレルさんとか来るかも?あの人ってギルマスの娘さんだったんだね」
「あら、知らなかったの?ギルマスの家族はギルドでかなりの知名人なのに知らないなんて貢献度が斜めに向いてるのね」
「うん、向き過ぎなのかも。素材買い取りの貢献だけは何故か賞賛されたよ。他の冒険者の頑張りに期待したい」
「それは難しいかも知れないわ。大森林までが近いこの領のギルドでそんな感じなんでしょ?治安が良くなっている今は気負いの少ない護衛依頼に集うと思う」

 それはそうかもだけど、パーテイ連携が不得手な俺は実際に難しい。それの対応なんてのは、最早不要な立場に成ったから今更だけど。
 この話を元コノモブ領の冒険者ギルドに例えたなら、依頼受諾は護衛か近所のものに限られるだろう。それがかなり限定された削られ依頼になる。そこにこの領から雇用斡旋商会が飛び込むのだから、立ち位置に寄って彼等の肩書きも変わりそうだ。その世間体を気にする輩がいればの話だが。

「管理地区はここが様変わりの時期に成るね。コノモブ領騎士団で女性騎士を、何故採用し無かったかの理由が解るかも知れない。その意図をキュルス兄様と予想したのは、男尊女卑かと推定したんだけど子育てを重く見ているとかもあるかな?男手の子育てじゃ偏った性格に成りそうだし」
「むしろ成ってしまった結果がそれかも知れないわよ?オンナ達にそっちを期待しては成らないとか」

 OH-baby!鋭いけど男は馬鹿だと言ってるの?飯炊き女はいなんだけど、米の普及は当分先だから煮込みかパンちゃんだな。うちは俺がパンちゃんみたいだけど。

「旦那様、調理人を雇うのですか~」
「ダンゴムシは奥地に帰ったのですか?」

 貴方達・・思い思いに脈絡を無視して問うとかどうなの?あと、フーリアは自分に関係する事しか興味は無いと。
 サナーの頭は撫ぜておこう。あれ?実はとっても蛇好きなのか?会いたくてしょうがないとか有るのかも?ムシを連れて来たら必殺しそうだけど。ムシって言い間違えてるから、そこまで無いな。

「護衛職の就労時間も人員数にも関係するから、もう少し解りやすい取り纏めの仕方が知りたいわ。明日には貴方が領公館へ行くのだから、その辺を執事のサグシェスさんに聞いて欲しいの。あの方なら貴族全般に関わる経験も豊富だと聞いてるわ」

「解ったよ。うちの両親は伯爵位まで登ってるから、仕えていた経緯も熟知してると思う。何か聞いた気もするけど、もう一度確認して来る」

 あっ!余計な一言をサラッと言っちまったか?皆の目が何を忘れたって感じで見てる。だが忘れた訳じゃない、耳に入らなかっただけだから。覚える気が無かったとも言う。もう一度聞けばそこでも冷たくされるから、ここでは優しくして欲しい。ヘルプだツノ!あれ?
 メイサリスのぽっこりお腹の向こう側に、それらしい毛並みが見えるな。ああ、そのぽっこりに遠慮はしてるのね。賢い・・賢過ぎるよツノ!バカな俺とは比べようもない。
 だがあれは母性本能だと思う。俺は男だ、どっからどう見てもネイビー感を否定できないが男だ。肉の文字が額に必要かもだけど。

 其れよりも話題だ・・逃げたいけど逃げれない、そんな時の無茶ぶりはやっぱりコイバナだ。

「ギルマスから聞かされたんだけど、シュウールが自分パーティから抜けたんだって。素材採取に貢献してた高ランクパーティが、それでカダガタに成ったと嘆いてたよ。当のシュウールは別のパーティに入ったとか」
「・・そうなのね。彼女も納まる場所を見つけたのかしら?ああ見えても男の人が凄く苦手だったらしく、踏み出し方も解らずに何度も騙されそうに成ったらしいわ。ギルマスが彼女を気に掛け手助けもしていたらしいから、息子さんの相手に考えていたのかも知れないわねえ。もっとも誠実な朴念仁な感じの男性が好きだったらしく、周りの冒険者は無理・・狙い定める前の貴方に私か割り込んだから、そこの感謝を忘れないでね」

 さらに藪を突いちゃった。その細かな情報網は、あのギルマスの娘のラーレルから聞いたのだと。メイサリスの怪しいコネクションは、ギルド関連にうず巻いていた。誠実な評価は嬉しい事だけど、そんな朴念仁は頂けない。今の俺なんて嫁を2人も獲得してるんだぜ、メイサリス・・サナー・・どっちも押し切られてたわ。
 いや、違うよ!間違ってないけど、慎重な俺をぶっ飛ばす台風的な勢いがですね。ええええとか、あぁーーーとか驚いてる間に終わったがな。うん、結婚は人生の墓場だ。油断が呼ぶ嫁到来、何やらの怪しい動きを最近も感じてます。
 あと・・俺の知ってるコイバナと程遠い。隣国?そんな距離感を感じたよ。むしろ人の噂に戸って奴だと思う。悪口にも似てるが納得しないでおこう。いい初めが俺だからな。とりあえずスイマセンだ。草葉の陰で元気にしなさい。まだ生きてたわ。

「ラーレルさんからも、長男のお兄さんの愚痴を良く聞かされたわ。もう少し考えてから行動してくれれば、もっと早くランクも上がったらしいの。そのお兄さんに浮いた話があんまり無いのは、身内の評価が広く伝わってるからだと思う」

 あー言ってたな。俺は1人で強く成ったとか何とか言ってたけど、親父に訓練されてた事実を理解して無かったよ。親父ってたいていは一緒に居るけど、そこは人扱いしようぜ。
 いや、そういう話じゃなく教わってるから1人じゃない。案山子状態の親父ならアリかな?
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