孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

かし子

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第3章 お友達編

【48】お買い物

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ゼルビュート・アステル無事6歳になりました!ぱちぱち!

そしてなんと!今日は家族でお出かけです!

「ほぁ~~!」

見渡す限りずらっと並ぶ洋服たち。
僕は今日、冬用の洋服を買いに街に来ています!






事の始まりは父の一言だった。

「今年の冬は北の邸宅に行ってみるか。」

公爵領はとても広く、公爵家はその領の東西南北それぞれの端に邸宅を持っている。そして、毎年冬になると北の地へ偵察に行くらしい。去年も冬の時期に父が家に居なかったのはそう言うことか。

なんでも北端では冬になると大雪が降るらしく、まだ舞うような雪しか見たことのない僕と兄様と一緒にその雪景色を見に行こう、と言う事らしい。今年は例年に比べて早めに沢山の雪が降っているのも気になるから、街の防雪対策などを見直しにいくらしい。
そして母の「じゃあ暖かい洋服を買いに行きましょう。たまにはお店に足を運ぶのも良いわね。」という提案で今日は全員でお買い物だ!という事になった。

前回皇宮に出かけた時は帰ってから体調を崩してしまったので、兄様は良い顔をしなかった。「アステルがまた体調を崩したら...」と不安らしい。兄様の腕の締め付けがすごい。

「ただアステルを外に出したくないだけだろう。」

「同じ事です。」

「だがもう決定事項だからな。なぁ、フェルアーノ。」

「ええ。きっと色々な冬服に身を包むアステルは可愛いに違いないわよ。真っ白な雪で遊ぶアステルは天使のようでしょうね。」

「...行きます。」

どうやらまんまと母に丸め込まれたらしい兄様に抱っこされながら僕は馬車に乗り込んだ。え?僕?僕は兄様と一緒ならどこへだって行きますよ。
そして、心地よい兄様の膝の上で馬車の揺れに誘われて一瞬意識が落ちそうになったところでガタン、と馬車が止まった。

「んぅ...?」

眠い目を擦る。

「着いたぞアステル。」

「んん...ねみゅ...。」

「分かった、抱っこだな。」

特に何も言っていないが、ぐでーっとした体を兄様に抱き上げられて馬車から降りる。
馬車の外の冷たい空気が顔に触れると少し目が覚めてきた。そして、目の前の大きな建物へと入って行く。
そこはこの帝国一の規模と言われる洋服屋さんらしく、内装も凝っていて、服がまるで美術品のようにディスプレイに並んでいた。
そしてお店に入るなり母と父が「貸切だからゆっくり選べるわよ~」「とりあえず子供に合う大きさの冬服を全て持ってきてくれ」と言っている。
...恐るべき公爵家。きっと値札なんて見ないのだろう。


と言うわけで、まずは僕の試着からだ。
採寸しますよ、と言って近づいてきたお店の人に兄様が口頭で僕のサイズを伝えた。メジャーを持ったままポカンとした顔で固まった店員さんに兄様が再度僕のサイズを伝えると、意識を取り戻したお店の人は何かを悟った顔で「畏まりました。」と言って逃げるように店の奥へ下がった。
なんで兄様が僕のサイズを知っているのかなんてそんな野暮な事は今更聞くまい。手間が省けて良かった。

そして並べられた僕のサイズに合う大量の冬服たち。その前に兄様が仁王立ちして、顎に手を当てながら何やらぶつぶつ呟いている。まるで難問を前にした学者のようだ。

「アステルの服はイーゼルに任せておけば間違い無いだろう。」

「そうですわね。」

確かに、前に皇宮に出かけた時も兄様のこだわりは強かった気がする。そして兄様のセンスはとても良い。なんでも完璧にこなす上にファッション関係にも明るいなんてさすが兄様だ。
僕はそんな兄様をストローでジュースを吸い上げながら待つ。
暫くして、父が母のためのドレスも何着か見繕い始めた時、兄様が帰ってきた。

「まずはこの3着を。」

そう言って渡された服の中には赤色のコートがあった。

「あか!」

前の時は赤が着れなかったから、嬉しくなってジュースを机に置いて椅子から降りる。するとすぐに兄様が抱き上げてくれて、片手で抱えられながら、一緒に洋服を見る。

「前に着たがっていたからな。嬉しいか?」

「うん!あかすき!にいさまのいろ!!」

「そうか。」

後ろから「アステルは本当にイーゼルが好きねえ」と聞き慣れた言葉が聞こえてくる。

早速試着して見ると、確かにあったかい。袖の長さも丈の長さもぴったりだ。赤色の服というのは若干女の子っぽいが、お母様譲りの顔のおかげか違和感は全くない。
どう?と兄様に向かって両手を上げてアピールする。

「...ああ、よく似合っているな。可愛い。...可愛すぎる。」

その次は茶色のポンチョ型のコートだった。首に赤いマフラーが巻かれる。ポンチョが広がるようにくるくる回ってみる。楽しい。

「...天才だ。」

その次は中がもふもふしたコート。フードもあるようで、頭の先まで温かい。赤い手袋も付けてもらった。手の甲に白いポンポンが着いていて兎の尻尾みたいで可愛かった。
見て見てと兄様に手の甲を見せると、なぜか兄様は目を覆って固まっていた。心なしか肩がプルプル震えている。
実は兄様の方が寒いのかな...?

「っ...は...?かわいい...。何を着ても可愛い...。なんでこんなに可愛いんだ。」

「イーゼルはいつにも増して楽しそうだな。」

背後でこの様子を見ている父が苦笑いしていた。しかし、そんな事を気にしていない兄様はゆっくり口を開いた。

「...父上、予算は。」

「公爵家に金の上限などない。むしろ街に金を落とす責務がある。」

「では、あの列を全部お願いします。」

兄様が指を指した方にはざっと冬服が10着以上並んでいた。あらあらと笑う母はなんだか楽しそうだ。

「えっ、でもおでかけは、いっしゅうかんじゃ...?」

「帰ってきてからも着ればいい。その日のアステルはその日にしか見れないのだから、勿体無いことはできないだろう。」

兄様の謎理論が展開した。「??」を頭に浮かべるが、兄様の顔は至って真剣そのものだった。

「言えてるな。」

父も深く頷く。
いや全くわからないのですが。

その後も靴やらズボンやらを次々と買って、兄様はやり遂げた清々しい顔をしていた。対して僕は何を着ても絶対に褒められるため、なんの手応えもなく終わったのだった。
まあ兄様が楽しそうだったから良しとしよう。

「じゃあ次はイーゼルの番ね。」

「俺は着れるのならなんでも良いです。」

僕の服はあれだけ真剣に悩んでいたのに自分のことには心底無頓着な兄様は、それだけ言うと、3着くらいを適当に見繕って終わってしまう。

「いいや、ダメだ。」

「ええ、ダメね。」

「...何がでしょうか。」

父と母が立ちはだかる。何が始まるのか分からないが僕も腕を組んで両親の横で立ちはだかる。

「イーゼルもアステルと同じだ。その日のイーゼルはその日にしか居ない。そう思うだろう?二人とも。」

「ええ。」

「はい!」

やはりよく分からない理論だがとりあえず頷く。話の展開が読めない。

「だから、お前の服は私たちが選んでやろう。」

...あ!そう言うことか!

「ぼくもえらびます!!」




こうして兄様の冬服も10着以上買うことになった。僕のサイズのものとお揃いのコートがある場合は僕が問答無用で「かう!」と言って買ってもらった。兄様とおそろコーデゲットである。母は「幼いディラード様を着せ替えてるみたいで楽しいわぁ。」とご機嫌だったし、父はそんな母にデレデレだった。
兄様は心なしかゲッソリしてて、「アステル。」と言って僕を抱き上げるとそのまま喋らなくなってしまう。その後いつの間にか兄様の腕の中で寝てしまった僕は、家に着くまでぐっすりだった。





















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