孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

かし子

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第3章 お友達編

【57】友達

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どうやら僕は誘拐されたところを、兄様に助けて貰ったらしい。
体調も落ち着いて食事も食べ終わったところで、あの日の事を知らされて驚く。

ベッドに座る僕の横には夢にも出てきた大きな狼さんが居た。思いっきり僕にお腹を見せて、そこを撫でると大きな尻尾がこれでもかというくらい振られる。ハッハッと息をする姿はほぼ犬だった。狼みたいな姿なだけで本当は大きなわんちゃんなのかもしれない。

「俺が夜アステルを訪ねたらお前は居なかったんだ。」

その言葉を聞いて、そういえば...と段々と夜に夢を見て家を抜け出した事を思い出す。

「あの日、何があったんだ?」

隣に座る兄様が問いかける。

「ぇと...わんちゃんの、ゆめ、みて、わんちゃんが、けがしてたから、たすけなきゃ、って。」

『あ!あれね、多分僕が”呼んだ“んだよね...。本当にごめん!アステル!』

僕の隣に座った狼さんが申し訳なさそうにそう言って、伏せの体勢をとる。

「きみが、よんだの?」

「...どういう事だ?」

兄様の声が低くなった。
すると狼さんは視線を彷徨わせながら説明する。

『だってぇ、僕とこんなに親和性高い人間なんて初めてで、夢が繋がったのが嬉しくてさぁ...。足痛いし首輪で縛られてるし...このまま死んじゃうくらいならって...。』

「んぅ~...おともだち、ほしかったの?」

『そう!僕はずっとずーっと友達が欲しかった!』

「そっかぁ。」

「...アステルは、この狼の言葉が分かるのか?」

明らかに狼と言葉を交わしている僕を見て兄様がそう声をかけてくる。

「はい!」

「...で、その狼がアステルと友達になりたいからと、夢を使って誘き出したのか?」

「はい!ぜったいあいにいかなきゃ、っておもいました!」

「...そうか。それで?」

「おおかみさん、いたいたいだったので、なおれ~ってしたら、なおりました!よかった!」

「...そうか。アステルは優しいな。」

「えへへ。」

兄様に褒められて嬉しくてにやける。

「でも、たおれちゃったの。...しんぱいかけて、ごめんなさい。」

そのせいで、たくさんの人に心配と迷惑をかけてしまったらしい。お医者さんも神官さんも来たけど全部ダメだったと。

「いいや、慣れない力で疲れたのかもな。頑張ったな。」

「えへへ~。」

それでもやっぱり褒めてくれる兄様。
そしてスルッと僕の頭を撫でていた手を離すと、


『ぅわぁ!!!』

そのまま立ち上がり、僕の横にいた狼さんの首を掴み上げた。



「...全部、お前のせいか。」


兄様は激おこだ。
狼さんが逃げようと暴れてもびくともしない。

『ごめんなさい!ごめんなさいぃ~!もうしません!絶対にしないです!』

「に、にいさま!いじわる、やです!!」

「アステルは危ないから下がっていろ。」

兄様の服を掴んで止めるが、既に頂点に達していた兄様の怒りは僕でも簡単には止められなかった。

『~っうううう!!だってぇ!僕だって寂しかったんだ!足痛くて死んじゃうかと思ったし、死ぬくらいなら最後に、ただ...友達ほしくてぇ...!誰もっ、僕と喋ってくれないからぁ...!!』

段々と泣き声に変わっていく狼さんが可哀想で、僕は必死にお願いした。

「にいさま!!にいさま!だっこ!」

抱っこして、と。
パッと狼さんを離した兄様は僕を見下ろした。狼さんは床に這いつくばるようにしてうわぁん!と本格的に泣き始める。狼だから涙は出ていないけど。

「だっこしてください!」

両手を伸ばして兄様にねだる。
すると兄様はしゃがんでから、僕を抱き上げた。その首に抱きついて今回の事を謝る。
きっと兄様がこんなに怒っているのは、僕がたくさん心配をかけてしまったことが原因だ。

「いっぱい、しんぱいかけて、ごめんなさい。つぎから、ちゃんとにいさまにいいます。ぼくをたすけてくれて、ありがとうございます、にいさま。...やっぱり、にいさまはすごいです。」

そう言うと、僕を締め付ける腕は強まり、兄様の切ない声が耳に届く。

「アステル。よく覚えておいてくれ。俺は、アステルが居ればそれ以外はどうだっていいんだ。お前が俺のそばにいることが何より大切なんだ。...だからもう、どこにも行くな。」

「はい!」

「ずっと、俺のそばにいろ。」

「はい!」

「...だとしてもこの犬には躾が必要だな。」

『えぇ!?』

今の終わった感じじゃないの!?と狼さんは嘆いていた。反省はしていなかったようだ。「だって、アステルと会えたから!!」らしい。
完全に開き直っている。












「そもそもこの狼はなんなんだ?」

兄様も落ち着いて、ベッドに腰掛ける兄様の膝の上に収まりながらベッドの下で伏せる狼さんの頭を撫でる。ブンブン横に振られる元気な尻尾を見ながら、父は不思議そうに尋ねた。

『僕は人間にスウェルローズウルフって呼ばれているよ!アステルもっといっぱい撫でて!気持ちいい!』

狼さんは僕の膝に顎を乗せてそうねだったため、両手でうりうりと撫でる。尻尾はさらに加速した。
...て言うかスウェルローズって、確か...。

「...こおりのおおかみ?」

この国の伝説にもなってる神獣だ。街で劇にもなっていた、帝国でも有名な存在。

『そうだよ!あ、スウェルローズっていうのは種族の名前だからね!アステルには僕の名前をつけて欲しいんだ!友達だからね!』

「うーん...なまえかぁ...。」

「アステル、この犬はなんと言ってる?」

『犬じゃない!』

「あっ、えーとね、このこは、すうぇる、ろーずうるふ、らしいです!」

そうだ、この子の声が聞こえるのは僕だけだったんだ。普通に喋るから忘れていた。

「スウェルローズ、って...。」

「...神獣じゃないか...。」

母と父が絶句してる。兄様は無反応だ。なんとなく察していたのかもしれない。

『うん!僕は凄い狼だからね!色んなことができるから、友達になったらお得だよ!アステル!』

「おとくじゃなくても、おともだちだよ。」

『っ~!うん!アステル!!アステルは友達だから、僕が守るからね!いっぱい遊んでね!あといっぱい撫でて!』

ふんふんっと鼻息が荒くなる狼さん。
いい加減狼さんと呼ぶのも味気ないから、何か名前がないとなぁ...。

『名前!名前くれるの!?アステル!』

狼さんは人の考えが分かるようだ。喋っていなくても会話が成立する。

「うん。でも、なにがいいかなぁ。」

「なにがだ?」

「このこに、なまえをつけるんです。」

「犬でいい。」

『犬じゃないー!!』

バシバシっと狼さんの尻尾が床を叩く。

「神獣の扱いがこれでいいのか...?」

「まぁ、アステルのお友達らしいからいいんじゃないですか?アステルにはまだ友達がいないですし。」

若干引き気味の父に、既に状況を噛み砕き終わったらしい母が笑顔でそう言う。ここでもやはり母は強かった。
そしてその母の言葉に狼さんが反応する。

『え!アステルまだ友達いないの!?僕が最初!?』

「うん、そうだよ。」

『~~っ!!ああ、どうしよう、嬉しすぎるよ!遠吠えしちゃいそうだよ!』

しちゃいそうと言ったそばから、アウゥー!と吠え出して、「うるさい」と兄様に強引に口を塞がれていた。お父様も言っていたけど、神獣の扱いがそれでいいのかな...。まあ狼さんを縛っていた首輪を取ったのは兄様らしいし、多少は許されるのだろう。

『やだ!離せ!僕は凄い狼なんだぞ!噛みついてやるからな!この乱暴者!無表情!無骨野郎!怖い顔!倒してやる!!魔王め!』

...兄様に声が聞こえなくて良かったかもしれない。













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